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辺境生まれの小さな天才魔道具師( 旧:辺境伯貴族家の息子、魔道具修理で無双し王女をも救う)【書籍化予定】  作者: まめたろう
1-2章「謎の男性との出会い」

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第12話「帝国最強クランと剣聖」

#第12話「帝国最強クランと剣聖」


――時は少し遡る。

 今から数年前、王国の隣にある大国――ガルディア帝国では、空前の「魔物退治ブーム」が巻き起こっていた。


 強力な魔物の心臓近くには大きな魔石がある。その魔石を売ることで莫大な富を得られた。

 もちろん強力な魔物はそれ自体が脅威だ。帝国上層部も討伐依頼を積極的に出し、冒険者という職業が一躍花形となった。

 街には若者たちが剣と魔法を携えてあふれ、名声を求める者もいれば、一攫千金を夢見る者もいた。


 その中で、帝国でもっとも名を馳せた冒険者クランがあった。

――その名は《ノーザンライト》。


 その名は帝国の北の空に輝く光のように、誰もが憧れる存在だった。帝国で唯一のS級クランでもあった。


《ノーザンライト》の中心には二人の傑物がいた。


 一人はクランのリーダーにして魔法使い、レオニード・ファルクス。

 帝国宮廷魔導師団の出身で頭脳明晰、若くして順調にリーダーの座についた男だ。もともと貴族で身分が高かったことにあり帝国上層部からの受けもいい。


 もう一人は――“雷光の剣聖”の二つ名を持つ男、ライゼン・アルトリウス。

 その剣の速さは稲妻のごとく、振り下ろされる瞬間にはすでに勝負が決しているとまで言われた。


 ライゼンは強いだけの人間ではなかった。戦場だけでなく日常の場でも誰からも慕われていた。

 面倒見がよく、後輩の剣の訓練にも付き合い、壊れた装備の修理や補給の手伝いまで自ら進んでこなす。

 下働きも厭わず、身分や立場にこだわらない。本当に人が良すぎた。

 だからこそ、誰もが彼を信頼した。


「剣聖」と呼ばれても、本人は決して驕らなかった。

 いつも笑ってこう言う。


「俺はただの剣馬鹿だよ。雷が鳴ったら斬りたくなる性分でね」


 強いのに全く自慢しない。その謙虚さがまた人気を呼び、特にメンバーの女性たちの間では圧倒的な支持を得ていた。

 戦場での凛々しさと、日常の穏やかさとやさしさ。そして自分たちが危険な時にはいつも颯爽と現れて助けてくれる。


 魔法使いは接近戦にめっぽう弱い。魔物に近づかれたらほぼアウトだ。しかしそういった時に自分の危険を顧みず救援に入ってくれるライゼンは誰からも慕われていた。

 自分が怪我をしてでも体を呈して他人を守る、ピンチに颯爽と現れる救世主だ。その姿は特に女性を惹きつけた。


 しかし、そんなライゼンにも2つの弱点があった。1つは魔法が全く使えないということ。まあそれはいいだろう。彼の懸命な剣の努力のためもあって、それは弱点というほどのことでもなかった。逆に魔法を使えなかったことが彼を剣の高みに押し上げたと言ってもいいだろう。


 しかしもう1つの弱点は致命的だった。それは周りの気持ちに疎い。特に女性の気持ちに鈍いということであった。

 ライゼン本人はまったく気づいていなかったが、クラン内では密かに恋心を抱く女性がいた。それは数人どころではなかった。

 さりげなくアタックする女性は数知れず。しかし彼は女性メンバーを異性としては考えずにクランの仲間として考えていたこともあって、全くその気持ちに気付かなかった。やさしくしてくれる仲間と思っていた程度。

――本来なら、両手では数えきれないほどの恋が実っていてもおかしくなかった。

 気の毒な女性が多数いる状況ではあったが、その真摯さもよいということでメンバーたちは離れずバランスを保っていた。


 戦術面でもライゼンは突出していた。

 クランの戦闘指揮は名目上レオニードが担当していたが、実際にはライゼンが前線で戦況を読み、的確な指示を飛ばしていた。


「右から三体。風の魔法班、支援を頼む!」


「よくやった、二層目は下がれ! 魔力の再分配を急げ!」


 その声を聞くだけで、仲間たちは迷わず動いた。

 誰もが分かっていた――《ノーザンライト》を動かしているのは、実質ライゼンだと。彼の声の通りに動けば確実だと。

 

 リーダーのレオニードの言う通りに動くといつも問題が発生していたから猶更、ライゼンの優秀さが光った。

 メンバーの中には「リーダーを交代すべきでは?」と公然と口にする者さえいた。

だが、ライゼン自身がそれを許さなかった。


「それは間違っているぞ。俺は前に出て戦うのが仕事だ。それしかできないんだから好きに使い潰してくれたらいい。一方でレオニードは帝国皇族の謁見や報告もできる唯一無二の存在。俺にはああいうことは絶対に無理だよ。リーダーにふさわしいのは彼しかいない」


 現実にライゼンは目上の人間と話すことが得意ではなかった。敬語も苦手。

 帝都での式典や皇帝への謁見など、そうした場を苦手としていたからこそ、レオニードがリーダーであることに感謝していた。

 そして、一歩引いてリーダーを立てようとするライゼンの姿は更に人気を上げる要因になった。


 だが――その穏やかな関係が、少しずつ歪み始めていく。

 最も苦々しく思っていたのは、他ならぬリーダーのレオニードだった。


「名ばかりのリーダー」と陰で囁かれることもあった。


 誰もが称えるのはライゼンばかり。

 戦場で、街で、酒場で――

 表も裏もライゼンを評価する声ばかり。

 “《ノーザンライト》の英雄”といえばまず最初にライゼンの名が挙がる。

 確かに強い。クランの中心にいるのは間違いなく彼だろう。それは分かるのだがリーダーの自分はほとんど称賛されず、ライゼンばかりが称賛されるのは納得できない。

 日に日に鬱憤は溜まっていった。

 

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