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辺境生まれの小さな天才魔道具師( 旧:辺境伯貴族家の息子、魔道具修理で無双し王女をも救う)【書籍化予定】  作者: まめたろう
1-2章「謎の男性との出会い」

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第11話「剣聖ライゼンの指導」

#第11話「剣聖ライゼンの指導」


 俺は月に一度、例の“謎の魔道具修理士”――倒れていた男性のもとを訪れていた。

 約束の給金を手渡すためだ。

 渡すのは月1500鉄貨。前世の感覚でいえば1万5000円ほどだと思う。決して多くはないが彼はいつも深々と頭を下げて受け取ってくれる。それで一応は1か月生活できるらしい。


「助かります。本当に助かります……」

 そう言われるたびに、少しだけ気恥ずかしい気分になる。このぐらいの金額で申し訳ないぐらいなんだが。


「ところでさ、名前はなんて言うの?」


「……ライゼン・アルトリウスと申します」


 ライゼン・アルトリウス――。

 どこか勇ましい響きの名前だ。かっこいいね。


「なら、ライゼンさんだね」

 そう呼ぶと彼は慌てて首を振った。


「雇い主であるあなた様に“さん”付けは不要です。どうかライゼンと呼び捨てでお願いします」


 ……あれ、このパターン、前にもあったぞ。

 そうだ、オルドだ。何で俺の周りの大人たちは、みんなやたらと恐縮するんだろう。

 俺自身は別に大した人間でもないのだが。 

 でも俺が貴族ということで当然のことで仕方がないのだろうね。こういったところも、すこしずつ慣れていこう。


 そして、あまりにも恐縮してくるから逆に申し訳なくなる。基本的にはライゼンは良い人なのだろう。

 そしてライゼンは言ってきた。

「いくらなんでも何もせずに毎月1500鉄貨もらうのは気が引けます。何かお役に立てることはないでしょうか?」


「うーん、分かった。なら、ライゼンって何か得意なことある?」

 何気なく聞いたその一言で、彼の表情が少しだけ動いた。


「……剣です。剣だけは多少、人並み以上に自信があります」


「へぇ、剣が得意なんだ」


 話によると、どうやら彼は隣の国、帝国から流れてきたらしい。

 しかも――「剣聖」と呼ばれていたとか。


「えっ、剣聖?」と俺は思わず聞き返してしまったよ。


「はい。かつては“雷光の剣聖”などと呼ばれておりました。しかし剣の時代は終わったのか、恥ずかしながらリーダーから追放を命じられまして。どうやらクランとしては純粋な剣士よりも魔法剣士の方を欲しておられたようです」


「追放された後は落ち込んで王国に移動し、その後は人に騙されたりして自暴自棄になって、もはや剣聖という名前が恥ずかしいぐらいの状況に成り下がってしまいました。助けていただいて本当に感謝しております」


 いやいやいや、剣聖って……ライゼン、お前は大丈夫かよ。それはまさしく中二病じゃないか。

 分かるよ、ライゼンその気持ちだけは分かる。おそらく誰にも呼ばれたことがない自称の剣聖なのだろう。でもちょっと痛いんだがな。

 さすがに剣聖とかって自分で名乗ってたら追放されても仕方がないだろう。

 リーダーが追放理由で魔法剣士の方が良いとか言っていたのはおそらくは最大限のやさしさだと思うよ。もちろん、俺もそこは触れないけどさ。


「まあいいや。ライゼン、剣が得意ならさ、俺に剣を教えてよ。」

そう言うと、彼は驚いた顔をしてからすぐに微笑んだ。


「お安い御用です。いつでもお呼びください」


 こうして、俺の剣の稽古が始まったのだ。

 ……とはいえ、俺はまだ二歳。

 剣なんてまともに持てるはずもない。おもちゃの剣でさえ無理だ。剣に振り回されるだけ。

 なので最初の訓練は「走ること」からだった。


「レオン様。剣で強くなるならば、まずは基礎体力が大事です。毎朝三十分、走り込みましょう」


「う……うん」


 三十分のランニングをすることになった。

 大人にとっては短いが、二歳児にとってはかなり長い時間だ。

 厳しいが俺から言い出したことだ。これは仕方がない。頑張って走ろうじゃないか。


 そして、ありがたいことに朝のランニングにはオルドも付き合ってくれた。


「レオン坊ちゃん、無理せんでくださいよ」


 オルドが付き合ってくれているとは言っても、彼は軽く歩くだけなんだけどね。それでも俺が走るよりも早い。悔しいな。だからこそ俺は必死に足を動かした。

 俺の全力疾走でも、彼の歩きに追いつけないのが悲しい。


「くそっ、いつか追い抜いてやるからな……!」


 こうして俺の一日は、少しずつ規則的になっていった。


 朝はおよそ30分のランニング。

 その後は朝食を取って、午前中はミーナの膝の上で魔道具の本を読んでもらいながら、文字の練習をする。もちろんこっそりとミーナの胸の軟らかさを堪能しているのは内緒だ。彼女はまだ15歳、成長段階にあるのが感覚で分かる。

 昼食後の午後は魔道具の修理など。そして夕食後はゆったりとくつろいでいるうちに知らぬ間に就寝という感じ。


 気がつけば、異世界生活がどんどん充実していった。とは言え、かなり余裕のあるスケジュールになっているし変更も多々ある。

 イリス姉さんが「レオン、あそぼう!」と言って割り込んでくることもあるんだ。当然のことながら姉さんが最優先。本よりも魔道具修理よりも姉さんの方が断然大事だからね。


 前世の寝る間もない無理なスケジュールはもうたくさんだ。やはりこういったゆとりのある生活が一番。

 余裕を持った魔道具の研究、剣の修行、そして優しい家族と仲間たち。

 なんだかんだで、この世界での暮らしは悪くない。むしろかなり素晴らしいし楽しい。


「ふふっ、異世界ライフ……順調じゃん、俺。」

 そう呟きながら、今日も小さな足で庭を駆けていった。でもまだ走るのは遅いけどね。

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