第127話「王への報告」
#第127話「王への報告」
エレンの助言によって、レオンが魔石を王女ソフィアへ渡すのは到着の翌日と決まった。
当のレオンはその決定に心底安堵し、安心して眠りについた。
――だが。一方のエレンにはまだ仕事が残っている。
まずは国王エドワード、王妃カタリーナへの正式な報告が必要だ。
レオン自身は、自らの特殊性を知っているのはオルド、エレン、エリシア、ライゼンの四人だけだと思っている。
しかし実際には違う。
レオンの父ギルベルト、母セレナ。
国王エドワード、王妃カタリーナ、王女ソフィア、そしてその主治医も知っている。
すでに王家中枢は把握しているのだ。
ゆえにエレンは、到着したその夜に事前の打ち合わせ通り、報告のために王城内の応接間へと向かった。
そこには国王エドワード、王妃カタリーナ、そしてソフィアの主治医が揃っていた。
エレンが到着したのを確認し、エドワードが静かに口を開いた。
「お前の目で見て、レオンはどうだった?」
エレンは一歩進み、恭しく頭を下げる。
「はい。確認いたしました。彼は間違いなく本物です。魔道具に対する深い知識があり、私は彼の足元にも及びません。彼は魔道具回路の意味を理解しています。そして更には――」
「待て、エレン。ストップだ」
エドワードが呆れてエレンを止めた。放っておいたらいつまで話をするのか分からない勢いだったからだ。
「お前は報告の場で、いつまで話し続けるつもりだ?」
「……申し訳ありません。レオンの話になると、どうにも止まらなくなります」
「それほどなのですね?」
王妃カタリーナがくすりと笑う。いつもは口数が少なく端的にしか話をしない宮廷魔道具師のエレンがこのような状況になるのは珍しい。レオン関連のこと以外では見られない姿だった。
そうして、エドワードが話を戻した。
「宮廷魔道具師であり、国のトップの特級魔道具師であるお前でもレオンには全く及ばぬということか?」
「はい。その理解で間違いありません。彼の発想、応用力、そして慈悲の心は並ではありません。私が確認できなかった魔道回路における魔力の揺れを測定する方法まで見つけ出しました。とんでもない発見とその測定方法ですよ。しかも……」
「だからストップだ。落ち着け」
「……はい」
再び王妃カタリーナがくすりと笑った。この状況が面白くてたまらない。エレンの状況を見るだけで、詳細な報告がなくともレオンがとてつもなく凄いということが嫌でも分かる。
そしてエドワードは再度エレンに命令した。
「質問には端的に答えろ。長い説明はいらん。」
「申し訳ありません。普段からレオンがいかに凄いのか、その話をしたくてもできず抑えています。そのため、つい言葉が止まらなくなってしまいます」
エドワード、カタリーナ、主治医は互いに視線を交わした。そして三人ともが完全に理解した。レオンは間違いなく本物だ。
宮廷の頂点に立つエレンが自分は全く及ばないと断言し、いつもの冷静さをなくしてここまでおかしくなるのだ。それだけで十分だった。
そして、エドワードに促され、やや落ち着きを取り戻したエレンが報告を続けた。
「他にも報告することは多数あるのだろう?」
「はい。内密の手紙ですでに確認されていると思いますが、私の学園時代の親友エリシアをレオンの秘密を知る仲間に加えました。事後報告となり申し訳ありません」
「分かった。しかし、その理由は?」
「はい。エリシアはレオンに対し恐ろしいほどに心酔しています。命を懸けて守るとまで言っております」
「ふむ」
「そして彼女には魔法という武器があります。レオンを守るにはうってつけと考えました。彼の盾となることでしょう」
「なるほどな。でも何故エリシアはそこまでレオンに心酔しているのだ?」
エドワードはエリシアがレオンに心酔している理由についてはすでに報告を受けている。しかし再確認の意味もこめて質問した形だ。
「はい。エリシアは孤児院の運営に困っており途方に暮れていました。子供たちを救いたいのに、お金が無くどうしようもなかったのです。そして、その状況を救ったのがレオンだったのです」
「なるほどな……」
「貴族を敵視することも多かった彼女が“レオン様”と呼ぶのです。私もその変わりように驚いております」
「分かった。しかし彼女から外部へレオンの特殊性についての秘密が漏れる心配はないのか?」
「ありません。秘密が漏れたらレオンが危ないと伝えています。そして彼女は命に代えても秘密を守ると断言しています。そのため秘密が漏れる心配はないでしょう」
「ならばよい。今回のように現場でしか判断できんこともあるだろうから基本的には任せる。ただし迅速に報告せよ。必要であればこちらでも調査する」
「承知しました」
エドワードは頷いた。事後報告なのはあまり良いことではないが、迅速に決める必要がある話だから仕方がないと考えていた。
そして再びエレンに話を促した。
「ならば次の話に移ってくれ」
「はい。これはそのエリシアから聞いた話になります。レオンも凄いのですが彼の姉のイリスも相当に凄いそうです。魔法、そして剣ともに天才と言われるレベルとのことで」
「あの領は凄いな。何かあるのか?」
「それは私には分かりません。そして、彼女は、入学手続きはするものの学園には通わず領で勉学に励むそうです」
「まあ、そうなるか……仕方がないな」
本来ならば魔法、そして剣の天才のある子供には学園に通ってもらいたい。周りのお手本になるからだ。しかし自由を尊重する学園の性格上、強制するわけにもいかない。
しかもヴァルドリック領には魔法の天才エリシア、剣聖ライゼンがいるのだ、わざわざ王都の学園に来て勉強する必要もない。残念ではあるが仕方がない。
「それについても分かった。他に何かあるか?」
そうしてエレンの報告が続いた。
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