第124話「王都への再訪と学園」
#第124話「王都への再訪と学園」
身体強化に生活魔法。四歳になってからというもの、俺の周りでは新しい動きが次々と生まれている。
だが、その中にはどうしても逃れられない“イベント”が一つだけ存在する。
――それは、約三カ月に一度の王女様訪問だ。定期的に王都に行く必要がある。
俺は以前、変装をして「レイゼン」という偽名を名乗り、王女様に魔力吸引魔道具を渡した。
それで王女様の病状は大きく改善されたようだ。
それは良かったのだけど、魔道具にセットしてある魔石の定期交換が必要という話をしたところ、その交換時には必ず来てほしいと言われ、約三カ月に一度の定期訪問を約束してしまったのだ。
つまり、俺は三カ月に一度は王都へ行き、レイゼンに変装をして王女様と面会しなければならない。
どうしてあの時、あんな約束をしてしまったのか。回避する方法はなかったのだろうか。
そう考えることもあるが、今さら悩んでも仕方がない。もう済んだ話だ。後悔しても、いくら振り返って考えても覆らない。諦めて腹をくくるしかないだろう。
そして気がつけば、あれからもう三カ月近くが経っていた。再び王都へ向かう時がやってきたのだ。
王都への訪問については、エレンさんが機転を利かせてくれた。なんと、彼女が王都行きに同行してくれることになったのである。いや、正確にはエレンさんの王都行きに俺が同行する形だ。
王都に行く理由などなかった俺としては三カ月に一回の訪問はかなり困った話だったのだけど、エレンさんが定期的に王都に行き、そのたびに俺が同行するという形にしてくれたということで本当にありがたい。
しかも今回は、ライゼンとエリシアさんも一緒だという。どうやらエレンさんだけでは不安だということで、ライゼンもしくはエリシアさんが同行することが決まったらしい。
初回ということもあり、二人とも同行することになったようだ。
すなわち……武力面において、エレンさんへの信頼は皆無。まあ普段から運動もしないインドア派なので、武力に信用がないのは仕方がないだろう。
さらに今回は、イリス姉さんも王都へ向かうことになった。目的は、王都にある学園での入学手続きだ。
姉さんが学園に……これでしばらく姉さんと会えず寂しくなるのかと思いきや、どうやらそうでもないらしい。この世界の学園制度は、想像していたよりもずっと自由だった。
学園には最大で三年間通える。
必須なのは入学手続きのみ。講義への出席は任意であり、卒業を希望する場合は試験で合格すればよい。
極端な話、講義をほとんど受けていなくてもいいのだ。年に一回ある試験さえ合格できれば卒業できるし、別に卒業が義務付けられているわけでもない。
卒業試験に合格できれば箔が付くという感じで、それが欲しい人は受ければいいらしい。普通に受けない人も多い。
また、学園の役割は学問だけでなく、貴族同士の人脈形成にもあるらしい。派閥貴族が集まり、親睦を深め合う感じとのことだ。俺の代で言えば公爵家の子息二人の派閥だろうね。
そのため、三年間の間、毎日定期的に学園へ通うのは王都近郊の派閥に属する貴族子息たちが多い。王都から遠方で派閥に属する貴族の子息は、王都の屋敷に滞在するか、それとも下宿寮に入るのが一般的とのことだ。もちろん無理をせず領にとどまるケースもある。
ここで個人的に気になるのは下宿寮……なんだか楽しそうな響きだ。
ちなみに姉さんは学園に通う予定はない。うちの辺境伯は派閥も小さいので特段、人脈形成も必要でないとの判断だ。
またエリシアさんによれば、学園で学ぶ内容は必要に応じて彼女が教えてくれるとのこと。エリシアさんは学園の成績はトップクラスだったらしいので、これほど心強い教師はいないだろう。
ということで姉さんは入学手続きを済ませ、いくつか講義を受けた後は領地へ戻るつもりらしい。今回の俺の王都滞在予定は一週間ほどだが、俺と一緒に帰ってくる予定だ。
俺としては前世の感覚もあって、学園の入学手続きだけして講義は受けないというのがどうにも理解しづらい。そこで、その辺りについて姉さんがどう考えているのか聞いてみた。
「姉さんは王都に滞在して学園に通わないの?」
「もちろん。レオンと長いこと会えなくなるのは寂しいからね。だからずっと領にいるよ!」
さすが姉さん、嬉しいことを言ってくれるじゃないですか。
……となると、俺が入学する時はどうしようか。
下宿寮は魅力的だし友達を作りたい気もするけど、姉さんがこんな感じだと領にとどまっていた方がいいような気もする。
それとも人脈形成のために王都に留まった方がいいのだろうか?
まあ、二年先の話だ。おそらくは父さんや母さんがアドバイスしてくれるだろうし、その時の俺に任せるとしよう。再び「未来の俺よろしく案件」に登録である。
こうして今回の王都行きのメンバーは、俺、イリス姉さん、ライゼン、エリシアさん、エレンさん、そして護衛の騎士たちに決まった。
父さんと母さん、そしてオルドは領にお留守番である。
思えば、父さんと母さんと離れて過ごすのは、王都への往復と滞在の二週間程度とはいえこれが初めてだ。
少しだけ――寂しい気もするけど、ちょっとだけ親離れもしてみようと思う。




