第119話「覚悟とスローライフの両立」
#第119話「覚悟とスローライフの両立」
俺は武器の魔道具の開発も進めることにした。家族、そして領民を守るための最低限の力は必要だ。逃げないと決めたのだから、そこはぶれないつもりだ。
……とはいえ。
現実問題として難しい部分がある。やることはそれだけではない。その理由がある。なんと……王都から戻ってきて、すぐに様々な勉強が始まったのだ。
どうやら三歳の魔力測定が終わると、本格的な教育が始まるのが一般的らしい。それは我がヴァルドリック家だけではない。王国全般でそうなのだという。
でも、どこの貴族でも魔力測定後に勉強を始めるなんて、おかしくない?さすがに三歳で勉強は早すぎるのではないかな?
そう思ったけど、よく考えたらこの世の中の知能の進みは違う。俺の感覚では前世の二倍から三倍のスピードで知能が進んでいる感じだ。そういう意味では今の俺の三歳は前世で言えば六歳~九歳ぐらい。
すなわち小学生低学年ぐらいになる。勉強を始める時期としては合理的とも言える。こんなに早くに勉強が始まるのは残念だが、それが決まりと言われればどうしようもない。
……そして、王女様や公爵家の子息二人は別格だろう。
三人ともに俺よりも断然しっかりしていた。
おそらく、あの時点ですでに相当な勉強を積んでいたはずだ。すなわち合同魔力測定が始まる前から勉強していたと思われる。
現状ではかなり負けている状況。俺もあの三人に負けないように頑張らなければいけない。仲良くなっただけに負けたくないという意識がむくむくと出てきた。
でもさ……正直なところ、俺は勉強は好きではない。できれば、勉強などしたくないのだよね。好きなことだけやっていたい。
それでも負けたくないという気持ちも出てきたし、領民のために武器の開発も頑張ると決めた以上、勉強は避けては通れないだろう。
もうやるしかないのだ。その一方でゆっくりだらだらしたい。その揺れ動く気持ちの中での板挟みになっている。
それにしても――どうしてこうなった?
俺はつい最近まで完全なるスローライフを所望していたはずだ。勉強など適当に手抜きすればいいはずだった。
それがいつの間にか、家族や領民を守るために頑張ろうと決意するまでになっている。
魔道具の墓場、そして武器の魔道具。それらを見て、衝撃を受け考え方が大きく変わってしまったのだよね。
今でも、正直ベースで言えばスローライフへの道に戻りたい。それが一番、楽なのだ。だけど、いろいろと知ってしまった今では、完全に戻るのは難しい。
どうしたものか……このまま頑張り続けるしかないのだろうか。勉強もして武器の開発もして体も鍛えてと、がむしゃらに動き回るべきなのだろうか?
――いや、違うな。
やはりブラックは駄目だ。それだけは絶対に駄目だ。前世と同じ失敗を繰り返してはいけない。
ある程度は頑張り、そしてちゃんと休む。まずはそれを目指そう。
そうだよな。勉強も、スローライフも、両方やればいいのだ。適度に勉強して軽く運動して嫌になったら、おやつを食べながら寝そべってだらだら休むのだ。
そうだ、そうしよう。頑張りすぎはよくない。前世のように倒れたら何の意味もないからね。
働きすぎて倒れてしまうような経験は、もう二度と御免だ。みんな悲しむだろうし。
という感じで、俺は王都から帰って来てから勉強を始めるようになったわけだが……。
すぐに新しい問題が発生した。
それは何か?
ミーナと一緒の楽しい読書時間が、一気に減ってしまったのだ。ミーナの膝の上に座らせてもらうだけでも至福の時。柔らかい女の子の体に包んでもらえる。
さらに俺の大好きな魔道具関連の本を読んでもらえる。
そして、さりげなく寄りかかることで――発展途上の女の子の柔らかな胸の感触を楽しめるという、夢のようなボーナスタイム。
合法的に。しかも誰にもおかしいと気付かれずに至福の時を楽しめた。こんな幸せな時間は前世から考えても初めてだったのに……。
(注:この手の男性の行動は全て気付かれているので注意)
とにかく、その至福の時がほぼ無くなってしまった。あまりにも残念。
しかし、これもいつかは終わると覚悟もしていたし、文句を言おうにもその理由からして不謹慎すぎて言えない。
どうしようもない話だ。これからは机に向かって勉強するしかない。理由もなく、ミーナを付き合わせるわけにもいかない。
こうして俺は血の涙を流すような気持ちでミーナとの読書タイムを諦めた。
こうして、そんないろいろな変化があった中で始まった勉強は多岐にわたった。
文字の読み書き、計算、そして領地経営といったところだ。必要に応じて魔法の勉強もするらしいけど俺は魔力量が少ないこともあって簡単に触れる程度になっている。
そうして、俺の勉強とスローライフの両立の生活が始まったのだ。無理はせず、そこそこ頑張っていこうと思う。




