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辺境生まれの小さな天才魔道具師( 旧:辺境伯貴族家の息子、魔道具修理で無双し王女をも救う)【書籍化予定】  作者: まめたろう
2-5章「王都からの帰還」

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第118話「守るための覚悟」

#第118話「守るための覚悟」


(レオン視点です)

 俺は武器の魔道具が戦争で使われると知って怖くなった。

 そうして、もう一度、倉庫の奥に置かれた武器の魔道具を見つめた。魔道具は大好きだ。でも、この武器の魔道具の先には戦争、そして人の死もあるかもしれない。

 胸の奥が、ひやりと冷えた。そこでエレンさんが心配そうに声をかけてきた。


「レオン、大丈夫ですか? 顔色が悪いようですが」


 オルドも無言のまま、静かにこちらを見ている。ああ、どうやら心配させてしまったみたいだ。


「うん、大丈夫。この武器が戦争で使われると思ったら……ちょっと怖くなっちゃってね」


 そう口にすると、エレンさんは申し訳なさそうな顔をした。


「ごめん、レオン。武器を見せるべきではなかったね。まだ早かったかも」


「いや、そんなことないよ。ちょっとショックだけど……いつかは見て、考えないといけないことだから」


 俺は静かにそう答えた。

 そして少し考えた。先日の魔道具の墓場問題もそうだ。父さんが言っていたように考えることから逃げてはいけない。

 まだ、俺はこの国の歴史を詳しくは知らない。けれど、きっと過去には戦争があったのだろう。

 戦争になれば、きれいごとだけでは済まないのは間違いないのだ。ヴァルドリック辺境伯家の息子である俺の行動によって、大きく結果が変わるかもしれない。責任重大だ。


 家族を、仲間を、そして領民を俺は守らなければいけない。守るために戦わなければならない場面もあるかもしれない。

 武器の開発も、その一つだろう。守るためには、やらなければいけないことはたくさんある。その責任から逃げてはいけない。


 思えば前世の日本は平和だった。少なくとも俺にとっては戦争は縁のない話、遠い国の出来事だった。

 けれど、それは本当に「何もなかった」からなのだろうか。

 多くの人が自衛隊に入り、武器を整備し、抑止力を高め、政治家が外交で話し合いを重ねていたのだろう。多くの人の努力がそこにあったはずだ。

 だからこそ戦争が起きなかっただけなのかもしれない。きっと、みんなが頑張ってくれたおかげなのだろう。


 一方で、この世界はどうだろう。

 これだけ武器の魔道具がたくさんあるのだ。前世よりも、戦争が身近な可能性だってある。そうだとしたら――俺だけが目を背けるわけにはいかない。しかも俺は貴族の息子、前世のように一市民ではないからなおさらだ。


 戦争にならないようにするためにも、武器の魔道具をしっかりと開発して、強い国だと他国に思わせる必要があるのではないか。

 前世の日本でテレビ議論を聞いたことを思い出した。


「戦争をしない日本は武器など必要がないのでは?」


「いや、それは違う。もちろん日本からは戦争は仕掛けない。しかし抑止力は必要だ。抑止力がないと攻撃を受けてしまう」


「基地があれば、そこから攻撃を受ける。近隣の住民の安全はどうする? やはり武力を持つことが戦争に繋がるのでは?」


「いや、基地があるからこそ簡単には蹂躙されない。そして、武器があるからこそそこにいる住民は守られるのだ。守るための最低限の防衛力は必要だ」


 といった感じの議論がなされていた。

 あのときは深く考えもしなかった。けれど今なら、戦争を身近に考え始めた今なら少しだけ分かる気がする。そして本気で考える必要があるだろう。


 どちらが正しいのか俺には分からない。これは結果論でしか語ることはできない話なのかもしれない。

 でも俺は思う。守るための力。それはやはり最低限は必要だろう。それを持たなければ守れないものもあるかもしれない。後悔だけは絶対にしたくない。


 ――決めた。

 俺はできる限り武器の魔道具の開発を進めよう。

 戦争を仕掛けるためではない。守るための武器だ。もちろん、それで多くの命を奪う可能性もあるかもしれない。


 けれど俺はヴァルドリック辺境伯家の息子として生まれたんだ。家族、仲間、領民を守る責任がある。


 貴族の息子だからこそ、この問題からは逃げるわけにはいかない。

 思えば、公爵家の二人も言っていた。


「一番大事なのは領民だ」と。


 それは、俺も同じはずだ。甘えてはいられないだろう。だから、もう迷わない……俺は武器の魔道具の開発も進めよう。


「エレンさん、武器の魔道具について一緒に考えてもらっていい?」


「はい。分かりました。でもレオンは本当に大丈夫なのですか?」


「もちろん。俺はヴァルドリック家の息子なんだ。領民を守る必要がある。武器の開発からも逃げるわけにはいかない。何かアイデアないかな?」


 エレンさんはびっくりしたような表情をした。そして少し考え込んだあと、静かに口を開いた。


「私としては……まずは小型化して、レオンを守る武器ができればいいかなと思っています」


「さすがエレンさん。それ、いいね!」


 思わず笑みがこぼれた。俺は難しく考えすぎていたのかもしれない。いきなり領を守る大きな武器ではなく、自分たちを守る小さな武器から考えればいいのだ。


 防御寄りの装備でもいい。反撃よりも制圧を重視したものでもいい。まずは守るための技術から積み上げていってもいいだろう。

 その過程で、もしくは領内外の状況の変化で大きな武器が必要だと分かれば――そのとき考えればいい。


 俺はもう一度、武器の魔道具を見つめた。

 武器の魔道具の開発は今でも凄く怖い。それは変わらない。けれど、俺は絶対に逃げない。守るための力を持つ。自分の責任を果たす。

 そう、心に誓った。

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