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辺境生まれの小さな天才魔道具師( 旧:辺境伯貴族家の息子、魔道具修理で無双し王女をも救う)【書籍化予定】  作者: まめたろう
2-5章「王都からの帰還」

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第117話「レオンの懸念」

#第117話「レオンの懸念」


 レオンはオルドとエレンと共に武器の魔道具を見るために魔道具倉庫へ。そしてオルドから武器の魔道具の説明を聞いた。

 魔石の属性によってやや用途が異なるのだ。風属性の場合は基本は近距離用だ。砲弾を込めたら威力や距離は増すが魔力消費が大きい。

 次に火属性の魔石、水属性の魔石についてもオルドから説明を聞いた。


「火属性なら砲台の種類によって違いますが、火球や火の矢が飛ぶことになります。他の魔法よりも威力は落ちるんですが、火の恐怖が相手を襲うことになります。遠くにも飛ぶので相手陣地に火を放つために使うケースもあります。敵が遠距離の場合に使うことが多いですね」


「火魔法か……確かに、想像するだけでも怖いかな」とレオン。


「水属性ならやはり砲台の種類によって違いますが、水弾や水の矢が飛ぶことになります。水魔法はその重量の関係で威力があります。また相手を濡らすことで動きを悪くさせる効果もあります。こちらは近距離~中距離向きでしょうか」


「確かに水は威力がありそうな気がする」とレオン。前世での津波被害などを思い出した。勢いがある水は怖い。


 そしてオルドはそれぞれの威力についての説明を続けた。


「それぞれの威力は、風魔法で砲弾を発射>水魔法>風魔法>火魔法の順番で高くなります」


 その原理を聞いてレオンは感心した。こうやって武器の魔道具は状況によって魔石を変え、性質の異なる武器にもなるのかと。

 続いてエレンが説明した。


「武器の魔道具の弱点は他にもあります。先ほどの説明では重たくて故障が多いということでしたが、それだけでなく魔力消費が大きい。それが廃れた原因の一つでもあります」


「よく故障する、重たい、更に高価な魔石の消耗が激しく交換頻度も高い。だったら魔法使いを何人か連れて行った方が早い、という結論になったのです」


 レオンはその説明にも納得した。

 武器の魔道具は重たく故障しやすいだけでなく、全般的に消費魔力が非常に大きいのが難点だ。

 一応、ON/OFFらしきスイッチはあるのでそれで発射するのだろう。

 一発にどのぐらいの魔力を使うのかは分からないが、数発で終わりならばさすがに戦場で使うには厳しい。

 レオンは武器の魔道具をじっと見つめた。


(確かに武器の魔道具はちょっときついな……重くて壊れやすくて魔力消費が大きいとか弱点が多すぎる)


 一応、回路部分には壊れにくいようにするカバーがある。しかし雑に扱えばそこまで意味もないだろう。

 さらに、魔道回路はカバーがあろうがなかろうが経年劣化で普通に壊れる。それもいつ壊れるか分からない時限爆弾のようなものだ。

 武器としてはあまりに繊細すぎる。

 レオンはそこで、もう一つ気づいたことを質問した。


「武器の大きさが違うのは、やはり用途別なの?」


 オルドが頷いた。


「はい。大型の魔石を入れる大きな魔道具と、中型の魔石を入れるやや小さな魔道具があります」


「単純に大型の方が威力が高いという感じかな?」


「はい、概ねその通りです」


 なるほど、大型の魔石を入れる魔道具が威力は高いのだろう。しかし、その分、重くて魔力消費も激しいはずだ。更に扱いづらくなっていく。

 そしてレオンは巨大な砲台をもう一度見た。


「まあとりあえずロマン枠かな。これだけ大きな武器の魔道具ならば、強力な魔物も軽く倒せそうだね!」


「はい。それだけでなく戦争で人に向けて使うこともありますね。うまく使えば戦況を一変させることができます」とエレン。


「えっ?」


 そのエレンの言葉にレオンは急に固まってしまった。そして震えを感じた。

 武器を魔物退治だけではなく戦争にも使うことがあるのは当然だ。それは当たり前の話ではあるが、魔物に対して使うとばかり思いこんでいた。

 そして真っ青な顔をして尋ねた。


「そっか、武器だから人と戦う、戦争の道具でもあるのだよね」


「はい。そういうことになります」とオルドは悲しそうな顔で答えた。


 武器の魔道具は魔物を倒すためだけに使われるのではない、人に撃つこともありえるのだ。それはレオンにとってかなりのショックな話だった。

 頭のどこかで考えてはいた。しかし人に向けて撃つことについて真剣に考えることを無意識に拒否していたのだ。


 これまで触れてきた生活魔道具とはまるで違う。武器であり、明らかに人の生活を便利にするための道具ではない。

 これは破壊するための道具なのだ。

 見たいと思っていたはずなのに――。

 湧き上がった感情は、興奮ではなく“恐れ”に変わった。


 レオンは、無意識に小さく息を吐いた。この武器の魔道具は自分が触るべきものなのだろうか?

 使い勝手がよくなると、それによって多くの人が亡くなってしまう可能性もある。自分の手で戦争を大きく変えてしまうかもしれない。

 そして、その領域に一旦入ったら戻れなくなるような怖さを感じたのだ。

 

 これまでレオンにとって魔道具は興味の対象であった。そして楽しさの象徴でもあった。

 しかしここにある武器の魔道具はそれらとは違う。魔物を倒す武器であると同時に戦争で使う武器でもあるのだ。

 レオンは茫然と立ち尽くした。倉庫の空気は、彼にとってどこかひんやりと重かった。

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