第116話「眠れる武器」
#第116話「眠れる武器」
ライゼンとエリシアがお互いの実力のすり合わせなどの目的で森へ向かったその頃――。
屋敷では、別の“やる気”が高まっていた。 エレンが目を輝かせてレオンの元へ。
「レオン、武器の魔道具を見に行きましょう!」
「行きたいのはやまやまだけど……父さんと母さんから禁止されているんだ。危ないからって」
「大丈夫です。私が当主様と奥方様にも了解を取り付けました!」
胸を張るエレン。彼女も単なる魔道具オタクではない。やる時はやるのだ。
レオンはその言葉にびっくりした。危険で駄目という話だったのにどうしていきなり話が変わったのだろう?首をひねった。
そこでエレンが理由を説明を始めた。
「私は一応、魔道具の専門家ですからね。私が見るならば大丈夫だろうということで許可は正式にいただいております。さぁ、レオン、一緒に見て語り合いましょう!」
その妙な勢いにレオンは一瞬たじろいだ。
だが――武器の魔道具。それは未知の魔道具だ。すなわち未知の魔道回路、新しい構造が見れるかもしれない。それは見たい。ものすごく見たい。
「……うん、行く! エレンさんありがとう!」
「いえいえ。私がレオンと一緒に見たかっただけですから」
ということで、レオンとエレンは倉庫へ向かうことになった。エレンにとっては初めてということもあり、オルドが案内することに。
そこはかつてレオンが魔力視認魔道具を初めて見た場所。そしてその魔力視認魔道具を魔改造するきっかけになった場所でもある。
倉庫に入ると、相変わらず故障したと思われる魔道具が山のように積まれていた。
三人はその奥――以前は立ち入りを禁じられていた武器の魔道具が置いてある区画へと足を踏み入れた。
思わずレオンは独り言ちた。
「大きい……」
そこにあったのは、砲台のような大型の装置だった。そこに魔道回路の基板が組み込まれている。その魔道基板に魔石を装填し、その動力によって魔法を撃つ構造と見て取れた。
だが、レオンはその構造もさることながらその状態が気になり、息を呑んだ。
(……状態がかなりひどい)
これまで故障した魔道具を見たことは何度もある。しかしこの武器の魔道具、そして魔道回路の傷み具合はそれとは比べ物にならないぐらいにひどい。
特に魔道回路の痛みが激しい。削れ、欠け、断線など。完全に回路が削り取られているケースもある。
「オルド、なんでこんなに傷んでいるの? 今までに見たこともない状況なんだけど?」
「ああ、それには理由があるんです。武器の魔道具は戦況に応じて移動して使いますからね。一応は丁寧に扱うことが規定されていますが……それでも戦場では一刻を争いますから雑に扱わざるを得ない状況は多いんです」
「特に壊れた場合の扱いが大変でして。壊れたら、ただの重い金属の塊に変わりますからね。兵士としては、できれば捨てていきたいぐらいのものでして……」
「なるほどね。その気持ちは分かるかも」
戦場は過酷な場所だ。そこでは武器も雑に扱うしかないケースは多い。ちょっとした判断ミスが命取りだからだ。
「ええ。使えなくなれば完全に荷物です。それでも高価な物ですから、なんとか回収してきた……という状態です」
レオンは完全に納得した。確かに、戦場で壊れた重たい砲台など兵士にとっては厄介者でしかない。捨てていきたい気持ちにもなるだろう。
高価なので持ち帰りを命じられてはいても、兵士にとっては苦痛でしかなく馬鹿馬鹿しい話だ。
自分たちの命よりも魔道具の方が大事なのかと。そう思ってしまうと扱いは自然と雑になる。状態が悪くなるのも無理はない。
そうして三人はいくつかの武器の魔道具を見て回った。先ほどのより小さいものもある。
ただ、大きさの大小はあれど、その基本構造は同じだ。砲台本体+魔道回路、そしてそれにセットする魔石という形。
そこでレオンは質問した。
「魔石はどの属性をセットするの?」
「風が多いですね。火、水も使うケースはあります」とオルド。続いて、その用途についても簡単に解説した
「風属性の魔石を使う場合は大きく分けて二種類の用途があります」
「単純なのは風弾を射出し、敵を吹き飛ばすケースですね。それだけでも近距離ならばかなりの威力になります。もう一つは砲弾を込めてそれを発射するケース。弾を込める場合は威力が高まりますが魔力の消費が大きいのが難点になります」
レオンはオルドの説明を聞いて考えた。
風魔法の場合は魔道具の武器は二つの使い分けができるとのことだ。風弾は近距離用とのことで、空気抵抗もあって遠距離になると威力は出ないのだろうと推測。
そして、その弱点を補うために砲弾を込めて撃つ場合、威力と距離は出るが魔力消費が大きくなるということなのだろうと考えた。
次にオルドは火魔法の魔石、水魔法の魔石のケースについて説明を追加していった。




