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辺境生まれの小さな天才魔道具師( 旧:辺境伯貴族家の息子、魔道具修理で無双し王女をも救う)【書籍化予定】  作者: まめたろう
2-5章「王都からの帰還」

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第115話「剣聖と天才魔法使い」

#第115話「剣聖と天才魔法使い」


 レオンの特殊性について執務室で会合を開いたその日の午後。ライゼンとエリシアは早速、二人で魔物討伐へ向かった。


 二人共に戦闘狂の部分もあるので、動くとなったら早い。エレンはやや呆れながらも二人を見送った。そしてレオンを独り占めできるとほくそ笑んでいた。


 ライゼンとエリシアは他の人間を同行させず、二人での魔物討伐を選んだ。

 たった二人で森へ入るなど褒められる話ではない。

 本来ならば剣士、魔法使い以外にも盾役、斥候、後衛など……通常のクランであれば四人以上で編成するのが常識である。


 二人での魔物討伐は大変なのだ。だが、その“常識”はこの二人には当てはまらなかった。

 森の浅い区域に入ってすぐ、魔物の群れが現れた。


 先に動いたのはライゼンだった。地を蹴った瞬間、剣が閃く。


 ――速い。あっという間だった。


 目にも留まらぬ剣さばきで、魔物の急所と思われる箇所だけを的確に斬り抜いていった。無駄な力は一切使わない。

 最小限の動きで、最大限の効果を生み出す。近距離にいる魔物は、次々と地に伏していった。


 だが、それだけでは終わらない。

 ライゼンはあえて“倒しきらない”魔物を残し、位置取りを調整し始めた。

 エリシアはその動きを見て少し考えた。


(……ああ、そういうことね。私に撃てということか。敢えて声を掛けないと言うことは声掛けが必要なレベルかどうか私を試しているのね。ならば期待に答えましょう)


 エリシアはすぐにライゼンの意図を理解した。

 自分も軽く動き、間違ってもライゼンに魔法が当たらないように移動。その結果、エリシアの前方には綺麗な射線が生まれていた。エリシアの意図をライゼンも読み取り、その位置を微調整したのだ。


(この人やるわね。かなり撃ちやすい)


 エリシアは移動して、すぐに魔法を撃ちだした。

 放たれた魔法は無駄に大きくない。エリシアが調整できる必要最小限の威力の魔法だ。  

 それでも森の浅部にいる小型の魔物程度であれば、それで十分だった。


 一体、また一体。

 確実に、そして効率的に魔物を倒していく。


 エリシアは魔力調整が得意だった。小・中・大。およそ三段階の威力を自在に使い分けることができる。

 弱い魔物には小威力。少し強い個体には中威力。


 魔力の無駄遣いをしない。それによって長期間の戦闘を可能にしていた。

 いくら魔力量が大きくても大きな魔法ばかりを撃てばすぐに魔力が尽きる。

 魔力の調整はこの世の中の魔法使いにとって、かなり難しい部類ではあるがそれこそがエリシアの強みであった。

 魔力ランクB級ということで、それだけでも実質的に国内トップの天才クラス。

 更に魔力調整までするということで、その他の魔法使いの追随を許さない状況だった。もちろん、努力のたまものである。

 それを横目で見ながら、ライゼンは内心で舌を巻いていた。


(これは……たいしたものだ。すでに帝国の上位クランでも十分に通用する実力。王国の魔法使いのレベルはこれほどまでに高いのか? もしくは彼女だけ特別なのか?)


 魔法使いにもいろいろいる。

 魔法を重視しすぎて、体力がなく動きが鈍いものも多いのが現実だ。それでは一人や少人数では戦えない。

 大きいクランならばそれでも良い。誰かが魔法使いを守る盾役になればいいからだ。

 一方で、レベルの高い魔法使いは一人でも戦える。それがエリシアだ。


 しかも、多くの魔法使いは威力の制御が粗い。何度か魔法を放つとすぐに魔力が尽きて使いものにならなくなる。

 だがエリシアは違う。動きは素早く、魔法は正確で冷静、更には威力調整で消費を抑えながら戦える。さすが天才と言われるだけあった。


 やがて少し大きな中型寄りの魔物が現れた。

 ライゼンが踏み込み、動きを止める。


「今です」


「ええ」


 エリシアは一段階上の魔法を放つ。轟音とともに魔物は倒れた。

 連携は完璧だった。


 戦闘が一段落し、二人は軽く息を整えた。


「凄いな。驚いた。エリシア殿の魔法は見事だ。自ら動けて、威力を自在に調整できる魔法使いはそう多くない。長時間の戦闘に強いし申し分ない」


「しかも、相手の意図を正確に読み取る、その能力も申し分ない。まさか王国に来て、これほどの魔法使いに出会えるとは思わなかった」


 ライゼンがエリシアを褒めたたえた。しかし驚いたのはエリシアも同じだ。


「ありがとう。でも、ライゼンさんの剣も凄いわ。いえ、剣も凄いけど、立ち回りがとんでもないわね」


「……動きが早い。しかも無駄がない。さらに魔法使いの位置を常に把握しながらの魔物の牽制。ライゼンさんほど魔法が撃ちやすい剣士は初めてよ。相当に場数を積んでいるのでしょうね」


「まいったな。動きの細かいところまで全てお見通しか。世間一般の魔法使いとはまるで違う」


 お互いが軽く笑い、お互いを認めていた。まるで長年組んできた相棒のような感覚すらある。


 だが――。

 森の奥から、複数の気配がした。魔物の群れであろう。


 二人は一瞬視線を交わした。小型が多数、そしてやや大きな中型に近い魔物も混じっているように見える。

 勝てないわけではない。おそらくは十中八九、問題なく勝てるであろう。しかしリスクを冒す必要もない。

 盾役がいない状況で群れを相手にするのは、ほんの僅かではあるがリスクがある。


「今日はここまでにしましょう」


「賢明ですな」


 無理はしない。少しでもリスクがあると感じた時に撤退するのもまた実力の一つだ。

 森を出た後、お互いについて考えていた。強い。間違いなく強い。そしてその判断力も素晴らしい。


 だが、二人共に現状に満足はしていなかった。


(まだまだ足りない。全盛期の八割にさえも届いていない)


(まだまだです。これでは……強い敵が出てきた時にレオン様を守り切れるか分からない)


 ライゼンは剣を握り直した。一方のエリシアは静かに拳を握る。レオンを守るためには、自分がもっと上を目指さなければならない。


 剣と魔法の頂点に向けて。

 二人は互いを高め合う存在として、共に研鑽していくことを心に誓った。

 ――レオンの知らぬところで、守護の力は確実に強まっていくのだった。

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― 新着の感想 ―
その内ゴーレムとか創って 盾役も完備なレオン防衛網の 構築もありかと?
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