第114話「武器開発の許可」
#第114話「武器開発の許可」
ギルベルトの執務室にてセレナ、オルド、ライゼン、エレン、エリシアが集まっていた。そしてレオンの特殊性の共有などについて情報のすり合わせを行っていた。
エレンがレオンをおよそ三カ月に一回、勉強の名目で王都に連れて行くことが正式に決定した。
そこで更にエレンが続けた。
「ただし、そこで問題があります。私には護衛としての力がありません。よって、王都に行く際にはライゼン殿、もしくはエリシアに同行してもらいたいと考えています」
「なるほど。それはそうだな」
ギルベルトは腕を組み、しばし考えた。
「我が領から護衛を出すことも可能だが、いくらレオンが一緒に行くとは言え護衛が付き過ぎるのは不自然だ。ライゼン、もしくはエリシアが同行するという案は理にかなっている」
「私は賛成だが、セレナ、オルドはどう思う?」
「私は賛成です。それでレオンの安全が担保できます」とセレナが微笑んだ。
「私も問題ないと思います」とオルドも頷いた。
こうして、三か月に一度、レオンとエレンが王都へ向かい、その護衛をライゼンまたはエリシアが務めることが決定した。
昨日の夜にライゼン、エレン、エリシアの三人で打ち合わせした通りの流れとなったわけだ。
「おおよそ、報告に聞いていた通りだな。これで話は終わりかな?」
ギルベルトがそう言いかけた時、エレンが再び語り始めた。
「恐れながら、それに付随して、いくつかお願いがございます」
「申してみよ」
「まず一つ目は、ライゼン殿とエリシアに、この領での魔物討伐の任務を共に行ってもらおうかと。互いの実力を知ることができます」
「気持ちは分かる……とは言え、その必要はないと思うがな」とギルベルトは苦笑した。
「ライゼンは帝国で“剣聖”と呼ばれた剣士だ。私を含め、この領内で敵う者はいないだろう」
その言葉にエリシアは目を見張った。凄腕の剣士だとは聞いており、おそらくはその通りだと思ってはいたが、まさか帝国の剣聖だったとは。
「そして、強いのはエリシア殿も同じだ。学園では天才魔法使いと称されたと聞いている。実際に先日の魔物退治の腕前も見事なものだった。やはり我が領で魔法で敵う者はいないだろう」
「……恐れ入ります」とエリシア。
エリシアは静かに頭を下げた。そしてライゼンも、この時点でエリシアの評価を上げた。思っていた以上に強いかもしれないと。
そしてギルベルトが話を続けた。
「とは言え、実力のすり合わせをするのは全く問題ない。それどころかプラスしかないだろう。二人で魔物討伐することを許可する。何か必要なものがあればいつでも言ってくれ」
「「感謝いたします」」
ライゼン、エリシアが深く頭を下げた。これでお互いの実力を知ることもさることながら、連携についても確認ができるだろう。
今後、場合によっては一緒に戦うこともあり得るわけだ。そのためには連携の確認も必須。
そしてエレンは続けた。
「二つ目のお願いです。この領に保管されている武器型の魔道具の修理と開発を、私とレオンとに行わせていただきたいのです」
その依頼についてはギルベルトは表情を険しくした。
実は自分も以前レオンに武器の魔道具を触らせようと提案したのだ。しかしその時は、安全性に問題があるとしてセレナとオルドの反対を受け、その案をひっこめた経緯がある。
「それは何故だ? 武器の魔道具は危険だと思うぞ。当然、エレン殿も知っているだろう。敢えて武器の魔道具の修理、開発を行うという、その理由を聞こうか?」
そのギルベルトの疑問にエレンは冷静に答えた。
「私は戦う力を持ちません。しかし武器の魔道具を扱えるようになれば、いざという時にレオンを守る力になれるかもしれません」
「もちろん武器の魔道具は取り扱いに注意が必要です。しかし、私がいるときであれば、危険な実験を防ぐことも可能でしょう」
ギルベルトはゆっくりと頷いた。
「理にかなっているな。セレナ、オルドはどう思う?」
セレナは一瞬迷ったが、やがて静かに口を開いた。
「エレンさんが側にいるなら安心ですからいいと思います。ただし、レオンが無茶をしないよう、必ず見守ってください」
「それはもちろんです。承知いたしました」とエレン。
オルドも賛同の意を示した。
「レオンぼっちゃんは行き過ぎることが多いと思います。きちんとブレーキをかけてくださいね」
「分かりました」とエレン。
こうして全ての話がまとまった。ギルベルトは満足そうに頷いた。
「ならば私から王都に手紙を書こう。エレン殿からもおよそ三カ月に一回レオンと共に王都に行くこと、そして殿下にはエリシア殿も秘密を共有する仲間になったことを伝えておいて欲しい。そして必要に応じて、その他の情報も説明しておいてもらいたい」
「分かりました」
こうしてレオンは、期せずして武器型の魔道具にも触れることとなった。しかしギルベルト、セレナ、オルドはもちろんのこと、エレンでさえもレオンがどのような魔道具を開発するのか、予想できていなかった。
修理と小型化ぐらいだろうと考えていたのだ。エレンはそれで自分も戦えると考えたのだ。
しかしそれはレオンを甘く見過ぎていた。
レオンに武器の魔道具を触らせるという……この決断が、ヴァルドリック家のみならず、アストラル王国の未来を大きく揺るがすことになるとは、この時まだ誰も知る由もない。




