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辺境生まれの小さな天才魔道具師( 旧:辺境伯貴族家の息子、魔道具修理で無双し王女をも救う)【書籍化予定】  作者: まめたろう
2-5章「王都からの帰還」

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第109話「魔力の震えと忠誠心」

#第109話「魔力の震えと忠誠心」


 レオンは魔道具の修理についてエレンに教えていた。照明の魔道具を題材に、その魔道回路の意味を一つひとつ解説していく。

 その説明を聞いてエレンは興奮を隠せなかった。

 今までただの線の羅列としか思えなかった魔道回路に、確かな意味があると知ったからだ。

 それは単なる知識の一つではない。魔道具研究の世界そのものを変える、革命的な発見と言っても過言ではなかった。


 しかしながら、その後に続く断線の確認作業は、レオンにはできてもエレンにはできなかった。

 魔力の流れを指先でなぞり、その微かな震えを感じ取る。レオンにとっては当たり前の作業であっても、エレンには何一つ感じ取れなかったのだ。


(これが……才能の差なのでしょうか)


 エレンは小さく肩を落とし深く落ち込んだ。

 一方でレオンは落ち込む彼女の様子を見て考え込む。


(何で差があるのか?そして、どうにかならないかな……)


 そして、あることを思いついた。


「エレンさん、少しここで待っていてくれるかな?」


「はい。分かりました」


 しょぼんとした声でエレンが頷くと、レオンは修理部屋を後にした。しばらくして、レオンはオルドとライゼンを連れて戻ってきた。


 ライゼンは剣聖としての腕前を持つ凄腕の剣士であり、その実力ゆえに屋敷への出入りを許されるようになった。

 普段は魔物退治を行い、必要とあらば用心棒のような仕事もした。すでにヴァルドリック家にとって必要不可欠な人物となりつつあった。

 レオン視点では、父ギルベルトと母セレナに対しては魔道具修理士と説明しているが二人ともにすべてを知っている。彼が剣聖であること、そして魔道具の知識がほとんどないことを。


 それはさておき、ライゼンとエレンはこれが初対面となる。

 そこはオルドがしっかりと場を整えた。さすがに自分の役割を熟知している。


「この四人は、レオン坊ちゃんの魔道具に関する特殊性を知る仲間です。決して他言しないように。また、魔法使いのエリシア様も仲間に加わる予定です」


「「分かりました」」


 オルドの言葉に、ライゼンとエレンは静かに頷いた。レオンの秘密を他の人間に知られたら大変なことになる。絶対にその秘密は漏らさないと再度心に誓った。

 そしてライゼンとエレンは初対面ということでお互いに自己紹介をした。


「私はライゼンと言います。レオン坊ちゃんに命を救われました。剣には多少の自信があります。レオン坊ちゃんにはこの命を懸けてお仕えする所存です」


「私はエレンと申します。魔道具の研究をしております。私には特別な力はありませんが、レオンを命を懸けてお守りすることに同意いたします」


 二人は簡潔に挨拶を交わした。それを聞いたレオンは、内心で思わず引いていた。


(いったい何なんだ? 命を賭けるとかってなんだよ。何故そんなに大げさなんだ。ライゼンは前からこうだったけどエレンさんまで……どうしてこうなった。この領に来ると何かおかしな力でも働くのか?)


 レオンとしては二人共に重すぎると感じていた、そしてその様子を本当に不思議だと感じながら眺めていた。

 とはいえすぐに実害があるわけではない。いずれ少しずつ修正していこう、と静かに決意した。

 そしてレオンは本題に入った。


「じゃあ、みんなに試してほしいことがあるんだ」


 レオンは照明の魔道具を示し、魔力が通っている魔道回路に触れてもらった。

 まずはオルド。だが反応はない。


「全く分かりません。本当に震えているのですか?」


 そして次にエレン。


「私も全く分かりません。何も感じませんね」


 そして最後にライゼンが触れた。 そして、わずかに目を細めた。


「……ほう」


「確かに、微かに震えておりますな。私には感じます」


 その話を聞いてレオンは自分の推理が正しいのかもしれないと判断した。


「やっぱりライゼンは分かるんだね」


 レオンも同様にその震えを感じ取っていた。そこでレオンは尋ねる。


「みんなの魔力ランクを教えてくれる?」


「私はCランクです」エレンが答える。


「わしはDランクです」オルドが続く。


「私はFランク」ライゼンが静かに言った。


「僕はEランクだよ」


 レオンは小さく頷いた。そしてエレンは、はっとした。ここまできてエレンにもレオンの推測していることが分かったのだ。


「この結果から考えると、魔力が少ない方が魔力の通っている震えを感じ取りやすいのかもしれないね。ただし、まだサンプル数が少ないので予想に過ぎないけどね」


「なるほど……」とオルドが感心したように呟いた。


 ライゼンは腕を組みながら首を傾げた。


「意味はよく分かりませんが、魔力が少ないことにも利点があるのかもしれませんな」


「うん。魔力は多い方が良いって言われているけど、少ないのも役に立つかもしれないよね」


 レオンは穏やかに笑った。その言葉を聞いたエレンは、目から鱗が落ちる思いだった。

 自分はただ落ち込むばかりだった。

 しかしレオンは、その先を見据え即座に動いていたのだ。


(これは才能の差なのでしょうか……? いいえ、違いますね)


 エレンは静かに考えた。

 それは才能の差ではない。探究心の差であり、他者を思いやる心の差なのだろう。

 自分は魔道具の知識だけでなく様々な面でレオンに及ばないと感じた。世間では魔力が少ない者は才能がないと言われている。だがレオンは、それをまったく気にせず、逆にそこに有用性までをも見出してしまった。

 そしてエレンは自分を恥じた。


(私は魔道具の天才と言われ、どこか有頂天になっていたのかもしれませんね。どこかで探求心を失い努力を怠っていたのでは……私は様々な面でレオンの足元にも及ばない。まだまだ未熟です)


 レオンは先に行っているだけでなく探求心も強い。このままでは更に差が付く。本気で心を入れ替える必要があると考えた。

 そして、その大事なことを教えてくれたのはレオンだ。誠心誠意仕えなければいけないだろう。

 そう決意したとき、エレンの胸に芽生えたのは、尊敬を超えた絶対的な忠誠心だった。


 こうして、ライゼン、エリシアに続き――。

 レオンに心酔する、少々危険な人物がまた一人増えた。

 しかもエレンにはそれなりの地位も名声もある。もしかすると、最も厄介なのは彼女かもしれない。

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