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辺境生まれの小さな天才魔道具師( 旧:辺境伯貴族家の息子、魔道具修理で無双し王女をも救う)【書籍化予定】  作者: まめたろう
2-5章「王都からの帰還」

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第108話「見えない断線」

#第108話「見えない断線」


 レオンは修理をエレンに見せるため、一緒に修理部屋へと向かった。

 まだ故障した照明の魔道具がいくつか置かれている。レオンはその中から一つを取り上げ、作業台の上に置いた。


「では、これを直すところを見てもらうね」


「はい。お願いします」


 そうして、レオンは照明の魔道具の魔道回路の部分をエレンに見えるようにして解説を始めた。


「壊れやすいのは、だいたいここなんだ」


 レオンの小さな指がある一点を示した。

 そこは電気回路で言えばコンデンサにあたる部分。だが“コンデンサ”と言ってもこの世界では通じない。そう思ってレオンはその部分の名前は言わず、ただ指し示すに留め説明を再開した。


「ここはね、魔力を一時的に蓄えて、それを一定の割合で供給する部分なんだ」


「魔力を……蓄える? それはどういう意味ですか?」


 エレンの目が大きく見開かれた。まだレオンの言っていることの意味が分からない。原理的にそうだと言われたら頷くしかないのだが、やはり疑問は尽きない。


「うん。光の魔石から来た魔力を、そのまま流すと安定しない。照明の魔道具ならば、明るさが不安定になるんだ。だから、一旦ここで一定量に整えてから流すんだよ」


 エレンの胸が高鳴った。

 なるほど――そう理解すれば、確かに原理としては成り立つ。今まで単なる線の羅列でしかなかったものに意味が加えられ、頭の中で何かが繋がったような気がした。


 そしてエレンは思い出した。

 壊れやすい、と言われたその部分。

 過去に試した修理を思い返せば、確かにその箇所の補修は多かったような気がする。とはいえ、あくまでうろ覚えではあるが。

 そして修理したとは言っても時間がかかったし失敗だらけだった。とても実用的ではない状況。レオンのように短時間で確実な修理ができたわけではない。


「……確かに、私が修理を試した時も、ここを何度か直した覚えはあります」


「でしょ?」


 レオンは嬉しそうに微笑み、慣れた手つきで魔道ペンでインクを補充していく。その作業は無駄がなく、滑らかで、まるで長年の職人のようだった。

 エレンは思わず息を呑んだ。

 幼いはずの少年の手際が、自分よりも遥かに洗練されているのだ。


 この子はいったいどこでこのような知識を蓄えたのか、そしてこの技術はどこで身に付けたのか?

 やっていることは本当にとんでもないことだが、見た目は普通の三歳であり、どうにもアンバランスすぎて理解が追い付かない。

 しかしこうやって実際に説明し、修理しているのだから納得せざるを得ない。

 その後、レオンは修理を終えたあと、魔道回路を指でなぞりながら説明を続けた。


「ここが魔力の通り道。光の魔石から供給された魔力が、ここを通って、一旦ここで整えられて……最後に発光部に流れる。だから、どこかで流れが止まれば、照明は点かないんだよね」


 理屈として聞けばそこまで難しくはない。比較的単純と言えるだろう。でもそれは分かっているからこそ言える話だ。

 その内容をここまで明確に説明できる者はいなかった。過去の文献でもそのような記述は無かったはずだ。


 エレンはその内容に、ただただ感動するばかりだった。

 言われてみればおそらくそうなのだろうと納得できた。間違いないのだろう、と素直に思えた。

 だが……そこで1つの問題があった。


「でもね、これを直しても点かないことがあるんだ」


「え?」


 そう言えばそうだった。エレンはレオンの修理をのぞき見していたのだが、最初の修理だけでは点灯しないこともあった。その後で更に指でなぞって故障個所を見極めていたのだ。

 そして、現実に今回も魔石をセットしても点灯しなかった。

 何故このようなことが起きるのか?そうエレンが考えているとレオンが説明を続けた。


「点かない場合はね、おそらくなんだけど目に見えない微小な断線があるからなんだよ」


「それを確認するためには触ってみれば分かるんだ。魔力が流れているところは、ほんの少しだけ振動しているんだよ。だから、こうやって指でなぞると分かるんだ」


「振動……?」


 レオンは指で内部の回路をゆっくりなぞった。しばらくして、レオンは一点で指を止めた。


「ここ。たぶん、ここが断線してる」


 エレンも同じ場所にそっと触れる。

 だが――。


「……さっぱり分かりません」


 何度なぞっても振動などみじんも感じ取れない。当然のことながら断線箇所が分かるはずもなかった。


「エレンさんは本当に振動しているのが分からないの?」


「はい……振動が全く感じられません。私は駄目ですね」


 エレンは小さく首を振った。もしかしてこれは、レオンだけが持つ特別な才能なのだろうか。そう思うと、胸の奥が少しだけ沈む。

 自分は理論を理解できても、感覚までは追いつけないのかもしれない。これが才能の差というやつか。エレンはそう考えてがっくりと落ち込んだ。

 そんなエレンの表情を見て、なんとかしようとレオンは考え込んだ。


(あれ? そう言えば……)


 エレンさんだけでなくオルドも分からないと言っていたよな。子供だから分かるのか?それとも何か別の理由があるのか?


 レオンは小さく顎に手を当てて考えた。

 そして、一つの可能性に思い至ったのだった。

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