第107話「レオンの知識」
#第107話「レオンの知識」
レオン、オルド、エレンの三人は、レオンの異常性――すなわち魔道具の修理や開発ができることを、ライゼンを含めた四人だけの秘密にすることで同意した。
これでようやく本題に入れる。
エレンは、なんとか質問を振り絞った。
「では、レオン……これまでどのような魔道具を修理してきたのですか?」
「照明の魔道具が一番多いかな。その次は水生成の魔道具とか暖房の魔道具かな」
レオンは平然と答えた。その答えにエレンは驚愕しながらも、なんとか冷静に言葉を続けた。
それでも言葉は震えてしまう。
「……どうやって? レオンが魔道回路の意味を理解しているというのは、本当なのですか?」
「うん。簡単な回路だったら、だいたい分かるよ。もしよかったら、後でエレンさんにも教えてあげるよ」
「分かりました。では後程、ぜひお願いいたします」
レオンが魔道回路の意味について教えてくれる、その言葉を聞いた瞬間、エレンの胸が大きく高鳴った。
冷静を装って答えるが、心の中では天にまで届きそうな勢いで飛び跳ねていた。ルンルン気分でのスキップだ。
そこでオルドが思い出したように言った。
「そう言えば、レオン坊ちゃんは冷蔵庫の魔道具の修理までなさいましたね」
エレンの目が見開かれる。
「……まさか。あの複雑な冷蔵庫の魔道回路でも修理ができるのですか?」
「うん。かなり時間はかかったけどね。確かにあれは苦労したね。一か月くらいかかったかな」
あっさりと答えるレオン。一か月は長いと言えば長い……しかし、それでも異常だ。エレンとしては冷蔵庫の魔道具の修理なんて考えもしない。
エレン自身はそれよりはるかに単純な照明の魔道具さえ満足に直せないのだ。確実に次元が違う話となっている。
そしてオルドは続けた。
「しかも、故障前より性能が向上しておりました。冷却効率が明らかに良くなっていましたので」
「もしかすると、新品状態で既に微妙な不具合があったのかもしれません」
エレンは言葉を失った。修理して新品よりも性能向上?それはもはや修理と言えるのだろうか。意味が分からない。
とにかく凄い。凄すぎる。
涙が込み上げそうになるのを必死にこらえた。
「……それは、ぜひ拝見したいですね。もしまた冷蔵魔道具を修理することがあれば」
「壊れたらね。さすがに簡単には壊れないと思う。というかそう思いたい。あれを修理するのはかなり大変だったからね」
レオンは軽く言った。
エレンは一瞬、「早く壊れないだろうか」と不謹慎なことを考え、慌てて思考を打ち消した。
まずは落ち着けと心の中で叫んだ。
そして話題は次へ移った。もう一つ確認すべきことを忘れていたからだ。
「レオン。私だけでなく、エリシアも仲間に加えた方がよいと思うのですが、いかがでしょう。彼女なら信頼できます。問題なければ私から話しますが?」
レオンとすれば、それは既にオルドから聞いている話だった。エリシアだけのけ者にすると不自然になり、変な形でばれる可能性がある。それならば最初から仲間に入れた方がいいということだった。
エレン自身の口から出たことで、レオンもこれ幸いとばかりに同意した。
「うん。是非、お願いするよ。エリシアさんにも話を通してもらえるとありがたいかな。もちろん秘密厳守ということも伝えてね」
「それはもちろん」とエレン。
「なら、次はエリシアさんとライゼンも含めて五人で話そうか」
こうして秘密の輪は、さらに広がることが決まった。これで基本的な確認は終了だ、とにかく大事なのは秘密厳守。
まずは四人で秘密を共有、そして後にエリシアも含める。
オルドは決めるべきことは決まったと満足げに頷き、その場を離れようとした。だがそのオルドの行動にエレンは内心焦った。
この状況でレオンと二人きりになったら――暴走するかもしれないと思ったのだ。焦って質問攻めにしてしまうかもしれない。最悪、自我を失ってしまうかも。
しかしオルドは、まるでそれを見越したかのように微笑んだ。
「では、あとはお二人で。私は用事がありますので」
そう言って去っていった。止める間もなく。まあオルドとしては荒療治のつもりだ。いつまでもエレンのお守りをしているわけにもいかない。
そこでレオンがエレンに伝えた。
「エレンさん、さっきの話だけど、俺が魔道具を修理してるところ見る? 回路の意味もすぐに分かるところは教えるよ」
「うん、見る!」
先ほどまでのエレンの不安はどこへやら。まるで子供のような即答だった。声も大きい。どうやら緊張は消え失せ今は興奮が勝っているようだ。
そんなエレンの状況にレオンはやはり少し変だなと思いつつも、軽く笑った。
「じゃあ行こっか」
こうして二人は、魔道具修理の部屋へと向かう。エレンの胸は高鳴っていた。これからついに始まるのだ。
新しい魔道回路の世界……レオンの知識に触れる時間が。




