第106話「秘密の共有開始!」
#第106話「秘密の共有開始!」
オルドとレオンは、エレンを秘密の仲間に加えることについて相談していた。
一方でエレンは気が気でなかった。オルドからは問題ないでしょうと言われてはいたが、心配は尽きない。本当に秘密の仲間に入れてもらえるのか、そしてレオンに魔道具の質問ができるのか?
緊張して胸の鼓動が収まらない。早く返事が聞きたいけど少し怖い。
先ほど目にした魔道具修理の光景が頭から離れず、ただ結果を待つことしかできなかった。
そして――。
「エレンさーん!」
レオンの声が廊下に響いた。ようやく連絡が来た。
しかし、すぐに返事をしようとしたが、緊張で声が出ない。足も思うように動かず、もたつきながらも何とか前へ進んだ。やがてレオンの前に辿り着いた。
「エレンさん、相談があるんだ。一緒に来て!」
「……は、はい」
それだけを答えるのが精一杯だった。レオンはそんなエレンを不思議に思いつつも、その手を握り、オルドのもとへと連れていった。
こうしてレオン、オルド、エレンの三人による秘密会議が始まった。
緊張で挙動不審なエレンの様子を見て、オルドはこれは任せてはならないと悟り、自ら仕切ることを決意して語り始めた。
「エレン。あなたに、レオン坊ちゃんに関する秘密を打ち明けたいと思います。秘密は守れますか?」
エレンは何度も首を縦に振った。やはり緊張からか声は出ない。ただ必死に頷く。
その様子を見たレオンは、やや不思議に感じながらも問題はないと確信しオルドの次の言葉を待った。
「実は……レオン坊ちゃんは魔道具の修理ができます。新しい魔道具の開発も可能です。すでに実績は多数あります」
エレンは緊張のあまり上の空で、ただ頷くだけだった。
さすがにこれはまずいとオルドはため息をついた。今のエレンは全然理解してないのではないか?これでは先に進めることができない。
そこでエレンを肘で軽く突いた。
そして小声でエレンに返事を促した。
「……せめて何かお言葉を」
オルドにつつかれた脇腹の痛みによって、エレンはようやく我に返った。そうだ、しっかりと話をしないと駄目だと悟った。
そして深く息を吸い、一呼吸。何とか冷静さを取り戻した。
「レオン様……それは、本当ですか?」
しかしここでレオンは目を丸くした。エレンから様付けで呼ばれたのは初めてだったからだ。今日は様子がおかしいとは思っていたが言葉遣いまで変になっている。
「どうしたの、エレンさん。今日は変だよ。俺に様付けなんて、これまでなかったよね?」
エレンの目が泳いだ。さてどう答えようか?とっさに思いつく言い訳を並べた。
「レオン様は貴族の子息ですから。当然です。これまでの私が間違っておりました」
まあエレンも緊張しているから仕方がないだろう。言い訳が適当すぎるが本人的には必死だ。
レオンは首を傾げた。そしてエレンに強烈なカウンターをしかけた。
「そっか……でも、様付けされるなら秘密の共有は難しいかな」
レオンとしては様付けされるのはどうにも慣れない。そこで軽く冗談で言ったつもりではあったがその言葉にエレンは軽くパニック状態に陥った。そして慌てて早口で応じた。
「あ、分かりました! 貴族の子息ではありますが、まだ子供ですからね。やはり呼び捨てですよね。それにします。レオン……これでいいですか?」
「うん!」
元気よく返事をするレオン。エレンは緊張のあまり、その場しのぎの回答しかできなかったがレオンが満足しているならばいいだろうと安堵。
そしてようやく、エレンは話を始めた。しっかりと本題を進めないといけない。
「魔道具の修理や開発ができるとなると、話は大きいですね。私でもできないレベルの話。世間に知れ渡ったら大変なことになるでしょう。ですから秘密にすることは必須で私も賛成です」
「そして……私とオルドさん、そしてレオンの秘密ということですね。了解しました」
オルドは安堵の息を吐いた。ようやく、おかしな世界に旅立っていたエレンが戻ってきたなと。話を進めることができそうだと思って続けた。
「その通りです。絶対に他言無用です。秘密厳守でお願いします」
「ちなみに、この件はギルベルト様、セレナ様もご存じありません。すなわちレオン坊ちゃんのご両親にも秘密にしております」
「承知しました」とエレンは頷いた。
さらにオルドは言葉を続けた。
「正確には、レオン坊ちゃん、エレン、そして私……それにライゼンを含めた四人の秘密となります。レオン坊ちゃんのご両親には、ライゼンが修理をしたと伝えております」
「それも承知しました」
エレンは落ち着いた声で答えた。既に知っている話ではあったが、改めて確認することに意味がある。
そしてレオンは満足そうに頷いた。
「これで四人の秘密だね。絶対に裏切らないでよ」
「もちろんです」
エレンは力強く答えた。
そして冷静そうには見えるが、心の中では「秘密の仲間に加わることができた。これで心おきなくレオンに魔道具関連の質問ができる!」と跳び上がってガッツポーズをしていた。
そうして三人の秘密会議は更に進んでいった。エレンとしてはレオンに確認したいことが山ほどある。早く質問がしたいとウズウズしていた。




