第101話「戻ってきた日常」
#第101話「戻ってきた日常」
(レオン視点です)
俺たちは王都からヴァルドリック領へ戻ってきた。ただし、行くときとは違ってかなりの帰りは大所帯だった。
孤児院の子供たちおよそ二十人、更にはエレンさん、エリシアさんもいる。これからは賑やかになりそうだね。
とにかく人は増えたけれど、不思議と屋敷はいつもの空気だと感じる。少しここから離れていたけど……やはり一番落ち着くよ。やっぱりここが俺の居場所なんだろうね。
さて、まずはいつもの日課からだ。向こうではできなかった日課を再び開始。それは朝のランニングである。
屋敷を軽く出て、領内の道を軽く走る。冷たい朝の空気が気持ちいい。
すると背後から声がした。
「お供します」
振り向くと、エリシアさんだった。
……うーん。
前から少し思っているのだけど、エリシアさんはちょっと重いんだよね。「お供します」ってまるでお付きの人みたいではないか。
孤児院の子供達を引き取ったことについて恩を感じているのは分かるけど、それは本来ならば俺より父さんに向けるべきでは?と思わなくもない。だって俺がお金を出すわけでもお世話をするわけでもないからね。
だから、俺に対してはもう少しさらっとしてもいいと思うんだけどね。まあでも。朝のランニングが一人より二人の方が楽しいのは事実だ。
そういえば前世でも朝のランニングはしていたよな。
その理由を……久し振りに走ることで再び思い出したよ。それは綺麗なお姉さんがたくさん走っていたからだ。
揺れるお姉さんたちの体を合法的に視界に入れられるボーナスタイムだったのである。
(注:そんなことはありません。場合によっては普通に捕まります。良い子は真似しないように。あなたの視線は女性に完全にバレています)
とは言え、ボッチだった俺は女性と併走したことなどない。
エリシアさんのような綺麗なお姉さんと一緒に走れるなんて、まるでリア充ではないのか?
とも思ったのだが……こちらでは俺は子供。これでは全く釣り合わない。早く大きくなって、カップルで走る本当のリア充にもなりたいものである。
などと煩悩を浮かべながら走っていたのだが……。
本気で釣り合わないことが分かった。
俺は必死で走っているはずだ。なのにエリシアさんは――隣でほぼ歩いているだけだ。歩幅が違いすぎる。
しかも軽く歩くだけということもあってかなりの余裕の表情だ。ぜいぜい言っている俺とは全く違う。これではエリシアさんはランニングではなくただの散歩ではないか。
これは本当にカップルリア充どころではない。完全に大人と子供だ。まあ実際にその通りなんだが。
くっ……なんだか悔しい。
でも負けない。だって、朝のランニングは良いことだらけなのだ。少なからず体は鍛えられるし、朝ごはんは美味しくなるし、いろいろと健康的なのだ。そして将来的には自称剣聖のライゼンに剣も教えてもらえるだろう。
まあ現時点では朝ごはんがおいしくなるのが一番大きい。
そう思っていたらエリシアさんが語り掛けてきた。
「レオン様は毎朝こうして走っているのですか?」
「うん、そうだよ」
「……凄いですね」
褒められて、ちょっとびっくりした。でもまあ悪くない。俺は褒められて伸びるタイプなのだ。これはかなり嬉しいかも。
軽く話しながらランニングを終え屋敷に戻ると、今度はエレンさんが出てきた。
「あれ? 二人で何してたの?」
「朝のランニングだよ」
そう答えると、なぜか少し残念そうな顔をする。どうやらエレンさんは朝が弱いらしい。
「走るなんて無理だよ……体力ないし……」
「でも朝ごはん美味しくなるよ? それにエリシアさんを見てたけど、走るっていうより散歩だよ?」
「……じゃあ、いつかはやろうかな」
はい出ました。その意味はよく分かります。
“いつかやる”。
それはつまり、やらないという意思表示である。まあそれでいいよ、確実に損していると思うけどね。
その後は皆で朝食へ。やはり朝食が本当においしい。朝のランニングは最強である。
その朝食中に話があったけど、父さんによると、子供たちは当面二つの大部屋に分かれて寝泊まりすることになるらしい。まるで合宿だ。孤児院と同じような感じでもあるし、それでいいんじゃないかな?
そして、将来的には新しい施設を建てる案も出ているとか。
二十人はさすがに大所帯。小さな子供のうちはいいけど大きくなった時のことも考えないとね。
まあ、その辺りの難しい話はよく分からないし、父さんにお任せでいいだろう。
さて。
朝食後は久しぶりの……魔道具修理をしよう。やっぱり今の俺にとっては、これが一番の楽しみだ。そして点かなくなったとされる照明の魔道具を机に置いた。
目視で配線の切れている部分を確認し、魔道ペンで丁寧に補修していく。
そして魔石をセット。これで点くはずだが……。
「あれっ? 点かない」
うん、でもこれはあるあるなんだ。次は指で配線をなぞる。魔力が通っている部分は、ほんの僅かに震えているのだよね。
震えが止まるところ。そこが怪しい。見た目は切れていなくても、微妙に切れているのだろう。そこを魔道ペンで補強して……再度、魔石をセット。
ぱっと灯りが点いた。
「よし」
ああ、この瞬間。
修理が成功した時の快感がたまらない。最高だ。やっぱりこれだよね。日常が戻ってきた感じがする。
そうしていくつかの修理を終えて部屋を出ると早くも昼前だ。そしてエレンさんに会ったのだけど……何故かそわそわしている。
何か言いたそうだ。上を向いたり、近づいてきたり、離れたり。なんとも落ち着きがない。何か言いたそうにしている。
どうしたんだろう?
と思っていると――
「レオン坊ちゃん、少しよろしいでしょうか。相談があります」
「うん、何?」
オルドに呼ばれた。何やら相談があるらしい。エレンさんも気になるがそれは後回しにしよう。そうして俺はオルドの方へ向かった。
さて、相談とは何の話だろうか。
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補足)3章スタートです!2章まで読んでくれた皆様には感謝です。毎日投稿をできる限り続けますので、今後とも宜しくお願いします。




