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獣人族最後の生き残りですが、同族が全員食べ過ぎで滅びました  作者: 雪だるま


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 ザルハディア王国は、強くなり過ぎていた。


 それはもはや周辺国家がどうこう出来る段階ではない。


 軍事。

 財政。

 交易。

 資源。


 全てが異常だった。


 しかも最悪なのは、その異常さを支えているのが“世界最強の怪物レイ”という、国家規模の抑止力だったことである。


 結果。


 国内の王侯貴族たちは、徐々に勘違いし始めていた。


「ザルハディアに逆らえる国などない」


「多少強引でも問題あるまい」


「結局、皆こちらへ頭を下げるしかないのだ」


 そして。


 案の定やらかした。


 東方交易都市連盟。


 ザルハディアにとって重要な香辛料中継地帯であるその地域で、ある若い貴族が盛大に問題を起こした。


 酒宴。


 現地貴族との揉め事。


 侮辱。


 暴力。


 そして。


 現地有力者の娘へ手を出した。


 しかも最悪なことに、その後こう言ったのである。


『どうせお前たちに逆らう力などないだろう?』


 終わりだった。


 東方交易都市は激怒した。


 商人ギルドは抗議。


 現地王侯は軍備増強。


 さらに敵対国家まで動き始める。


『ついにザルハディアが本性を現した』


『世界最強を盾にした恫喝国家』


『砂漠の暴君国家』


 各国で噂が広がり始めていた。


 そして現在。


 白亜宮殿、大謁見室。


 空気は凍っていた。


 玉座の上で、女王サフィールが微笑んでいる。


 それが逆に怖かった。


「……つまり」


 静かな声。


「私の名前を勝手に使って、好き放題した挙句、国際問題になったと」


「も、申し訳ございません陛下……」


 問題を起こした若い貴族は、顔面蒼白で跪いていた。


 周囲の大臣たちも誰一人助けようとしない。


 なぜなら。


 今の女王。


 完全にブチギレている。


 サフィールはゆっくり頬杖をついた。


「ねぇ」


「は、はい……」


「誰が調子に乗っていいと言ったの?」


 貴族は震えた。


「そ、その……我が国の威光を――」


「黙りなさい」


 一言で空気が死ぬ。


 サフィールは昔からそうだった。


 自分が好き勝手するのはいい。


 だが。


 他人が自分の権威を勝手に利用して暴れることは許さない。


 しかも今回の件は最悪だった。


 ザルハディアは今、各国から異常な警戒を受けている。


 理由はもちろんレイ。


 世界最強の怪物。


 各国は既に半分本気で恐れている。


 だからこそ。


 “ザルハディア側が調子に乗っている”という印象は危険だった。


 周辺国家を無駄に結束させる。


 商業連盟まで敵に回す可能性がある。


 つまり。


 面倒。


 非常に。


 サフィールは冷たい目で貴族を見下ろした。


「私が何故、今まで表向きは礼節を保っていたと思ってるの?」


「…………」


「力がある国ほど、外面を整える必要があるからよ」


 それは事実だった。


 ザルハディアは強い。


 強過ぎる。


 だからこそ、余計な刺激を与えないよう女王は細かく外交を調整していた。


 属国には恩を見せ。


 友好国には利益を与え。


 敵対国には“まだ理性的だ”と思わせる。


 だが。


 今回。


 全部ぶち壊しかけた。


 しかも理由が低俗。


 女遊び。


 酒。


 権威の乱用。


 最悪である。


 サフィールは微笑んだ。


 その笑顔を見た瞬間、周囲の貴族たちは内心で死を確信した。


「……本当に馬鹿」


 その時だった。


 大広間の扉が開く。


「のだっ♡」


 空気が少し変わる。


 レイだった。


 巨大な肉串を持ったまま入ってくる。


 しかも完全に上機嫌である。


「陛下ぁ♡」


 だが。


 数秒後。


「のだぁ?」


 空気がおかしいことに気づいた。


 女王を見る。


 笑っている。


 でも怖い。


 レイは一瞬で耳を伏せた。


「……怒ってるのだぁ?」


「ええ」


 即答。


 レイはそっと距離を取った。


 本能で理解している。


 今近づくと危険。


 一方、問題を起こした貴族は必死だった。


「れ、レイ様!!」


 その瞬間。


 空気がさらに冷えた。


 サフィールの視線が刺さる。


 貴族は青ざめた。


 レイは困った顔で貴族を見る。


「のだぁ?」


「お、お助けを……」


 数秒沈黙。


 レイはちょっと考えた。


 そして。


「陛下が怒ってるなら、お主が悪いのだぁ」


 即終了。


 貴族、絶望。


 サフィールは少しだけ笑った。


「珍しく賢いじゃない」


「のだっ♡」


 褒められたと思って嬉しそうである。


 だが。


 女王の怒りは消えていなかった。


 彼女は静かに立ち上がる。


 玉座の間全体へ冷気みたいな威圧感が広がった。


「外交使節へ謝罪文を送る」


「はっ」


「賠償も出す」


「はっ」


「あと、東方商人連盟へ追加利権を譲渡」


「……それほどまでに?」


「当然でしょう」


 サフィールは冷たく言い放った。


「今のザルハディアは、“調子に乗った瞬間に世界が結束する側”なのよ」


 誰も反論できなかった。


 実際その通りだからだ。


 世界最強を抱えた超富裕国家。


 だからこそ。


 少しでも暴走国家に見えれば危険。


 サフィールは理解している。


 恐怖だけでは支配は長続きしない。


 だからこそ。


 自分以外の馬鹿が勝手に権威を振り回すのを許せなかった。


 一方。


 レイはその横で肉を食べながらぼんやりしていた。


「のだぁ……大変なのだぁ」


 完全に他人事だった。


 だが。


 サフィールはそんなレイをちらりと見て、少しだけため息を吐く。


 この怪物がいる限り。


 自分は一生、“強過ぎる国家”の後始末をし続けるのだろう。


 その事実だけは、嫌というほど理解していた。

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