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獣人族最後の生き残りですが、同族が全員食べ過ぎで滅びました  作者: 雪だるま


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 ザルハディア王国の王都アズ・ラハムには、ここ数日で異様な数の外国使節団が到着していた。


 属国の王。

 小国家の大公。

 砂漠商業都市の支配者。

 さらには半独立状態だった辺境部族長まで、次々と王都へ集まっている。


 理由は一つ。


 ユニコーン。


 それだけだった。


「本当にいるのか……」


「神話の存在だぞ……」


「しかも女王陛下の宮殿に……」


 彼らは皆、半信半疑のまま王都へ来た。


 だが。


 実際に白亜宮殿の中庭でユニコーンを見た瞬間、全員沈黙した。


『…………』


 純白の毛並み。

 長く伸びた角。

 神聖さすら感じさせる存在感。


 間違いなく本物。


 しかも。


 その横ではレイが肉を食べていた。


「のだっ♡」


 完全に日常風景である。


 属国の王たちは頭を抱えたくなった。


 神話級幻獣と世界最強の怪物が、女王の庭で飼われている。


 もう国家規模の悪夢だった。


 だが同時に。


 彼らはすぐに理解していた。


 これは巨大な“権威”になる。


 非常に。


 神話。

 神獣。

 神聖。


 人間はこういうものに弱い。


 特に民衆は。


 だからこそ、各属国の王たちは焦っていた。


「何としてでも利用せねば……」


 南部属国ハジャール王は、真顔でそう呟いた。


 五十代。

 太った男。

 極めて現実的な支配者だった。


 彼は理解している。


 今この瞬間、大陸中の民衆はザルハディアを“神に祝福された国”として見始めている。


 ならば。


 属国側もそこへ乗るしかない。


 切り捨てられないために。


「陛下」


 側近が小声で囁く。


「献上品の準備は」


「抜かるな」


「はっ」


「あと、ユニコーンを背景に余の肖像画を描かせろ」


「……許可が下りればですが」


「下ろさせるのだ」


 必死だった。


 一方。


 別の属国王も似たようなことを考えていた。


「ザルハディアとの友好をさらに強化する」


「軍事協定も必要かと」


「当然だ」


「民衆向けには“神獣の祝福を受けた同盟”として宣伝します」


「良い」


 もう半分宗教である。


 実際、王たちは気づいていた。


 今後、“ユニコーンを見たことがある”というだけで権威になる。


 ましてや。


 女王サフィールと近しい関係を築ければ、その権威を自国へ持ち帰れる。


 だから皆、必死だった。


 その頃。


 王宮大広間。


 女王サフィールは玉座へ座り、属国王たちを眺めていた。


「……ふぅん」


 内心では少し面白がっている。


 目の前の連中。


 全員、目がギラギラしている。


 権威。

 神話。

 政治利用。


 考えていることが非常に分かりやすい。


 そして。


 彼らがそこまで必死になる理由も理解していた。


 権力者は“物語”を欲しがる。


 特に、民衆を納得させるための物語を。


 神に祝福された。

 神獣が現れた。

 聖なる同盟。


 そういうものは雑に効く。


 非常に。


 だからこそ、今この場にいる属国王たちは、全員必死でザルハディアへ擦り寄っていた。


 その時だった。


「のだっ♡」


 場違いな声。


 レイだった。


 大広間へ肉串を持ったまま入ってくる。


 しかも。


 当然のようにユニコーンもついてきた。


『…………』


 ユニコーンは疲れ切っていた。


 最近ずっとレイに付きまとわれている。


 逃げると追いつかれる。


 怖い。


 なので最近は諦め始めていた。


 だが。


 属国王たちはそんなこと知らない。


 一斉に立ち上がる。


「おぉ……!」


「神獣だ……」


「本当に従っている……」


 完全に勘違いしていた。


 レイは何も考えていない。


「のだぁ?」


 肉を食べながら首を傾げている。


 だが。


 その横を歩くユニコーン。


 銀髪の獣人。


 そして玉座の女王。


 絵面が強過ぎた。


 神話画そのものだった。


 属国王たちは本能的に理解した。


 逆らってはいけない。


 絶対に。


 その時、サフィールがゆっくり口を開いた。


「楽しんでる?」


「はっ、もちろんです陛下」


「素晴らしい神獣ですな」


「まさに奇跡……」


 皆、必死に媚びる。


 サフィールは小さく笑った。


 そして。


 隣へ来たレイの頬へ軽く触れる。


「ちゃんと挨拶は?」


「のだっ♡」


 レイは超笑顔で属国王たちを見た。


「こんにちはなのだっ♡」


 その瞬間。


 数人の王が本気で青ざめた。


 なぜなら。


 世界最強の怪物が、自分たちを“友好的に見ている”ことが分かったからだ。


 逆に怖い。


 もし敵認定されたら終わる。


 山ごと消える。


 属国王たちは理解した。


 この国の本当の恐ろしさは軍事力ではない。


 女王サフィールが、この怪物を完全に自分側へ置いていることだ。


 だから。


 彼らはさらに深く頭を下げた。


「今後とも、我が国をよろしくお願いいたします」


 その姿を見ながら。


 レイ本人だけが、何も分かっていなかった。


「のだっ♡」


 ただ女王の隣で嬉しそうに肉を食べていたのである。

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