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ザルハディア王国は繁栄していた。
異常なほど。
市場は金で溢れ。
港は交易船で埋まり。
税収は毎月記録更新。
王都アズ・ラハムでは、今日も巨大な香辛料市場が賑わっている。
「東方産の絹だ!!」
「神代鉱石だぞ!!」
「火山竜の牙入荷!!」
しかも安い。
意味不明なほど。
理由。
レイ。
世界最強の怪物。
あれが全部採ってくるからである。
さらに。
最近は周辺国家まで気づき始めていた。
「……あの国、おかしい」
「財宝が増え続けてるぞ」
「軍事力も異常だ」
「しかも世界最強生物がいる」
結果。
外交使節が爆増した。
属国。
友好国。
中立国家。
敵対国家。
全部来る。
もはや収拾がつかない。
一方その頃。
「のだぁああああああああん!!!」
王宮では世界最強が床で転がりながら泣いていた。
「陛下ぁあああああ!!許してなのだぁあああ!!」
うるさい。
非常に。
しかもでかい。
泣き声だけで窓が震える。
原因。
女王サフィールに寝室出禁を食らった。
理由。
美女にデレデレしたから。
なお。
国家規模で見れば極めてどうでもいい話である。
だが。
当人たちは大真面目だった。
「のだぁあああ!!吾輩、死ぬのだぁああ!!」
「死なないわよ」
女王は書類を読みながら冷たく返した。
「寝れないのだぁ!!」
「廊下で寝れば?」
「嫌なのだぁ!!」
「知らないわよ」
現在。
サフィールは普通に政務中だった。
その横でレイが泣いている。
地獄である。
一方。
官僚たちはさらに地獄だった。
「つ、次の使節団です!!」
「東部連合王国!!」
「その次は北海帝国!!」
「さらに西方共和国!!」
「敵国の使者も来ております!!」
「あと属国から婚姻申請が二十三件!!」
「レイ様への貢物リストも!!」
「うるさいわねぇ……」
サフィールは軽くこめかみを押さえた。
しかし。
実際問題。
外交状況が異常だった。
なにせ。
世界最強の怪物を抱えた超富裕国家。
各国が放置するわけがない。
友好国は媚びる。
敵国は探る。
属国は恐れる。
そして最近では。
「レイ様に我が国の姫を……」
「こちらの王女をぜひ……」
「いえ、我が国こそ……」
縁談まで殺到していた。
原因。
レイ。
世界最強。
しかも単純。
美女好き。
権力欲薄い。
つまり。
政治利用しやすそうに見える。
なお。
実際に利用しようとすると。
「のだっ♡」
って笑いながら山を吹き飛ばす。
意味不明である。
官僚たちは死にそうだった。
「外貨流入量が多過ぎる……」
「金価格が狂ってる……」
「レイ様が持ち帰った神代金属で市場が崩壊寸前だぞ!!」
「誰か止めろぉ!!」
「無理だ!!」
さらに。
最近の女王。
粛清頻度高め。
つまり。
官僚たちは二重の恐怖に晒されていた。
ミスすると女王に処刑される。
しかし仕事量も異常。
結果。
「……うっ」
ばたん。
「財務官殿ぉおおお!!」
本当に過労で倒れた。
しかも。
その横で。
「のだぁあああ!!」
レイが泣いてる。
官僚たちは思った。
(なんで俺たちだけ真面目に働いてるんだ……?)
王国のトップ層。
現状。
女王。
性格最悪。
レイ。
アホ。
終わっている。
なのに国だけは繁栄する。
理不尽だった。
その頃。
敵対国家の使節団は震えていた。
「……本当にいるのか?」
「世界最強の怪物が……」
「噂では竜を素手で……」
案内役の兵士は遠い目をした。
「ええ、いますよ」
「どこに?」
「そこです」
「え?」
中庭。
レイ。
「のだぁああああ!!」
床を転がって泣いていた。
「陛下ぁあああ!!入れてなのだぁあああ!!」
使節団、沈黙。
「…………」
「…………」
「……あれが?」
「ええ」
「世界最強?」
「ええ」
その瞬間。
レイが泣きながら地面を叩いた。
ドゴォォォォォォン!!!
石畳が吹き飛ぶ。
城壁にヒビ。
遠くの塔まで揺れる。
使節団全員青ざめた。
「ひっ……」
兵士は慣れた顔だった。
「だから刺激しない方がいいですよ」
レイは本気で落ち込んでいた。
「のだぁ……吾輩、捨てられたのだぁ……」
大型犬である。
しかも世界最強。
最悪だった。
一方。
女王サフィール。
実はちょっと機嫌が良かった。
理由。
レイがめちゃくちゃ慌てているから。
独占欲が満たされる。
なので。
まだ許さない。
「反省した?」
「したのだぁ!!」
「美女見る?」
「見ないのだぁ!!」
「本当に?」
「陛下だけなのだぁ!!」
即答。
ちょろい。
官僚たちは死んだ目でその光景を見ていた。
外交。
財務。
軍事。
交易。
全部限界。
なのに。
国家最高戦力は女王にフラれて泣いてる。
財務長官代理が呟いた。
「……もう終わりだこの国」
しかし。
その日の国家税収は過去最高を更新した。
意味が分からなかった。




