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獣人族最後の生き残りですが、同族が全員食べ過ぎで滅びました  作者: 雪だるま


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10

 王宮は静まり返っていた。


 重苦しい。


 非常に重苦しい。


 廊下を歩く侍女たちは顔を青くし、兵士たちは無言で視線を逸らしている。


 理由。


 女王サフィールが激怒していた。


 しかも。


 かなり本気で。


「……殺す」


 玉座の間。


 女王は笑顔だった。


 逆に怖い。


 周囲の大臣たちは完全に硬直していた。


 原因。


 レイ。


 世界最強の怪物。


 そして現在。


 王宮の隅でガタガタ震えている。


「のだぁあああああ……」


 尻尾ぺたん。


 耳もしおれている。


 完全に怯えていた。


 数日前。


 臣下たちは気づき始めていた。


 女王サフィールは危険だ。


 昔から危険だったが、最近さらに危険である。


 気に入らない。


 それだけで処刑。


 有能過ぎる。


 それだけで毒殺。


 忠臣ですら安心できない。


 しかも最近、国家財政が異常に豊かなので、女王の浪費や粛清を誰も止められない。


 なにせ。


 金が無限に増える。


 レイがいるから。


 つまり。


 問題の根本。


 世界最強の怪物を女王が独占していることだった。


 なら。


 どうする?


 簡単である。


 レイを味方に引き込めばいい。


 そして臣下たちは理解していた。


 レイの攻略法。


 非常に簡単。


 肉。


 昼寝。


 そして。


 美女。


 特に美女。


 レイは美女に弱かった。


 恐ろしく弱かった。


「のだぁ……♡」


 綺麗な女を見るだけで目がハートになる。


 しかも隠さない。


 分かりやすい。


 だから。


 臣下たちはやった。


 めちゃくちゃやった。


 舞姫。


 踊り子。


 西方美人。


 北方貴族令嬢。


 黒髪美女。


 金髪美女。


 褐色美女。


 大量投入。


 しかも。


「これはレイ様への献上品です」


「のだっ♡」


「我らは常にレイ様の味方にございます」


「のだっ♡」


 ちょろかった。


 レイ。


 超笑顔。


 大臣たちは確信した。


(いける!!)


(この怪物を味方に出来れば!!)


 だが。


 問題があった。


 女王サフィール。


 この女。


 権力欲が強い。


 非常に強い。


 そして。


 独占欲も強かった。


 レイが美女たちに囲まれている光景を見た瞬間。


「…………」


 空気が凍った。


 王宮全体が。


 侍女たちは震えた。


「ま、まずい……」


「陛下が……」


「目が笑ってない……」


 レイは気づいていなかった。


「のだっ♡」


 美女たちに囲まれて超ご機嫌。


 最低だった。


 しかも。


「のだぁ♡綺麗なのだぁ♡」


 普通にデレデレしていた。


 女王のこめかみに青筋が浮かぶ。


 さらに。


 臣下の一人が調子に乗った。


「レイ様のような英雄には、女が何人いても足りませぬな!」


「のだっ♡」


「いずれは王配として――」


 ドゴォォォォォン!!!


 柱が吹き飛んだ。


 全員凍りつく。


 女王だった。


 笑顔。


 超笑顔。


「……誰が?」


 臣下たちは即土下座した。


「も、申し訳ありません陛下!!」


 だが。


 サフィールはレイを見ていた。


 じぃぃぃぃっと。


 蛇みたいな目で。


 レイはやっと気づいた。


「のだぁ?」


 数秒後。


「…………」


 女王、無言で立ち去る。


 その晩。


 レイは女王の私室へ向かった。


 いつものように。


「のだっ♡陛下ぁ♡」


 だが。


 扉の前。


 侍女が真っ青な顔で言った。


「……レイ様」


「のだぁ?」


「陛下より命令です」


「のだっ♡」


「“もう寝台へ入るな”とのことです」


 沈黙。


 レイ、停止。


「…………え?」


 数秒後。


「のだぁあああああ!?!?!?」


 絶叫。


 王宮全域へ響いた。


「嫌なのだぁああああ!!」


 レイ、泣き始める。


「吾輩、何したのだぁあああ!!」


 侍女たちは視線を逸らした。


 お前である。


 原因。


 完全に。


 レイは扉をガンガン叩いた。


「陛下ぁあああ!!開けるのだぁああ!!」


 中から冷たい声。


「嫌」


「のだぁあああ!!」


「美女いっぱいで楽しかったでしょう?」


「のだぁ!?!?!」


 レイ、青ざめる。


 やっと理解した。


「ち、違うのだぁ!!」


「へぇ」


「吾輩、陛下が一番なのだぁ!!」


「そう」


「本当なのだぁ!!」


「ふぅん」


 全然信じてない声だった。


 レイは完全にパニックになった。


 なにせ。


 女王の寝台禁止。


 レイにとっては超重大案件である。


 肉禁止より辛い。


 世界最強の怪物、涙目。


「のだぁああああ!!嫌なのだぁ!!」


 王宮中に響く悲鳴。


 兵士たちは震えていた。


「……レイ様、終わったな」


「陛下、怖ぇ……」


 一方。


 臣下たちはもっと青ざめていた。


 やばい。


 女王が本気で怒ってる。


 しかも。


 レイ。


 普通に女王へ泣きついている。


 つまり。


 自分たち側へ引き込めていない。


 むしろ逆効果。


 最悪だった。


 その頃。


 扉の向こう。


 サフィールは寝台へ座っていた。


「…………」


 実は。


 少し面白かった。


 レイがここまで慌てるの。


 世界最強。


 なのに。


 自分に追い出されるだけで半泣き。


 サフィールは少し笑いそうになった。


 だが。


 まだ許さない。


「反省しなさい」


「のだぁあああ!!」


「あと美女禁止」


「のだぁ!?」


「返事は?」


「のだぁ……」


 しおしおである。


 完全敗北。


 その時。


 レイが小さく呟いた。


「……でも陛下が一番綺麗なのだぁ」


 沈黙。


 サフィール、数秒止まる。


 そして。


 少しだけ頬を緩めた。

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