104.多分
「…………ギィ……ギィ……」
【ははっ、あの鳥、切り札であった呪詛も、まるで効果がなく、いよいよやることがなくなって、心なしか少しへこんでないか?】
(「そ、そうかな……。そうだといいんだけど……」)
(壁が呪詛に効果があるのかどうか、結果的には良い方向に転んだけれど……これはいわゆる結果論だよ……。これ以上、新たな切り札を出されて肝を冷やされるのは勘弁してほしい……)
(「なんというか……魄術の可能性に頼った戦い方はなんとか改善していきたい所存……」)
【…………ほーん】
界は反省しきりであったが、周りの目は違っていた。
「呪詛が消滅した……? 呪詛に対抗するには解呪の道を究めた術者でないと難しいと言われているのに、こうもあっさりと……?」
その光景を始めて目の当たりにしたヨハンは驚きすぎて目が巨大化していた。
「白神のじいじさん……、これが白神家の歴史上、最大の才能というわけですね……」
「…………た、多分……」
「へ……? 多分?」
じいじから帰ってきた返事は、少々、歯切れの悪いものであった。
「こ、これは…………白神家どころの話なのか……?」
じいじはぼそぼとと語りだす。
それはもやは孫が褒められて嬉しいといった反応ではなく、軽く引いていた。
「あのグリム・アスシュナーベルの呪詛に対して、龍門レベルの霊魔と全く同じ結果だと……? これはもはや-1000などという話ではなく、×0とか、そういう領域の話なのか……?」
「うねぇ……」
それを聞き、近くにいた龍門は少し悲しげな鳴き声をあげる。
「あ、すまん……。…………!」
じいじは咄嗟に、龍門への配慮不足に対し、謝罪の意を口にする。
しかし、ふと我に帰ったように、それ自体の奇妙さに疑問を持つ。
いやいや、なぜ俺は今、霊魔に謝っているんだ?
冷静に考えて、霊魔に謝るって、どういう状況なんじゃ……?
多くの異常事態に接した上で、じいじは一つの感想に辿り着く。
我が孫ながら、本当に意味が分からない。
(「なぁ、ドウマ……、あいつって封魔されてたわけだし、やっぱり封魔した方がいいのかな?」)
実の祖父に若干、引かれているとも知らない界は、頭の中の鬼神に、素朴な相談をしていた。
【ん……? まぁ、確かに封魔しないとしばらくしたら復活するしな……。した方がいいかと言われればそれはそうだが……封魔をすると総魔力が減る……、って……、田介にその心配は不要か……忌々しい……】
(いや、少しは心配してくれよ……)
などと思いつつ、
(「それじゃあ、封魔……挑戦してみるか……」)
界はグリム・アスシュナーベルを封魔することにする。




