103.同じ
「ギッッッ……!」
界から預かり、熊燐が展開していた壁。
その壁に激しく衝突したグリム・アスシュナーベルは悶えながらも、なんとか身体を起こす。
【ふむ、この鳥、そこそこ根性はあるようだな……】
と、
「ギィイ……ギィイイ……」
グリム・アスシュナーベルはぶるぶると小刻みに震え出す。
「界……! 気をつけろ!」
リーゼの治療中であったじいじが叫ぶ。
「え……?」
(って、この展開、前にもあったような……)
グリム・アスシュナーベルからどす黒い靄が噴出する。
(…………これはやっぱり)
「Jesses!(なんてこった) あれは呪詛じゃないか……!」
ヨハンが頭を抱える。
(やっぱりそれか……)
呪詛。
それは霊魔が最後の足掻きとして行うことがある強力な呪いである。
「くっ……、ここまで来て……、最後にこれなのか……」
ヨハンは唇を噛みしめる。
これまでの自身らの頑張り。
そして界という希望の光の救援により、グリム・アスシュナーベルを追い詰めた。
その結末が、〝道連れ〟である。
呪詛の厄介なところは魂による攻撃である点だ。
つまり実体がなく、通常の攻撃では防ぐことができない。
過去に、龍門と対峙した時にも同じことがあったのだ。
しかし、その時は、
「ヨハンくん、絶望するのはまだ早いぞ……」
「え……?」
「さっき言っただろ? 界の壁は〝物理的な攻撃以外も防ぐ〟と」
「ま、まさか……」
「あぁ、過去に一度、界はあの壁で呪詛を防いだ」
「な……!? 呪詛を……?」
そう。その時は、界の光の壁が呪詛にも効果を発揮することが判明し、危機を回避したのだ。
「なら……!」
ヨハンの瞳にも希望が宿る。
「だが、これもさっき言った。〝全てを検証したわけではない〟と」
「……!」
「根本的に界は実戦経験が少なすぎるのだ……。いや、あの年にしては、あり得ないくらいの強敵と対峙し、それを跳ねのけている。それでも歳月というものを覆すことは不可能じゃ。そして相手はあのヴィルヘルム・ヴィンターシュタインの最大の功績といわれるグリム・アスシュナーベル。そやつの呪詛となれば、桁違いに強力……。果たしてそれを防ぐことができるのか……」
じいじは自分の考えを言語化するかのように呟きながら、心中で、一つの決意を固めるのであった。
もしもの時は……。
【呪詛を使う霊魔なんてそう多くもないんだがなぁ……! ついてないなー。田介よぉ。はっはっは!】
(「笑ってる場合じゃないやろがい!」)
【いやいや、そうなんだがな……。しかし、まぁ、呪詛を使うってことは……根性は認めてやるよ……】
(「……」)
ドウマがそんなことを言っている間にも、グリム・アスシュナーベルの呪詛は界へと向かってくる。
界がやることは最初から決まってきた。
(「……魄術」)
場が静まり返る。
ただ、グリム・アスシュナーベルの呪詛は壁に接触するや否や、蒸発するように消滅していく。
「「「……」」」
「…………ギィ……」
結論、全く効かず。
【って、全く同じかいっ!!】




