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(ラブコメ)侯爵令嬢は王国一の美少女なのに、何かするたびに物も人も大惨事!〜侍女の私、もう胃が持ちません〜  作者: 積と和〝


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第2話 お茶会は戦場です

「ナターシャ、緊張しているの?」


「していません」


「顔が引きつっているわ」


「気のせいです」


本日、私はお嬢様に“たまたま近くにいる侍女”として同行しています。


——王都でも有数の名家が集まるお茶会に。


(無理です帰りたい)

ですが帰れません。


なぜなら。

「ナターシャ、あの方にご挨拶したいのだけれど」


「どの方ですか?」


「ええと……あの、ピンク色の方」


「ドレスの色ですか人ですか」


「多分人よ」


「曖昧すぎます」

この方を一人にすると確実に何かが起きるからです。


「ではご案内しますので、ゆっくり——」


「きゃっ」

言い終わる前に転びました。


「まだ歩いていませんよね!?」


「気持ちが先に」


「体はついてきてください」

私はすぐに周囲を確認します。


よし、まだ誰も見ていない——


「おや、大丈夫ですか?」

見られていました。


声の主は、落ち着いた雰囲気の青年でした。


「問題ありません、お嬢様はよく転ばれますので」


「フォローになっていないわナターシャ」


「事実です」


青年は一瞬だけ沈黙し、次に小さく笑いました。

「正直な侍女だ」


「取り繕っても追いつきませんので」


「それもそうだ」


……この人、まともです。

(貴重……!)


「私はアーヴィンと申します」


「ラファーム侯爵家のマリアーナですわ」


「専属侍女のナターシャでございます」


自然な流れで自己紹介が終わりました。

素晴らしい。ここまでは完璧です。


(このまま何事もなく——)


「素敵なカップですね」

お嬢様がテーブルのカップに手を伸ばしました。


嫌な予感しかしません。


「お嬢様、それは——」


カタン。


——倒れました。

まだ触れていません。


「……今、触っていませんでしたよね?」


「ええ」


「どうして倒れたんでしょう」


「不思議ね」


「不思議で済ませてはいけません(二回目)」


周囲の視線が集まります。

まずいです。


「申し訳ございません、すぐに——」


「待って」

そう言ったのはアーヴィン様でした。


彼はさりげなくカップを起こし、テーブルクロスを整えます。


「少し手が当たっただけだろう。問題ない」


「ですが」


「大事にする方が目立つ」

小声でそう言われ、私は口を閉じました。


(できる……この人、できる……!)


その間にもお嬢様は。

「ナターシャ、このお菓子とても美味しそう」


「はい、ですので落とさないように——」


 ポロ。


「どうしてですか」


「まだ持ったばかりよ?」


「知っています」


私は素早く皿を差し替え、何事もなかったかのように微笑みます。

もう慣れました。


いや慣れたくはありませんが。


「……大変だな」

ぽつりと、アーヴィン様が呟きました。


「ええ、とても」


「逃げたいと思うことは?」


「一日三回ほど」


「多いな」


「ですが」

私はお嬢様を見ます。


楽しそうに笑っているその姿を。


「——放っておけませんので」


アーヴィン様は少しだけ目を見開いて、そして。


「いい侍女だ」


「現実的なだけです」


その時でした。


「マリアーナ様、ぜひ今度舞踏会で——」

別の令息が声をかけてきました。


来ました。本来の目的です。


(ここで失敗させるわけにはいかない……!)


「ええ、ぜひ——」


お嬢様が一歩踏み出し、

絨毯のない場所でつまずきました。


「何もないですよね!?」


「ええ」


「どうして!?」


私は即座に支えに入り、転倒を阻止します。

完璧です。今回は守りました。


——ですが。

その拍子に。


バシャ。

近くのティーポットが倒れました。


見事に、先ほどの令息の服へ。


「……あ」

沈黙。


そして。


「……申し訳ございません」

私は深々と頭を下げました。


終わりました。

社交界デビュー、終了です。


ですが

「いや、気にしないでほしい」

令息は苦笑いを浮かべます。


周囲も、どこか困ったような空気で。


(……あれ?)


そこへ

「——賑やかで結構」

アーヴィン様が一歩前に出ました。


「退屈なお茶会より、よほど記憶に残る」


「は、はあ……?」


「ラファーム侯爵家らしい、ということだ」

さらりと言い切りました。


空気が変わります。

笑いが、少しだけ生まれました。

(この人……空気まで操作した!?)


「ナターシャ」


「はい」


「後で礼を言わせてくれ」


「いえ、助けられたのはこちらです」


「違う」

彼は小さく笑って。


「君の働きは、ちゃんと見ている」


「……っ」

一瞬、言葉に詰まりました。


 ——その隙に。


「ナターシャ」


「はい!?」


「ケーキが落ちたわ」


「見ればわかります!!」


現実は容赦ありませんでした。

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