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動物病院日誌   作者: じょんどぅ


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雷・花火パニック再び、あるいは最強の防音室

雷・花火パニック再び、あるいは最強の防音室


### 1. 狂騒の夜、消えた愛犬

八月の終盤。京都の夜空を大輪の花火が彩る頃、当院の電話は再び悲鳴を上げます。

「先生! 花火の音に驚いて、ラブラドールの『テツ』が庭の柵を飛び越えて逃げてしまったんです! 必死で追いかけたけれど、暗闇で見失ってしまって……」


テツ君の飼い主さんは泣きながら訴えました。花火や雷の音にパニックを起こした犬は、普段では考えられない身体能力を発揮し、文字通り「死に物狂い」で逃走します。


### 2. 「音」への恐怖が引き起こす二次被害

春の雷の時(第210話)にも触れましたが、夏のパニックはさらに深刻です。

* **脱走と交通事故:** パニック状態の犬は周囲が見えません。全力疾走で道路に飛び出し、車に撥ねられる事故が多発します。

* **自傷行為:** 閉め切った部屋でパニックになり、ガラス窓を突き破ったり、ケージを噛みすぎて歯を折ったり、爪を剥がしたりすることもあります。




### 3. お家で作る「最強の防音避難所」

「また大きな音が鳴る予報がある時は、お家の中に『シェルター』を作ってあげてください」


1. **お風呂場やクローゼット:** 窓がなく、壁が厚い場所は音と光が遮断されます。そこにお気に入りの毛布や、飼い主さんの匂いがついた服を敷いてあげましょう。

2. **カーテンを閉め、厚手のバスタオルを:** 窓からの光の点滅(稲光や花火)も恐怖を煽ります。遮光カーテンを閉め、ケージの上から厚手のバスタオルをかけるだけで、かなりの防音・防光効果があります。

3. **ホワイトノイズの活用:** 静かすぎると外の音が際立ちます。テレビをつけたり、換気扇を回したりして、低く一定のホワイトノイズを流すと、衝撃音が紛れやすくなります。




### 4. 迷子札という名の「命綱」

「テツ君、見つかりました!」

翌朝、少し離れた場所で震えていたテツ君を保護した方から連絡がありました。

「首輪にしっかり連絡先が書いてあったおかげで、すぐに連絡できました。もし何もつけていなかったら、再会は難しかったかもしれません」


「山崎さん、迷子札は『お守り』ではなく『命綱』です。特にパニック体質の子には、マイクロチップとの併用が必須ですよ」


### 5. 嵐のあとの安堵

「先生、お疲れ様です。……パニック後の子たち、みんな放心状態ですよね」

河野が、保護されたテツ君の傷の手当てをしながら言った。


「そうだね。彼らにとってあの音は、世界が終わるような恐怖なんだろう。僕たちができるのは、その恐怖を物理的に遮断して、『ここは安全だよ』と体で伝えてあげることだけなんだ」


窓の外では、夕立のあとの虹がうっすらと架かっていました。

祭りの音や夏の雷鳴。それが終われば、もうすぐ秋の足音が聞こえてきます。それまであと少し、彼らの小さな心を守り抜くのが僕たちの仕事です。


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