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動物病院日誌   作者: じょんどぅ


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夏バテ?それとも病気?、あるいは静かなる警告

夏バテ?それとも病気?、あるいは静かなる警告


### 1. 理由のある「食欲不振」

八月の後半。連日の猛暑で、人間も動物も体力を削られる時期です。

「先生、うちの『さくら』、最近やっぱり夏バテみたいで。大好きな缶詰も半分くらい残すし、ずっと寝てばかりなんです。もう12歳ですし、この暑さじゃ仕方ないですよね……」


柴犬のさくらちゃんを連れた木村さんは、「トシと暑さのせい」と自分に言い聞かせるように話しました。しかし、診察台に上がったさくらちゃんの呼吸は、冷房の効いた室内にしては少し速く、粘膜の色も心なしか白っぽく見えました。


### 2. 「夏バテ」という名の隠れ蓑

「木村さん、高齢の子にとって『夏バテ』という言葉は、非常に危険な隠れかくれみのになることがあります」




実は、暑さによるストレスが引き金となって、水面下で進んでいた病気が一気に表面化することが多いのです。

* **心臓病(僧帽弁閉鎖不全症など):** 暑さで心拍数が上がると、弱った心臓に過度な負担がかかり、肺に水が溜まる「肺水腫」を引き起こす一歩手前になることがあります。

* **貧血・腫瘍:** 脾臓や肝臓の腫瘍から微細な出血がある場合、暑さで血管が拡張すると、血圧を維持できず急激にぐったりします。

* **腎不全:** 軽い脱水が引き金となり、慢性腎不全が悪化。尿毒症による吐き気で食欲が落ちているのを、夏バテと勘違いするケースが後を絶ちません。


### 3. 「夏バテ」と「病気」を見分けるチェックリスト

「単なる暑さのせいか、病気か。お家でこの $3$ つを確認してください」


1. **呼吸の数:** 寝ている時の呼吸が1分間に $30$ 回を超えていませんか?(心臓・肺のサイン)

2. **粘膜の色:** 歯茎をめくってみてください。ピンク色ではなく、白っぽかったり、逆にどす黒かったりしませんか?(循環・貧血のサイン)

3. **飲水量と尿量:** 暑いからと水をたくさん飲むのは普通ですが、それ以上に「薄いおしっこ」が大量に出ていませんか?(腎臓・代謝のサイン)




### 4. 検査で見えた「本当の姿」

さくらちゃんの血液検査とレントゲンを行った結果、やはり心臓が肥大し、肺に少し影が出ていました。夏バテではなく、心不全の初期症状だったのです。

「木村さん、今日から心臓のお薬を始めましょう。暑さのせいにして様子を見ていたら、数日後の熱帯夜に呼吸困難を起こしていたかもしれません」


### 5. 晩夏の夕暮れ

「先生、お疲れ様です。……さくらちゃん、お薬を飲んでから、また少しずつご飯を食べるようになったみたいですよ」

河野が、検査結果を整理しながら安堵の表情で言った。


「良かった。飼い主さんが『暑さのせい』だと思いたい気持ちも分かるけど、僕たちはその裏にある『本当の声』を拾い上げなきゃいけない。夏こそ、一番慎重にならなきゃいけない季節なんだよね」


窓の外では、少しだけ日の暮れる時間が早くなってきました。

でも、地面の熱はまだ引いていません。

「ただの夏バテ」という言葉を疑うこと。それが、高齢の家族と一緒に秋を迎えるための、僕たちからの切実なアドバイスです。


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