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動物病院日誌   作者: じょんどぅ


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ノミ・マダニ、春の進撃、あるいは静かなる侵略者

ノミ・マダニ、春の進撃、あるいは静かなる侵略者


### 1. 散歩道の「お土産」

六月の声が聞こえ始め、京都の山々は深い緑に覆われます。柴犬の「ゴン太」君と飼い主の佐藤さんが、散歩帰りに慌てて飛び込んできました。

「先生! ゴン太の目の上に、見たこともない大きなイボみたいなものがついてるんです! 朝はなかったはずなのに、どんどん膨らんでいる気がして……」


ゴン太君の右目の上を見ると、そこには血を吸ってパンパンに膨らんだ、小豆大の**マダニ**がしっかりと食いついていました。


### 2. 無理に引き剥がしてはいけない理由

「佐藤さん、落ち着いてください。絶対に指で引き抜こうとしないでくださいね」




マダニは「セメント物質」を出して、自分の口を動物の皮膚にガッチリと固定します。無理に引っ張ると、**頭部だけが皮膚の中に残り**、そこから化膿したり、激しい炎症を起こしたりすることがあります。


さらに恐ろしいのは、彼らが媒介する病気です。

* **SFTS(重症熱性血小板減少症候群):** マダニが媒介するウイルス性疾患で、人間にも感染し、最悪の場合は死に至ります。

* **バベシア症:** 犬の赤血球を破壊し、深刻な貧血を引き起こす寄生虫病です。


### 3. ノミ:一匹いたら「百匹」いると思え

一方、ノミもまたこの湿気と温度を待ちわびていました。




「先生、うちの子は家から出ないから大丈夫ですよね?」という猫の飼い主さんも要注意です。

* **人間が運ぶ:** 私たちのズボンの裾や靴にくっついて、ノミは玄関を突破します。

* **驚異の繁殖力:** 一匹のメスは一日に数十個の卵を産みます。部屋のカーペットや畳の隙間は、彼らにとって最高の保育園になります。


### 4. 現代の盾:オールインワン予防薬

「昔は首筋に垂らすタイプが主流でしたが、今はもっと進歩しています」


1. **食べるタイプ(おやつ型):** 犬にはこれが一番人気です。一回の服用でフィラリア、ノミ、マダニ、さらにはお腹の虫までまとめて一ヶ月ブロックできる「オールインワン」が主流です。

2. **速効性と持続性:** 最近の薬は、ノミなら数時間、マダニでも半日以内に駆除します。吸血されても病気をうつされる前に倒す、それが現代の予防です。




### 5. 守ることは、愛すること

「……そんなに怖い病気があるなんて知りませんでした。ゴン太だけじゃなく、私たち家族のためにも、しっかり予防しなきゃいけないんですね」

佐藤さんは、専用の器具で安全にマダニを取り除いてもらったゴン太君を見て、深く頷きました。


「先生、お疲れ様です。……マダニ、今年も立派なのが来始めましたね」

河野が、摘出したマダニをアルコール瓶に入れながら言った。


「そうだね。草むらは彼らの『狩り場』だ。でも、しっかりバリアを張っていれば、動物たちは自由に自然を楽しめる。僕たちの仕事は、その自由を守ることでもあるんだよ」


診察室の外では、梅雨入りを告げる紫陽花が色づき始めています。

湿り気を帯びた風に乗って、小さな侵略者たちが手ぐすね引いて待っています。でも、今の僕たちには、彼らを寄せ付けない確かな「盾」があるのです。


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