第二王子とキスの話。
兄さんから奪うね…?
とは…どういうこと…?
ルル様から発された言葉を反芻する暇もなく。
不意に腕を引かれたと思ったら腰に腕を回され、顎を支えられ…柔らかいものが唇に触れる。
「ッ、何を…っ!」
「何って…キス、だよ。ベニカは初めて?」
まるで無垢な少女の様に。
ハニカんだ笑顔を浮かべる。
ルル様の言葉に…皇太子妃候補として過ごした私にそんな経験なんてあるはずが無くて、恥ずかしさで顔が熱くなる。
「真っ赤になるベニカは可愛いね。でも大丈夫。君が初めてなのは知っているよ。ただ確認したかっただけだから。」
「君に兄さんが少しでも触れていたなら…どうしようか、と思っていただけだから。」
その含みのある言い方はなんだろう…
少し、怖い。
「ベニカ。」
「ふ、んっ!」
「…君の唇は甘いね。さぁ、行こうか。」
「や、ちょ…ッ!ルル様…!こんな…恥ずかしい…!下ろしてくださいまし…!」
「まぁまぁ、暴れないで。本当に落ちちゃうからね。僕は落としたくないけど、君が暴れていたら落ちてしまうかもしれないよ?」
1度ならず2度までも。
いくら王子と言えど、婚約者でも恋人でもないルル様に唇を奪われる。
だけでなく、あろう事かルル様は私を徐ろに横抱きにして歩き始めた。
「ルル様…何をお考えですか…?」
「さぁ…何だろうね?」
ルル様の足は止まることなく。
私なぞ居ないかのように軽やかな足取りで渡り廊下を歩く。
すれ違う侍女や文官や騎士…
皆が不思議な顔をして私とルル様を見比べる。
いや、不思議な顔してないで助けなさいよ!
あなた達の第二王子様がご乱心よ!
ーーー「アンドリュー。人払いをしておけ。」
とある場所についたルル様は、振り返ることなく後ろ側に声を掛ける。
「ーー承りました。」
私とルル様から10歩ほど離れてついてきていたらしい男性は、ルル様の言葉に扉を開けて、綺麗な所作でお辞儀をすると去っていった。
「さぁ、ベニカ。ようこそ、僕の城へ。」
ルル様に抱かれたまま、恐らくはルル様の部屋へと入る。
そしてそのまま…降ろされたのは真っ白で柔らかなベッドの上。
「あ、あの、ルル様…?ここは…」
「うん、僕の部屋だよ。」
「何故…私はここに…?」
私の言葉に綺麗な笑みを浮かべて、私の手を握る。
握った私の手を持ち上げると…手のひらにキスを落とす。
「言ったでしょ?兄さんから奪うって。」
「ねぇ、ベニカ。これから僕は…君に酷いことをするよ。」




