閉幕の黒い布
リグーリア率いる兵団は、砂鉄塵による武器破壊をし尽くされ、打つ手無く二の足を踏んでいた。
かろうじて防水を施された飛行セグウェイ、ファーオールだけは、砂鉄塵が入り込む隙間がなかった為破壊されずに済んでいる。
ただ、浮いて上空から戦況を指をくわえて見ている団体様状態だった。
そんな中、地に倒れるリュード、サルファー、イオリ、ヨースケは、皆とても戦える状態ではない。
ユーキが跳び、ミシェルがその肩を蹴って人型ナベシマの懐に飛び込んだ。
人型の動きはそう素早いわけではなく、十分にミシェルが対応出来る程度だった。
「小癪な小娘め!」
腕を変形させ爪状にすると人型はミシェルの首を狙って振りかぶった。
その爪は宙を掻き、ミシェルは腕を取って地面めがけて叩きつけた。
「ぐへぁあああ!!」
苦悶に顔を歪める人型ナベシマ。
そこを狙ったかのように砂鉄塵が人型を襲う。
「どちらも自分なのに、共闘するわけじゃないんだね」
更にそこに魔神型からのレールガンが放たれた。
ミシェルの頬をかすめ、真っ青な顔になったミシェルの頬には、一筋の線が出来ていた。
「あっづ!!」
「ミシェル!」
ユーキは木の幹を蹴って上空で待機する兵団のファーの機底を蹴って更に空中移動を続けた。
空を飛べるわけではないが、飛行しているといってもいいくらい見事に空を翔ると、砂鉄塵の真ん中に跳び込む。
そしてゆるやかな動きで宙を掴むと、何かを握りしめた。
その真下にいた魔神型の首に着地すると、首にスルリと手を滑り込ませ、やはり何かを握りつぶす。
砂鉄塵はザラザラと小さな小山となり、魔神型ナベシマは完全に機能停止して倒れ込んだ。
最後に残った人型が後ろに下がる。
「ば、ばかな……。お前、何をした?」
「ば、ばかな。お前、何をした?」
ゆっくり歩いて人型の元まで歩くユーキ。
ナベシマの言葉を感情のこもらない声でほぼ同時にオウム返しした。
「今まで読み取れなかった情報も、色々読めるようになった。これから起きることも予測というより予言に近いくらい正確にわかる。もう一人の俺が最後の力を使って俺の頭脳に干渉し、意図的にそうしたんだ」
「ソフィアと俺の父の仇。もう一人の俺の友イーロンを始めとした、たくさんの人々の命を奪い去った独裁者。お前はこれから、死ねない身体に再生を繰り返されながら、何度も何度も痛みと苦しみを与えられながら封印されるんだ。俺の父はかろうじて生きていたが、人の痛みを理解できる人間になれてよかったな」
冷たく言い放つユーキ。
「あらゆる断片情報から答えを導く……ラプラスの悪魔か! わしは意識体! この身体を捨て去れば何の感覚も味わわんわ!」
「無理だ。お前はコピーだ。意識体は今、砂鉄塵と共に消し去った。ほら、残滓がここにあるじゃないか」
ユーキは宙を指すが、何もない。
何かをつまむようにして、更に潰すようなしぐさをした。
「お前は動けない」
「お前のいいなりになるか!」
気丈に言い返すが、ナベシマは全く動く気配がない。
「イメージの力で形が変わるその体は、お前の墓場だ」
ナベシマまで10センチという至近距離まで歩いて近づいたユーキは、ゆっくりその胸部に手を差し込んだ。
どろりと溶けた人型は、30センチ四方ほどの箱状に変形した。
その各面は格子状になっていて、その中では小さな人型のナベシマが2人。一方から腕を切り落とされては悲鳴を上げ、すぐに再生してはもう一方の首を刎ねる。互いに殺し合う滑稽な人形劇のような状態になっていた。
「見苦しいから閉幕だな」
そう言ってユーキは黒い布をかぶせた。




