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20、ダンジョンへ

20、ダンジョンへ



俺と智樹はその重厚な扉を開けた。


何故莉奈が死の国に連れて行かれなくてはいかなかったのか……疑問しか残らない。


取り戻しに行くには、このダンジョンを攻略しなければならない。


この……………………趣味の悪い地下迷宮を!!


扉を開くとそこは変わらずの砂漠で……


は?扉の意味は?室内?室外?どっちだ?


辺りを見回すと、派手な色の動物やら何やらわけのわからんもので溢れていた。その中に、一際目立つ人の顔のついた塔があった。それは、太陽の塔を彷彿とさせる塔だ。しかし、それにしては塔の顔がだらしなく、かなり岡本太郎を冒涜している。


空には下手くそな鳥が飛んでいた。三本足のアヒル?その絵をみてどこか懐かしくなった。


「アヒルが足三本はおかしいやろ?」

「あれ、一本は羽だよきっと。下手くそだな~」

「さっさと先に進むで?このままここにおったら地獄や」


今のところ砂漠に塔以外何も無い。


「地獄?」

「エンドレス突っ込み地獄になりそうや」


とりあえず塔まで歩いてみると、上へ上る階段と、地下へ続く階段があった。


「智樹、どっちへ行く?」

「高い所は嫌いだから下」

「じゃあ、まずは下へ行ってみるか!」


そう言って地下へ向かう階段を降りているはずなのに…………気がつくと、下には俺達の最初にいた砂漠が見えた。


「どうゆう事なんだろ?」

「下に進めば進むほど上に上がってるって事なんちゃう?」

「だったら上を選べば良かったよ~」


どんどん小さくなる地上を眺めながら階段を降りて行くと、目の前にまた扉が出て来た。


それは、砂漠の中に現れた重厚な扉と同じだった。


が…………しかし、ドアから手が生えていた。


「気持ち悪っ!」

「もしかして……これ、ドアノブ?」


ドアの取っ手が…………ごっつい節のデブの手になっていた。


「うわぁ……このドアノブ手汗かいてるよ~!僕、これ触りたくないなぁ……」

「智樹、ワガママはアカンで?これも貴重な経験や。大人への第一歩や!」

「こんなので大人になりたくないよ~!」


俺達はその汗ばむドアノブを押し付け合った。


「暖かいその手の温もりを感じたらええやん!な?このふくよかな手に握手してドア開けてみ?」

「やだよ!ラルが握手してよ!ほら、ハンカチ貸してあげるから」


ジャンケンで負けた俺は仕方なく、智樹のハンカチを挟んでその手をそっと握り、右にひねった。


うわぁ……握手会とかのアイドルはこんな気分なんだろうか?


そんな事を考えながらその手を握手しながら扉を押した。


扉の中へ進むと…………


そこはステージのような所で、客席に塔についていただらしない顔が無数に埋め尽くされていた。


「気持ち悪っ!」

「ラル、僕達の服、変わってるよ?」


な、なんじゃこりゃあ!ギャー!ズボンがヒラヒラミニスカートに!見えてまうやろ!


何故か俺のズボンと智樹の服がキラキラヒラヒラのスカートになっていた。まるで一昔前のアイドル衣装のようだ。


「何で僕だけ上も……」

「さっきからやけに光が強くて暑いな」

「声もうるさくて耳が痛いよ~!」


すると、どこからともなく、アナウンスが聞こえて来た。


「それでは歌っていただきましょう!新ユニット、トモキ&エメラルド、ニューシングル『アイドルの苦労がわかってたまるか』です。どうぞ!」


問答無用でイントロが流れ始めた。


「無理だよ!僕、歌って踊れない小学生だよ!」

「いや、これは無茶振りやろ!しかも何や?そのタイトル!」


歌えずにいると、ブーイングの嵐が起こった。


ここはもしや……そうだ!


ここのエリアを作ったのは絶対にコハだ。白河 琥珀。頭はいいがどこかおかしい、天才肌のパリピだ。キャラクターデザインや音楽など、演出担当だった。


コハ……どうしてここだけこんなにも雑なんだ?


確かあの空の三本足のアヒルもよく雑紙の後ろに描いていたっけ。


いや、待て?これはコハじゃない!!あのアヒルを描いていたのは…………ダイヤだ!住吉 大也は顔がいいのにセンスが悪い残念なイケメンだった。


服のセンスも悪いのに、その顔の良さで全てアリになってしまう。センスの悪ささえも魅力とされてしまう反則級のイケメンだった。


まぁ、それがわかった所で現状が変わるわけではない。俺達は次々と出て来る扉を開けまくった。


ノミだらけの犬が飼い主にその痒さをわかってもらえないという地獄、出しても出しても帰って来るゴミ袋地獄、腹痛にかけ込んだトイレに紙が無い地獄。


どれも地味で、意味不明でストレスがたまった。


「いい加減にしろーーーー!!」

「迷宮ってさ、こうゆうんじゃなくて、落とし穴とか」


智樹がそう言った瞬間、地面が抜け落ちた。


「うわぁーーーーー!!」


あっという間に地下に落ちた。


「こうゆう所ってさ、巨大な石の玉に追いかけられたりするもんじゃない?」


智樹がそう言った瞬間、嫌な音が聞こえてきた。


「智樹、その振りはアカン……」


石の転がる音と共に、すぐに巨大な石が襲って来た。


「ギャーーーーー!」


俺達はしばらく石の玉に追いかけられた。あからさまに追って来る。


「なんやこれ!完全に遠隔操作やん」

「こうゆうの、普通走って逃げるものじゃなくて、トロッコとかに乗ったりするんじゃないの?」

「だから、智樹、その振りいらんて!」


智樹の言った通り、すぐに目の前にトロッコが現れた。もはや智樹の要求通りだ。ある意味誘いトラップか?


「あれ乗ろうよ!」

「智樹ノリノリやな~!」


俺達がトロッコに乗り込むと、すぐに動き出した。トロッコは洞窟の中を走り続けた。


「次は何かな~?危機一髪で蔦とかに掴まってゴールとか?」

「そんなおかわりいらんて!」


すると、やはり洞窟を抜けた所にレールの終わりが見えて来た。そして、目の前には乗り移れと言わんばかりの蔦がぶら下がって来た。


「せーので行くよ!ラル!」

「わかった!行くで?せーの!」


蔦をつたい無事に降り立った場所は、一面雪景色だった。


そこは、光輝く美しい銀色の世界。


「ラル!あれ!見てよ!氷の城!」

「いや、あれ、城言うても天守閣やん!」

「忍者とかいるかな~?楽しみだね~♪」


どうやら、やっとグラキアスに辿り着いたようだ。


「まだや……グラキアスはまだ死の国と違う。まだまだこれからや」


プルスの城で莉奈と別れた時に約束した。必ず取り戻しに行くと。


「智樹!」


グラキアスの城を目指して歩いていると、聞き覚えのある声が聞こえて来た。城の前で待っていたのは、上半身アルパカで下半身が馬のアルパウスのアメジストと、プールスの姫ペンギンのクリスタルだった。


「みんな!無事で何よりだよ!」

「智樹様、そちらは?」

「ああ、これはラルだよ」


2匹は俺をジロジロと見ると、何やら警戒していた。


「智樹、知らない人について歩いてはいけない」

「知ってる人だよ。だって、ラルはいつだって莉奈の側にいたいんだ。僕、すぐにラルだってわかったよ!」

「な、何言うてんねん!そんなわけないやろ?」


智樹は莉奈と離れ落ち込む俺を元気づけてくれた。


今まで離れる事は何度かあった。でも、今回は違う。何故か不安でたまらない。早く……早く莉奈を取り戻しに行かなければ……


「それはそうと、先を急ぐで!」


離れて初めて…………莉奈への思いの強さを知った。


そして、生まれて初めて、自分の強い想いを知った。自分にここまでの想いがあるとは思わなかった。


今まで自分には、強い想いというのが無かった。強い望みというものが無かった。ただ1つ、あったのは……『茜から逃れたい』それだけだった。その想いだけでこの世界を作った。


この世界を作る時に抱いた想いは……誰かを幸せにしたいとか喜ばせたいとか、そういう想いは無かった。


「ラル~!こっちにかき氷屋さんがあるよ~?」


今は違う。智樹や莉奈と出会って、今は誰かのために、誰かを幸せにしたいと思えた。



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