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21、グラキアス

21、グラキアス



くだらないダンジョンを抜けると、消えたはずの国、グラキアスに辿り着いた。


智樹の予想では、あそこで『ゴール』や『到着』そう声に出して言う事によって、自らがゴールを作り出す仕組みではないかと言っていた。


どうしても辿り着きたいという意思表示が必要だったらしい。


何はともあれ、色々あって何か大事なものを失った気もするが……結果オーライだ。


全員で城に入ろうとすると、アメジストとクリスタルは動物お断りという事で外で待たされる事になった。


「これは差別ね!」

「いいえ、動物虐待よ!」


2匹はかなり腹を立てていたが、智樹の一言でイチコロだった。


「まあまあ、終わったらみんなでかき氷屋さんに行こうね!」


俺達はアルパウスとペンギンに見送られ、その氷でてきた城……天守閣に入ると……そこには超絶イケメンの王……


…………イケ……メン……?


王座には、あの塔についていた『だらしない顔』があった。


「あ!塔の人だ!」


智樹はまるでバカ殿のような格好のダイヤを指差した。ダイヤは鼻をほじりながら、アホ面で座布団の上でだらけていた。


え?これが……ダイヤ?嘘だろ?超絶のイケメンじゃなかったっけ?これじゃただの……アホ面……


「おや?誰かと思えば、懐かしい魂が訪ねて来たねぇ」

「俺が誰だかわかるんか?さすがやな」

「醜い魂が矛盾を抱えてやって来たのぉ」


醜い魂……?こいつ、俺の魂の姿が見えるのか?


「それより、死の国へ行くにはどうしたらええ?」

「は?そんなの簡単じゃ!死ねばいい」

「いや、それ以外で。ようわからんが突然ツレが連れて行かれてもうて……」


俺の話を聞くと、だらけていたダイヤは体を起こし、座布団を直して座り直した。


「連れて行かれたとな?それは、莉奈とかいう小娘か?」

「そうや!お前、莉奈が連れて行かれた理由を知っとるんか?」

「それは……」


ダイヤが落とした目線の先には、悪趣味な柄の着物と座布団があった。それが余計に俺をイラつかせた。俺はダイヤの胸ぐらを掴んで言った。


「知っとる事、全部話しいや?」

「そう焦るでない」

「そうだよ、ラル、落ち着いて」


智樹に止められて、俺はその手を離した。すると、ダイヤは着物を直して言った。


「お前、変わったのう……」


そりゃそうだ。今まで人を脅してまで話を聞いた事なんて1度もない。そこまでして話を聞きたいと思う事なんか1つも無かった。


「お前の中の芯が少し光るようになったのう」

「芯?そんな事どうでもええわ!死の国に……」

「わかったわかった!少し落ち着ついて話を聞け」


ダイヤは城の南にある不死の山の洞窟が死の国に繋がっていると説明した。


城の南に山なんかあったか?とにかく行ってみるしかないか……


「ちと待て。そっちの小僧は置いて行った方がいいぞ?」

「どうして?僕も行くよ!」

「雪山は危険じゃ。それに……」


ダイヤは智樹に言った。行くなら殺される覚悟で行けと。


「いよいよこの時が来るとはな……」

「この時?」

「『purus aqua』を手にする可能性のある者が現れたのじゃ」


それは…………悠希の事か?


「ひとたびその方法が世界中に知れ渡れば、この世界は終わる……」

「世界が終わる!?そんなの困るよ!僕、ずっとここにいたいんだ」

「世界中がその魂を争い、奪い合い殺し合う」


ダイヤの言葉にゾッとした。


今はまだ1万の魂が必要と言う事を数えるほどしか知らない。それがこの世界の全体に広まったら?


「そんなら……尚更悠希を止めなアカンやろ!」

「それは難しいぞ?あやつは死の国で器を指定する所まで来た」

「器を……指定?器って何や?皿か?壺か?」


ダイヤは少しため息をついて言った。


「あの小娘じゃ」

「莉奈…………?莉奈は人間やろ?そんなんあり得んやろ?」

「魂の器じゃ。人間にしかできぬ」


1万の魂が対価として差し出せば、魂の器の指定ができる。それが……莉奈が死の国に呼ばれた理由?


それは、何がなんでも悠希を止めなければいけない。場合によってはその命を奪ってでも…………


「今までに『purus aqua』をめぐる争いは何度もあった。その度に新しい水が開発され、多くの罪の無い者達が命を落とした」


そのせいでグラキアスは消え、死の国の行き来も制限されるようになった。ダイヤはそう言って自国の現状を嘆いていた。


「しかし、それを阻止せねばと思っていても、我らに課せられた仕事は全うせねばならぬ。この国に辿り着いた者を死の国へ通さぬ訳にはいかんのじゃ。それが……我らの存在意義なのだから」


要するにシステム的問題だと軽く言われた。


「本当に……人間の業の深さには言葉を失う。どの世界でも、人間は愚かな生き物という事じゃな」


すると、智樹は言った。


「この世界は夢の中だと思ってた。全部嘘で茶番なんだと思ってたんだ。ごっこ遊びと同じだよ。城があって王がいて、動物が喋って、魔法が使えて……だから、誰がどれだけ死んでも構わないと思ってた。どうせ生き返るし」


しかし、この世界は生き返らない。世界中の『透明な水』のせいで、生き返れないようになってしまった。おとぎの世界から、たちまち命の重い現実に近い世界になってしまった。


「そう思う者も一定数いるであろうが、そう思う者は『purus aqua』を求めたりはしないのじゃ」


この世界を必要としている者は甦りの水など必要無い。ここまで苦労して手に入れても、使う機会も使う理由も無いからだ。


確かに……求めるのは、現世に未練がある者だけだ。悠希はどちらの世界かは知れないが『purus aqua』を手に入れ、甦らせたい存在がいる。


『ヒスイ』という想い人だ。


「よいかエメラルド、1度魂の器に指定された者を救い出すのは容易ではないぞ?見た所、悠希という冒険者はかなりのレベルじゃ」

「わかっとる!悠希と戦って……勝てるかどうかは正直わからん。属性は有利だが、お互いレベルMAXや。最終的にはアイテム数や装備の違いやけど……それは到底敵わん」

「お前にいいものをやろう」


ダイヤはそう言って俺の胸に手を置いた。


何をするつもりだ?


すると、俺の胸が内側から光を放った。


「ほう……お前は十分愛されておるな。大丈夫じゃ。お前は強い。与えられた愛と強い想いがあれば、お前は負けぬ。お前の持っている力を信じろ」

「なんやそれ?精神論かいな」

「お前はすぐそうやって醜い魂になる」


俺はその顔を見て言った。


「そのアホ面に言われた無いわ」

「心の芯が光輝く美しさなら、外見などどうでも良い。その美しさが見えた者にだけ、真の顔が見えるのだから」


そう言ったダイヤの顔は、一瞬、住吉 大也の顔に見えた。


こうして俺達は城を後にし、雪山を登り始めた。


「ごめんね。莉奈が危ないんだ。かき氷はまた延期にしてね」

「智樹と一緒にいられれば厳しい雪山だって構わないわ」

「そうよ。私には懐かしいくらいだわ」


そう言ってアルパウスとペンギンが先を歩き、雪を避け道を作ってくれて有難い。だいぶ歩き易い。


「困りましたねぇ。みかんが見っかんない」

「少しも寒く無いわ~♪」


緊張感は全く無いが、それが何だか落ち着いた。焦る気持ちが緊張を呼び、無口になりがちだった。


「ラル、大丈夫。きっとうまく行くよ!」


智樹…………


智樹の笑顔に、俄然やる気が沸いた。


洞窟から出て来た、莉奈と悠希を見るまでは…………



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