表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第30章 賢竜咆哮
807/1458

第7話 ドラゴン解体―前―

 全身に雷を纏うと一気に跳躍する。

 目的地はシルビアが捉えた気配のある場所。俺には分からないが、何かがいると思われる場所にはマーキングが行われている。


 数秒で辿り着く。

 そこには、何かあるようには見えない。

 それでも何かが気配がする。


 何かは接近する俺を見て動揺している。さらに逃げ出そうとしているみたいだけど、既に手遅れだ。


 逃げ出そうとしたソイツを殴る。

 すると、ブワァと風が吹き荒れる。


「ようやくお出ましか」


 風の中心にいたのは緑のドラゴン。

 体に風を纏うことで音や光、気配といったものまで弾き飛ばしてしまう特殊なスキルを使用して身を隠していた。

 だが、殴られたことで風の鎧も剥がされている。


 全身から電撃を迸らせる。

 威嚇の為だ。

 それは、緑のドラゴンにも分かっている。


 自分では絶対に勝てない。

 目の前にいる相手との力の差を理解し、生まれてから感じる数少ない恐怖に身を竦ませると全力で翼を動かして飛翔する。

 とにかく、この場を離脱しなければならない。


「……違うだろ」


 背を向けたドラゴンの頭を掴む。

 逃がすつもりなど最初からない。


「【落雷(フォールサンダー)】」


 空から雷が落ちてくる。

 ドラゴンの体を痺れさせてプスプスと煙を上げている。

 普通の魔物なら黒焦げになっていてもおかしくない威力の雷を放ったのだが無事だった。


 そのまま再び飛び去ろうとするものの弱々しい動きしか見せられない。


「さて、1体は街の人たちを安心させる為に見せしめとして殺す必要があったけど、2体目のドラゴンは殺す必要がないんだよな」


 ビクッと緑のドラゴンが反応する。

 俺の言葉を理解できるだけの知能があり、やり方次第では生きられる、と思った。


 だが、その方法は最強種の魔物としては酷く屈辱的なものだった。


「【迷宮操作:鎖】」


 弱ったドラゴンの四肢に亜空間から飛び出してきた鎖が巻き付く。

 逃れようとドラゴンが足掻くが、脱出することは叶わない。


「せっかくだ。お前には色々と聞きたいことがある。俺の支配下に降るなら命だけは助けてやる」



 ☆ ☆ ☆



 街へ戻ると歓声を以て迎え入れられる。

 突如として襲い掛かってきた赤いドラゴンを討伐たうえ、隠れていた緑のドラゴンまで退けてしまった。


 一種の熱気に包まれていた。

 彼らの歓迎は有り難いが、先に済ませておかなければならない話がある。


「これの買い取りをお願いします」


 冒険者ギルドまでドラゴンを運ぶ。

 いくら大通りに面している冒険者ギルドでもドラゴンをそのまま運ぶには道が狭すぎるので簡単に解体を済ませてある。


 腕だけ、足だけ、頭だけ等になったドラゴンの死体が無造作に置かれる。


「凄まじいですね」


 受付嬢が置かれたドラゴンの死体を見上げながら呟いた。

 他にも買い取りの為にいる鑑定の職員や解体専門の職員も唖然としている。


「そうですか?」


 倉庫の奥には最初に討伐された緑色のドラゴンの死体が置かれている。

 既にドラゴンの死体は珍しいものではないはず。


「最初のドラゴンが討伐された時は、数十人で討伐に当たりました。それも数時間という時間を掛けて行われました。それが、あなたたちは数分で討伐されたのですから『凄まじい』という言葉に尽きます」


 必要があったため力を隠すようなことはせず討伐に当たらせてもらったが、少々強過ぎたかもしれない。


「それに討伐後も凄まじいです」

「討伐後って……簡単な解体しかしていないですよ」

「アレを『簡単』と言えるのが可笑しいです」


 あまりに大きいのでアイラに頼んで腕や足の付け根を切断してもらっただけだ。


「最初に討伐されたドラゴンは解体するだけでも1日掛かっています」

「1日!?」


 鱗と鱗の間にある柔らかい部分にギルドが所有する刃物の中でも最も頑丈な物を使用してどうにか切断させることに成功した。その時、ドラゴンの討伐に加わった冒険者の中でまだ動ける者たちは総出で手伝っていた。

 それだけ苦労をした。


 ところが、アイラはいとも簡単にスパッと斬ってしまった。

 その光景を見ていた人たちにとっては「自分たちの苦労は何だったのだろうか?」という思いに包まれていたはず。


「スキルの相性がよかったんですよ」


 ドラゴンの首を斬り落とせたのだから腕や足が斬り落とせないはずがない。


「じゃあ、もしかして解体は難しいですか?」

「そうですね……最初に討伐されたドラゴンの解体も進んでいませんからね」

「そういうことなら手伝うわよ」


 話を聞いていたアイラが申し出る。

 買い取りをお願いした場合、納めた魔物の解体までお願いすれば解体費用が買い取り額から差し引かれることになる。自分で解体すれば差し引かれるようなこともない。ただし、解体が雑だったり間違ったりしていた場合には、逆に差し引かれることになる。


 俺たちもさすがにドラゴンの解体はしたことがない。

 とはいえ、ギルド職員の指示に従って斬っていくだけなら大きな間違いもないだろう。

 さすがにドラゴンの全て自分たちだけで解体するのは難しいので、あくまでも手伝うだけに留める。


「では、お願いします」

「そうだな。俺たちだと解体にどれだけの日数が掛かるのか分からない。だったら大まかなところまででいいから任せた方がいいだろ」

「うん。了解」


 解体職員の言葉に頷いてアイラが剣を抜く。

 ただ、さすがにいつも戦闘で使っている聖剣を解体に使用するような罰当たりな真似はしていない。頑丈さを優先させたアダマンタイト製の剣だ。その剣だけでも一財産が築けるのだが、気付いている人は少ない。そして、気付いている人たちもあまりに凄い剣を前にして何も言わない。


「まずは、とりあえず翼を斬り落としてくれ」


 スパッ。

 剣の一振りで翼が落とされる。


 あまりな光景に見ていた人たちが言葉を失っている。腕や足が斬り落とされた時は遠かったからはっきりとは見えなかった。だが、間近で翼を斬り落とすところを見せられたことで異常な力を持っていることを改めて実感した。


 そのまま逆側の翼も斬り落とす。


「次は尻尾だな」


 付け根から切断される尻尾。

 その後も指示されるままに細かく切断していく。気付けばバラバラになった人ぐらいの大きさの体が転がっていた。


「じゃあ、次は鱗を剥がしていくか」


 鉈のような形状をした刃物を取り出して鱗と肉の間に切り込んでいく。

 ドラゴンの鱗は、それだけで頑丈でありながら対魔法能力を秘めており、討伐に成功した時には鎧の素材として流用され、高値で取引される。


 バラバラにしたため倉庫にいた全員で剥がしに取り掛かる。

 というのも、アイラの【明鏡止水】はあくまでも切断した時に効果が発揮される。鱗を剥がす時のような動きには対応できていない。


「ああ、くそっ……」


 解体職員が剥ぎ取りに使用していた刃物を棄てた。

 ドラゴンの肉が硬すぎるせいで刃毀れしており、剥ぎ取りができなくなっていた。

 他の職員も持っている刃物は一級品ではあるものの超一級品とは言えない。唯一、ベテランのリーダーだけがミスリル製の刃物を使用して魔力を流すことによって切断力を上げてスラスラ剥ぎ取っている。

 一人だけ突出した速さがあってもドラゴンを解体するには時間が掛かる。


「仕方ないな」


 立ち上がると全員の注目を集める。


「みなさん、剥ぎ取りにかなり苦戦しているようですね」

「まあ、な」

「ところで、俺たちが苦戦しているように見えましたか」


 俺たち4人は既に細かくされた部位の一つを剥ぎ取り終えている。

 解体職員のリーダーと同等の速さで解体できていることになる。

 残念ながら解体の腕が劣っているため道具の質で補っているためリーダー以上の速さは出ない。


「ここにミスリルで造った刃物があります」


 リーダーと同じ物だが、ミスリルの純度は俺たちが使っている物の方が高い。

 それを収納リングから20個取り出す。

 非常に高価なミスリル製の道具を見て誰もが声を失っていた。


「ドラゴンの解体をしている間に貸し出しますので、解体を素早く進めて下さい」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ