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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第37章 暴走迷宮
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第66話 門の守護者

 天から降り注ぐ光の柱。疑似的に作られた太陽だが、光さえ発していれば魔法を発動させるには十分。降り注ぐ光が下から迫るドラゴンを次々と撃ち抜く。

 当たり処が悪く、頭や心臓といった急所を撃ち抜かれてしまったドラゴンが飛行を続けられずに落ちていく。


 生き残ったドラゴンたちが攻撃を警戒して止まりたい衝動に駆られる。しかし、【門の守護者】の力により止まることができない。

 ドラゴンでありながら人間を警戒して、唾を飲み込む。生まれて初めて同族以外に対して感じる『死』への恐怖。


 ヒュッ!

 恐怖を齎す元凶が生き残ったドラゴンの1体の傍を通り過ぎて下へ落ちていく。


 自分たちの向かう先から消えた。

 その事実に安堵した。しかし、その安堵が長く続くことはなかった。

 自分たちの傍を通り過ぎたメリッサに最も近い場所にいたドラゴンの体が縦に斬られ、鮮血を撒き散らしていたからだ。


 メリッサの魔法。本人は駆け抜けるついでに斬っただけの攻撃。

 そして、本当の目的を知った時にドラゴンたちは恐怖した。

 最初の魔法で体を撃ち抜かれたドラゴンへ手が伸ばされると、ドラゴンの体がその場から消える。メリッサの空間魔法による亜空間へと収納された。


「ドラゴンは漏れなく全身が高級品ですからね」


 笑みを浮かべながらドラゴンたちに告げる。

 今度こそドラゴンたちは身動きができなくなっていた。

 魔物の中でも最強種であるはずの自分たちが『敵』として見られていない。完全に『素材』としてしか見られていなかった。

 メリッサの杖から白い光の玉がいくつも飛んで行き、当たったドラゴンの死体が完全に消える。これで落ちていたドラゴンも完全に消えた。


 たった一人でドラゴンの群れを相手にする。

 普通なら無謀としか思えない行動だが、魔法使いとして複数の敵を相手にすることを得意としているメリッサなら上手く立ち回ることができる。

 何よりもクラウドドラゴンに吹き飛ばされたことを根に持っていた。だが、ステータスが明らかになったことで、せっかく用意していた魔法を使用する機会を奪われた。その八つ当たりが迫っていたドラゴンたちへ行われている。


 転移魔法陣への殺到。それどころか自分の元へ辿り着くことができずに消えて行くドラゴンたちの姿を見てクラウドドラゴンが怯える。


「他人を気にしている場合か?」


 右手を掲げる。

 ただし、クラウドドラゴンには触れない。それでも苦しそうにしている。原因はシルビアから借りた【虚空の手】だ。首を絞められたことで今までに感じたことの苦しみを知ったクラウドドラゴンの恐怖が増大する。


「やれやれ……これがゴブリンエンペラーの憧れたドラゴンの姿か。覚悟なら、あいつの方があったように思えるな」


 ゴブリンと比較するような言葉を告げてもクラウドドラゴンの内側にあるのは、「助かりたい」「苦しい」といった見苦しい感情だ。

 頭がいいだけに俺が何かをしていることに気付き、懇願するような目を向けてくる。


 腕を下ろして、首を掴んでいる力を緩める。

 解放されたことで安堵するクラウドドラゴンだったが、腕を少し上げるだけで怯えてしまう。

 これだけ怯えさせれば簡単に口を割ってくれるだろう。


「質問に答えてくれて要望を聞いてくれたなら先へ進んでやる」

『……うん』


 表面上は取り繕っているつもりのクラウドドラゴン。しかし、【鑑定】を使用すれば心の内など一瞬で暴くことができる。


「お前に【門の守護者】を与えたのは誰だ?」

『あ、ダメだ。考えちゃダメだ!』


 頭で必死に考えないようにしている。しかし、心の内を自分で騙し通せるはずがない。

 まして相手は魔物。弱肉強食の世界で生きる魔物は、騙し討ちや奇襲をすることはあっても嘘をつくことなどない。自然と答えを頭に思い浮かべてしまう。

 最後の抵抗をしているようだが、一押しすることでその程度の我慢は消えてしまう。


「正直に教えないと……絞めるぞ」


 ちょっと脅しただけで体を震わせてボロボロと本当の事を考え始める。


『魔物が溢れるようになるちょっと前だよ。僕は、雲の中でプカプカ泳いでいるだけで十分だったのに、いきなり主が……主だった人が来て僕にスキルを無理矢理植え付けたんだ』


 その時にされたスキルの説明は最低限。

 門の近くにいる間は他の魔物よりも強い力を発揮することができる。ただし、門から離れたり、門を破壊されたりするようなことがあれば共倒れになる、と聞いた。

 元々、雲に隠れて仕留めるぐらいの事しかしてこなかった臆病な性格のクラウドドラゴンには耐えられなかった。それでも、スキルの外し方など分からなかったため従い続けるしかなかった。


『もう、嫌だよ……門を破壊するようなのがいれば戦わないといけないなんて』


 クラウドドラゴンがメリッサを襲ったのも門を破壊されそうだったため。

 どれだけ怖かったのかが【鑑定】によって詳らかになる。


『ひぃっ!』


 ドラゴンを狩っていたメリッサが頭上にいるクラウドドラゴンに向かって笑顔で手を振る。

 片手間でドラゴンを狩る姿が非常に不気味に映った。


「つまり、お前はゼオンが何を考えていたのかまでは知らないんだな」

『分からないよ!』


 切実に訴えてくる姿からは本当に嘘は含まれていない、と分かる。


「なら、要望だ。今後は誰もこの転移魔法陣を利用しないように動け」

『え、でも……』

「空を飛べる魔物は本能で自然とここにやって来るんだろ。そいつらを墜とすのが、お前の役割だ」

『僕が……!? 無理だよ。僕にそんな力は……』

「【門の守護者】の力があれば可能だ」


 以前は奇襲しかしたことのなかった者に門番を任せることに不安はあった。

 本当なら転移魔法陣を破壊してしまった方がいいのだろうが、あれば役に立つこともあるため本当の意味で門番を任せることにする。


「終わりました」


 と、全てのドラゴン退治を終えたメリッサが合流して再び攻略を開始する。



 ☆ ☆ ☆



 転移魔法陣のあった断崖とは反対側を飛んで降下する。

 安全を考慮して風船鷹(バルーンホーク)に乗っての移動。空中機動はできるが、戦闘能力が低いため魔物の出る場所で活動させたくなかったが、今は魔物の数が極端に少ないと判断できる場所を飛んでいるため安心して降下させている。


「本当に魔物がいませんね」

「こっち側にいないだけなんだけどな」

「楽でいいじゃない」


 アイラは既に乗って下りているだけの状況に飽きてしまったのか眠たそうにしていた。

 この場所に魔物がいない理由――と言うよりも、反対側に魔物が集中しているのは転移魔法陣と【門の守護者】の存在が大きい。迷宮の魔物は、外へ出る為の手段を本能で理解している。そして、ドラゴンが脱出する最も手っ取り早い手段が【門の守護者】が守る転移魔法陣を利用することだと理解している。


「それにしても、あんな約束をよく無条件でしましたね」


 遠くから見ていただけのシルビアは俺がクラウドドラゴンを無条件で信じたことを感心していた。

 だが、それは勘違いだ。


「そんな簡単に放置するはずないだろ」

「え……」

「あいつには【闇魔法:誓約】で門の守護を誓わせた。もし、押し寄せる魔物の恐怖に負けて逃げるような真似をすれば転移魔法陣もろともに自爆するよう設定してある」

『えぇ~』


 シルビアだけではない。他の眷属も俺のしたことに引いていた。


「仕方ないだろ。ゼオンがどういった目的で守護者を配置したのか分からないんだから」

「……もしかしたら、全て敵の手の平の上なのかもしれません」


 メリッサの推察は、俺たちが転移魔法陣を放置して魔物の移動を偏らせることで移動をスムーズに終わらせるのが目的ではないか、というものだった。

 たしかに普通に下りるよりも早く移動することができる。


「いや、まさか……」


 しかし、守護者を任せるには微妙に弱いドラゴンを任命している。

 これからはクラウドドラゴンが頑張ってくれるだろうが、既に十分な数のドラゴンが地上へ出てしまっている。俺たちみたいな迷宮主や眷属以外には絶望的な状況は作られている。

 これ以上は必要ない可能性だってある。


「いえ、今は少しでも先を目指すべきです」


 ゆっくりとした降下は終わりを迎え、最下層へ着地する。

☆書籍情報☆

書籍版絶賛発売中!

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