↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
9/10

その3:名前をつけない関係

帰宅してから、私は相談者に追加の質問を送った。


『彼と会えない日、あなたは自分の生活を楽しめていますか。彼から連絡が来るかどうかで、一日の気分が決まっていませんか』


しばらくして返事が届いた。


『彼から連絡が来るまで、何も手につきません。予定を入れても、会えると言われたら全部断ってしまいます』


私は目を閉じた。


恋愛が生活の一部ではなく、生活そのものになっている。


それは愛情の深さというより、自分の時間を相手に明け渡してしまった状態に近い。


『彼の予定に合わせること自体が悪いわけではありません。


でも、あなたの予定がいつも彼の都合で消えていくなら、一度、自分の生活を取り戻してください。


今度の日曜日、彼から連絡が来ても来なくても、あなた自身のための予定を入れてみましょう。


最初は落ち着かないと思います。でも、彼がいない時間にも自分の人生が続いていることを、思い出してほしいのです』


送信すると、私はスマートフォンを裏返した。


日曜日。


自分のための予定。


そんなものが、私にはあっただろうか。


スーパーへ行く。洗濯をする。部屋を片づける。相談に返信する。酒を飲む。


それで一日が終わる。


誰かと過ごすことを避けながら、誰かに選ばれることを心のどこかで待っている。


私はその事実を、相談者よりも認めたくなかった。


そのとき、佐伯からメッセージが届いた。


『今日はありがとうございました。もしよければ、また食事に行きましょう』


私はしばらく画面を見つめた。


返事は簡単だった。


『こちらこそ。ぜひ』


たった十文字ほどの文章を送るのに、私は五分もかかった。


その夜、私はいつものバーに行かなかった。


誰かに会いたくないわけではない。


ただ、名前も知らない誰かに、自分の寂しさを預けることが、いつもより少しだけ嫌になったのだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。