↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
4/11

第2話:優しい男ほど、約束をしない  その1:午前零時の相談者

月曜日の朝、私はいつものベージュのカーディガンを着て、いつものブラックコーヒーを飲んでいた。


土曜日の夜に知らない男と過ごしたことも、日曜日に三万人のフォロワーへ辛辣な恋愛論を発信したことも、会社の誰も知らない。


「篠原さん、この資料の数字、確認してもらえますか」


「はい、わかりました」


声のトーンまで、いつもと同じ。


会社という場所は便利だ。誰もが他人のことを知っているような顔をして、実際には誰のことも知らない。


昼休み、スマートフォンを開くと、恋愛相談アカウントに新しいメッセージが届いていた。


『サキさん、彼は本当に優しい人なんです。でも、将来の話をすると話題を変えられます。私から結婚の話をするのは重いでしょうか。付き合って一年半です。彼は三十四歳、私は二十九歳です』


私はサンドイッチの包みを閉じた。


優しい人。


恋愛相談で、この言葉ほど厄介なものはない。


優しいという評価は、必ずしも相手が自分を大切にしている証拠ではない。怒鳴らない。暴力を振るわない。会えば笑ってくれる。そうした最低限のことまで、女性は恋愛市場で特別な価値として数え始める。


もちろん、優しさは大切だ。


ただし、優しさと誠実さは別の能力である。


私は返信欄を開いた。


『結婚の話をすることは、重くありません。あなたの人生に関わる話ですから、確認する権利があります。


ただし、彼が何と答えるかよりも、答え方を見てください。


すぐに結論が出ないことと、結論を出す気がないことは違います。


あなたが不安を口にしたとき、彼は一緒に考えてくれますか。それとも、あなたが黙るまで困った顔をしますか。


一年半付き合っているのなら、そろそろ彼の気持ちを当てるゲームを終わりにしましょう。


あなたが欲しいのは、彼の機嫌ではなく、二人の将来のはずです』


送信してから、私は画面を伏せた。


自分の言葉は、いつも他人に向けているときのほうが正しい。


自分に向けた瞬間、途端に使い物にならなくなる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。