おやすみ25メートル
最近「プールの授業が無くなる」みたいなニュースが話題ですね。私は水泳苦手だけどいざって時のためにせめて着衣泳だけはやろうよって思います。ちなみに私が小学生だった頃はもうそろそろプール開きの季節だったので今回それもありプールの話にしてみました。ちなみに私も小学生の時プールの授業中自由時間にマジで半分寝たことがあります。その時は友達に引っ張られて起こされました。
私の名前は雲井翼。ひょんなことからタイムリープして小学生になってしまった女子高校生。さてさて今日は快晴。何やら1時間目からみんながソワソワしているぞ。
「なあなあ!今日プールの授業楽しみだよな!」
「だなぁ〜!」
「俺クロールできるし!」
「俺は平泳ぎできるよ。」
そう、今日はプール開きで、3、4時間目はプールの授業があるのだ。
ところで私は泳ぐのは得意じゃないが、プールは楽しみにしている。何故かって?今日暑いからだよ。水入りたいですよ。暑いもん。なんなら私だって今日に備えてムダ毛を処理してきた。小3なのに。タイムリープ前の小学生時代は特に気にしてなかったが今はタイムリープしてしまい中身は多感な高校生。そういうのは気になるのだ。
「翼ちゃん今日プール楽しみだね〜。」
「今日暑いもんね。」
「でもやらなかったらどうしよう」
プールをやるには条件がある程度外の気温と水温が高くなければいけないのだ。故に雨が続いたときなんかは悲惨である。
「これだけ晴れてるんだからやるでしょ。それに私今日、折りたたみ傘カバンに入れてきてんのよ」
「…それとどう関係あるの?」
「なんか知らないけど私が折りたたみ傘持ってくると晴れるんだよね。」
「超能力じゃん。すごいね。」
「ま、超能力ってほどでもないけど。」
さてさて、プールの授業の構成としては先ず基本的なことをやってから学校での検定試験の練習や、低学年の場合宝探し…という名のプールの底に沈んだよくわからないものを拾う謎の遊び、時間が余ったらみんなでプールの中をぐるぐる歩き回って流れるプールなんかを作って遊んだりする。要するにほぼ遊び。故に私のような泳げないような奴もそれが楽しみだったりするのだ。…尤も、高学年になったらより専門的になるため低学年の時にやるそれくらいしか楽しみはないのだが。
さてさて、そんなこんなでみんなそわそわ状態で授業を終え、お着替えタイムに入る。クラス合同で同じ教室で着替えるため、私がいる教室にも女子が入ってくる。
「私日焼けしてるから地獄のシャワー浴びるの嫌だなぁ…」
「ほんとそれ。」
地獄のシャワーとはプール前に入るシャワーのことである。冷たいし、何より水圧が強いため肩なんかを日焼けしていると大変な目に遭う。そしてその後は謎の消毒臭い冷たい白い水に入ることになる。それも含めてプール前のシャワーは地獄のシャワーと大概の小学校ではそう呼ばれているのだ。…実際プールでの体験談を他校の友人に話した際「え、なんで地獄のシャワー知ってんの?」と言われ「いや逆になんであんたが知ってるのさ」となった事もある。小学生って全員ある程度は考えることは同じなのかな〜とか考えたり。
「男子は着替え楽でいいよね。」
「わかる!こっちは汗で水着がくっつくから大変だよね~」
「そういえば1組の曹太今日水着着てきたらしいよ」
「うわ~それやっちゃいけないんだよ〜」
それ以前に曹太は替えの下着を持ってきたんだろうか。持ってきてなかったら…まぁ…終わりだな。うん。
そうこう話してる間に着替えを終えて、プールカードや水着を忘れた人、体調が悪い人は体操服に着替えていざ出陣である。
私達は準備運動や点呼を終え、プールに入った。
「はい!それではまずは水に潜ってみましょう!」
プールの授業は1〜3年生合同で行われるため、あと水に慣れるという目的まありこういう基礎的なやつから入るのだ。そして今回は珍しく秘密基地メンバーと授業受けることになっている。まあ、場所は遠いけど。
潜ったり浮いたりする時間を終えると一度上がって先生の話を聞くタイムに入る
「じゃあ今日はまず宝探しと、検定試験の練習をしていきましょう」
「「「わーーい!」」」
宝探しと聞いて1年の方向から歓声が上がった。さてさて、秘密基地メンバーの様子は…と
「「わーい」」
うわーめちゃくちゃ棒読みー!
しかも目が死んでるー!
まぁ当然である。何しろ宝探しと言っておきながらプールの底に沈んでいるのはゴム製の謎の石。パイプの一部、これ全部ガラクタじゃねーか!
しかもご丁寧に沈んでるパイプは2点、ゴム製の石は5点、浮いてるプラスチックの筒は1点と決まっている。どれもガラクタじゃねーか!
せめてアクリルストーンくらい沈めて欲しいものである。がしかし、子供は単純、宝探しというだけでテンションが上がるのだ。
「…とりあえずできるだけ手を抜いて終わらせよう…。」
私はそう零した。
私達はプールに入って開始の合図と共に宝という名のただのガラクタを拾い始めた。ちゃんと潜って拾う奴がいる一方で私は…
「よ…いしょっ…と…うん、親指と人差し指の間で挟めた。んじゃ足を上げて…」
自分で言ってしまうのも何だが器用にも足で拾っていた。
「何してるんですか先輩」
ぎくっ
「!」
なんと声をかけてきたのは太陽だった。
「何って…足でガラクタ拾ってんの。」
「それ言っちゃいます?」
「ガラクタはガラクタだろ。そもそもこれ宝って言えんのかよ。」
「そりゃそうですけど…足で拾うのはさすがに…」
「いけないかよ」
「バレますよ?」
「…太陽君はバラしたりしないよね?」
「どうでしょうねー」
「…仕方ない。今拾った2点譲ってやる。」
「自分で拾うんでそれは大丈夫ですよ。なんならバラすつもりもないですし。」
「わかってんじゃねーか」
「あ、翼先輩に太陽!」
「美音ちゃんも来たんだ。今足でガラクタを…」
「ハイ足使って拾わな〜い!!」
先生の声が飛んできた
「…バレた。」
「でしょうね。あ、あそこに石たくさんありますよ。」
「いやいいよ〜どうせああいうのって泳げるやつが狙ってくもん」
「ですよねぇ…」
「まあ拾いに行ってもいいけど?足で。」
「またバレますよ?」
「大丈夫大丈夫。バレないバレない。」
そう言いながら足で石を拾うと…
「は~い足使わないで〜!足使った人戻して!拾い直す〜!」
またもや先生の声が飛んできた。またバレたんかい。
「潜りゃいいんだろ潜りゃ。それくらいできるし。」
潜って拾って指定のかごに入れた。
「はい、翼さん8点。」
「あれ〜翼8点しか取れてねぇの〜?俺20点取ったし〜!」
水泳に限らず体育全般得意な大樹がマウントを取って去っていった。
「なんだあいつ」
私はあいつが見えなくなってから言った。
「ガキですね。」
太陽も言った
「私達もガキだけどね。」
美音も言った。
「失礼しまーすって…皆いたんだ。」
「優李も来たんだ。何点?」
「10点ですかね。」
「お、いいじゃ~ん」
「さっきのなんですかね。」
優李も見ていたようだ。
「見てたんだ。あれはね、ガキの安っぽいマウントだよ。」
「マウントですか。」
「マウントです。」
「なんだこの会話」
太陽がツッコんだ。
「はい宝探し終わり〜!」
そこで先生のアナウンスが入ったのでプールから上がる。
「はい次は検定試験と検定試験の練習をやっていきます。検定試験はプールで潜ったり泳いだりできるかな〜って試験で、級が上がるにつれて泳ぎ方が決められてたりとか、泳ぐ距離が長くなったりとか、速く泳がなきゃいけなかったりとかしてだんだん難しくなっていきます。そして、難しくなるにつれて、赤から銀、銀から金とシールの色が変わります。1年生のみんなは潜ったり浮いたりする赤シールから始めましょう!」
ちなみに私は泳ぐのが全く得意ではないため小3にしてまだ5メートルまでのシールしかもらえていない。今年中には25メートル行って、その先のクロールの練習にも取りかかりたいけどなぁ…。
そうでもしないと一生赤シールの上の銀シールにいけない。それは困る。折角タイムリープできたんだからやり直せるなら出来れば人並みに泳げるようにはなりたい。とはいえ何故か検定試験の後に練習っていう変な順番になっている。故にさっさと検定クリアしたいが練習のための余力は残したい。…実を言うと私の作戦はもう決まっているのだ。
練習時間ということで各々友人同士が集まってる中、私達は秘密基地メンバーで集まっていた。
「クロール泳げない。難しいし疲れるから」
「平泳ぎできない。沈むから。」
「というわけで私は最低限の力で25メートル目指しますかね。」
「先輩まだ赤シール6つ行ってないんですか?」
太陽、お前だってタイムリープした今はまだ1年だから赤1すら行ってねえだろ。
「そりゃだってタイムリープ前も今の今まで泳ぐことがまともにできんかったからねぇ…さてと、赤シール6つの条件は…確か…自由泳法だったな…」
「でも先輩確か平泳ぎもクロールもできないんじゃ…」
さっきの説明を聞いていた美音が口を挟む。
「確かに私はその2つはできないと言ったね。だが…」
「一つほかの小学生とは圧倒的な差を付けられる泳ぎ方を知っている…」
「犬かきでもする気ですか?」
「…いや、まさかとは思うけど…」
太陽は呆れた様子だったが、美音は何かに気づいたらしい。
「そいじゃ皆さん、お休みぃ…25メートル行ってたら起こしてね。」
そう言うと翼はプールに仰向けになり…
「いやそんな事したら死んじゃいますよ!」
優李が心配そうにしている
「いや……浮いてる…?仰向けに…」
美音は翼にしていることに気づいたようだ。
「あ、でもバタ足で微妙に進んでます」
太陽も進んでいることに気づいた。
「こうやってバシャバシャしてるうちに進んでいくもんなんだよね〜〜スヤスヤ…」
「流石翼先輩…プールにも何かしらのネタを交えてくる」
「褒めてんのかそれ」
感心する美音に太陽がツッコミを入れたところで「ピー、ピー、ピー!」と笛が鳴った。
「はーい!検定直前の練習時間終了でーす!では、まず赤1〜赤3の人、一気に受けちゃいましょう!」
私以外の秘密基地メンバーは受けに行くようだ。ま、どうせできるだろうから応援の必要もないか。
数分後、案の定合格だったようで3人してシールをもらいに行っていた。
そしていよいよ
「続いて赤4〜赤6一気に受けちゃいましょう!」
じゃあ私達も受けに…いや、私は寝に行くか。
プールに入ると私は後ろを向いた。何をする気なんだとみんながざわついた。と、そこで
「位置について、よーい…」
ピーと笛が鳴ると同時にみんなで一斉に壁を蹴る。私も壁を蹴って力を抜いた。それじゃ皆さんおやすみなさい。また25メートル先で会いましょう。
「うわぁ…あの人マジで寝ながら進んでる…」
「寝不足だったのか、はたまためんどくさいだけなのか」
「あ、でもバタ足はちゃんとしてるっぽいですね」
「背泳ぎか?」
「すげえ…」
「あいつ背泳ぎできたんだ…」
周囲の反応をよそに半分寝ながら25メートル地点まで行ったところで、頭をぶつけたので目が覚めた。
「はい雲井さん合格でーす!おめでとう。」
すると向こうから別のクラスの担任の先生が来た。
「雲井!合格おめでとう!ただお前その泳ぎ方…」
「駄目ですかぁ?」
自由な泳ぎでって書いてあるんだから泳ぎ方に文句をつけないでほしい。しかし先生の反応は予想外だった。
「よく思いついたな!」
「は?」
「今の雲井の泳ぎ方、もしみんなが海で溺れたりした時、川に落ちた時、そんな時に体力を奪われずに助けを待てるから覚えといて損は無いんだぞ!」
なんか褒められた。
「そうなんですか…」
「うん。しかも雲井、検定受けてる途中半分寝てただろ。それも可能な所がこの泳ぎ方で助かるポイントなんだよ。」
とはいえ、水泳の授業中は自由時間でもない限り寝るなよ!と指導を受けた。
まぁ、25メートル泳げたしいっか。翼はそう思い、試験が終わった後、次の検定試験に向けての練習に取り掛かるのだった。
『ピ、ピ、ピー!!』
笛の音が鳴り、次の検定試験に向けての練習時間が終わりを告げた。
「はい、今日は初めてのプールというのもあり、最後は流れるプールをやりたいと思います!」
周りから歓声が上がった。私も流れるプールは嫌いじゃないので歓声を上げた。
プールに入って皆で歩き回って流れを作ったら第二の睡眠時間突入である。
「翼先輩…ってあ、また寝てる。」
「むにゃむにゃ…」
「起きてください翼先輩」
「先輩おーきーてーー!!!」
「うわぁっ!おはよう美音ちゃん。なんか用?」
「なんか用?じゃありませんよ!また寝てるんですか先輩!」
「いやぁだってプールひんやりしてて気持ちいいし…」
「せっかくの流れるプールですよ?」
「寝るのも醍醐味だよ…」
「また寝ようとしてる…」
「美音も寝なよ…ぷかぷかして気持ちいいよ…」
「…どうやって寝るんですか?」
「水が怖いという概念を捨てるんだよ…。水をそうだな…家のベッドみたいなもんだと思い込んで力を抜いて…」
「うわぁっ!やっぱり沈んじゃいますよ!」
「浮く感覚に身体が追いついてないんだね〜。もっと力抜いて…」
「力を抜いて…怖くない怖くない…あ、浮いてきた…。これはぷかぷかして気持ちいいですね」
「でしょ?まあたまに友達にいたずらされて沈むけどさ」
「恐ろしいこと言わないでください。」
と、そこに太陽と優李がやってきた
「あれ、美音も浮いてるの?」
「うん。太陽も浮く?」
「遠慮しとく…」
「私ちょっとやってみたいです。」
「ん、いいよ。」
「あのね、めっちゃ力抜くの。あの、もうおやすみなさいくらいのテンションでやったらできた」
「どんなテンションだよ」
「あと怖いという概念を捨て去ることだね〜」
「浮けました」
「早っ」
「タイムリープ前の私より早かった気がする」
「…ホントにそんな簡単に浮けるもんなんですか?」
「ま、着衣泳でやらされるから否が応でもできるようになるんだけどね」
「それを早く言ってください」
そんな中笛の音が鳴った。どうやらもうプールの授業は終わりらしい。
「はーい皆さんプールから上がって点呼を取りましょう〜!」
その後も点呼を取って教室に移動し、着替えたら終了…なのだが…
着替えを早く終わらせ、早く給食の時間にしたいので入ってきた男子と
「なーまだ着替え終わらないの〜?」
「エッチ!」「「「エッチ!」」」
それに対してエッチ!と叫ぶ女子のやり取りだったり…
「せんせー!曹太が学校に水着着てきてパンツ忘れましたー!!」
下着を忘れる奴がいたり…というか曹太、やっぱり下着忘れてたのか…
そして何より…
「翼さん、国語の時間は寝ないように。」
「zzz…」
等、まだまだこの日は一悶着あるようだ。だが、この一悶着も含めてプールがある日なのである。というか、プールがある日なんだからこんな事があったって仕方ないよ…そう思いながら翼は今も夢の中なのであった…
「翼さん起きなさい!」
「zzz…」




