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台風で学校が消し飛んだ日の話

つい最近台風で学校が休校になったんで書きました。『』はチャットないでの会話を表してます。ちょっと前半の会話パート多くなっちゃった…。台風で学校休みになると普通の休日よりなんかちょっとワクワクする気がする。

私の名前は雲井翼。ひょんなことからタイムリープして小学生になってしまった女子高校生。突然だが、皆は学校生活においてわくわくする瞬間というのはどういう時だろうか。例えば宿題が無しになった時?或いは配られた来月の献立表の何処かに「プリン」の3文字を見つけた時?時間が余って授業内でちょっとしたゲームをやることになった時?それとも…学校が消し飛んだ時だろうか。別に何も学校が物理的に消し飛ぶとは言ってない。何よりそんなことになったら大惨事だぞ、大惨事。たぶん君たちの家も君たちも消し飛んじゃうと思う。

さて、何故こんな話から入ったのかと言うと、答えは簡単。「学校が消し飛ぶ」事態になってしまったからである。…というのも、今は6月。栗花落、梅雨前線等とも呼ばれるこの季節は…台風が多いんだな。要するに台風で学校が休校になるかもしれないということである。

そんなわけで今日も私達は雨の降る外の景色を他所にそのことに関して秘密基地で駄弁っていた。

「にしてもさ、6月って雨が多いし、休日無いし嫌になるよね〜」

「ですね。」

「しかもさ、このメンバー以外の友達や家族の誕生日、見事に6月に集中してんのよ。」

「そうなんですか?」

「そうだよ。何なら家族は1週間ごとに誕生日が来る。」

「そんなことあるんですか?」

「あるから私が生まれてんだよ。」

美音との会話の最中、優李が入ってきた。

「そういえば、翼先輩何座でしたっけ?」

「え、餃座。」

ふざけて答えた。

「へ?」

「間違えた。ユーフォー餃座」

円盤状の形の揚餃子…給食の人気メニューである。

「ふざけないで答えてください。」

「黄ばんだ便座」

「んな汚い星座あったら嫌ですよ!」

「だね、定期的に磨かれた綺麗な便座の方がいいよね。」

「そうじゃなくて…12星座ですよ12星座。」

「あ、それならツェンヴィン座」

「てんびん座ですね。」

「そ、てんびん座ってそもそも何座だよって話だよね。」

どうせならさそり座とかしし座とかもっとかっこいい星座に生まれたかったものである。

「水瓶座の俺に比べたらまだいいでしょう」

太陽も入ってきた。

「そういえば子供の頃は水瓶のことをウミガメかなんかだと思ってたよ。」

「そもそも、今の時代水瓶という概念自体少ないですからね…。」

うん、見たことないものって想像つかんよね

「かく言う天秤もなんなのかわからないんじゃない?」

「理科室にあるじゃないですか」

「うん、あんたら理科の授業受けたことあったっけ?」

「今はないけどタイムリープ前はありましたよ。」

「もしかして先輩…忘れました?」

「きれいさっぱり☆」

「タイムリープを活かしきれてるのか…」

「冗談だよ!天秤ってあれでしょ?ほらあの…皿が2つ付いてる…」

「わかるじゃないですか」

「で、星座がどうかしたの?」

話の腰が折れたがなぜ星座を聞いてきたのか。

「最近星占いの本借りたんですよ。ほら、これ。」

そう言うと優李はいかにも女の子って感じの表紙の本を取り出した。

「これが例のブツか。」

「そうですぜ先輩」

「別にそんな言い方するもんでもないですけどね。」

「で、それと私の友達家族の誕生日が6月に集中してることなんの関係があるんだ?」

「この本によるとてんびん座と相性のいい星座は…ふたご座だそうです」

「ふたご座ァ!?」

「そう。5月後半から6月前半生まれ。恐らくだからこそ翼先輩の友人はふたご座の方が多いのでは?」

「そうかぁ…」

「ちなみにふたご座の特徴の所にコミュニケーション能力が高くて誰とでも仲良くできるよ!性格が柔軟だから色んな状況に対応できる!情報通でトレンディ!今の流行を抑える敏感さん♡って書かれてます。」

「だからあいつら面白い話しかしないのか」

「他に相性がいいのはしし座、水瓶座、射手座」

「あ、太陽とは仲良くなれるんか。」

「そんな簡単に信じます?」

「そして逆にかに座、乙女座、山羊座なんかとは相性悪いらしいです。」

「美音ちゃん、優李ちゃん、チミらとは前々からそりが合わないと思っていたんだよ」

「そんな簡単に信じます?」

「冗談だって。だいたい占いってプラシーボじゃん」

「それならいいですけど…」

「何だ何だ太陽くん私と仲良くするのは嫌かね」

「いや、美音が悲しむんで。」

「なるほどねぇ。じゃあ、2人の相性占おうか。優李ちゃん、かに座の恋愛占いのページ開いて。」

「はい!ただいま!」

「えーとなになに?かに座と恋愛的な相性が良いのは…うお座…さそり座…おうし座…」

「水瓶座無いですね…」

「じゃあ次は水瓶座のページ見てみよう!」

「えーと…水瓶座と相性がいいのは…てんびん座、ふたご座…おひつじ座…」

「こっちも無いね。」

「逆に相性最悪のところに蟹座載ってますよ!」

「うわぁ…」

「あの、心配しなくても私達そんなの気にしな…」

「神様、何故こいつらは蟹座と水瓶座なんだ…」

「先輩聞いてます!?」

「あ、でもこうも書いてありますよ。『真反対な二人はお互いに足りない物を補える関係。だからこそうまくいけばきっと誰よりもベストパートナーになれちゃう!』って…」

「だってさ!良かったねぇ二人とも…」

そう言って私は口笛を吹いてみせた。

「やめてくださいよ先輩」

止められたけどやめてやんない。

「そのままタイタニック号のテーマ吹き始めるのやめてください」

「バレたか。」

「ちなみにてんびん座も見ます?」

「せっかくだし、見てみるか。」

本にはてんびん座と相性が良いのはふたご座、水瓶座、射手座等と書かれている。そして相性最悪のところには…

「…山羊座…。あ、でもうまくいけば自由奔放なてんびん座を山羊座が受け止めてくれるベストな関係って書いてありますよ。」

「優李ちゃん…私の運命の人はどうやら君だったようだ…」

「あの、ごめんなさい。普通に私恋愛対象異性なんで。」

「冗談だよ。私もそういう人じゃないよ。」

その時、窓の外でパタパタという水が何かに落ちるような音がしていることに気がついた。

「…あれ、外雨降ってね?」

美音が窓の外を見て言った。

「降ってますね。」

「うわー私傘持ってきてないんだよ」

「先輩折りたたみ傘持ち歩いてないんですか?」

優李は持ってきているようだ…。

「いやだってあれ普段使わないし、何ならこんな6月序盤でこんな事あると思わんやん」

「先輩絶対ニュース見てないですよね?今日天気予報で低気圧とか線状降水帯とか言われてたじゃないですか」

太陽の辛辣な物言いが入る。

「見てはいるけど完全にBGMだからなぁ」

「でしょうね。」

「あ、私折りたたみ傘2つ持ってました。」

「え?すごいね。」

「梅雨の季節なので最近新しく買ってもらったやつ鞄に入れたんですけど、その前にもう既に入ってたみたいで…。」

「つまり入れてたのを忘れてまた入れたってことか?」

太陽が美音に言った。

「うん」

「何やってんだよ。そんな事したら重いだろ。」

「気づかなかった」

「気付かないことないだろ普通」

太陽がツッコミを入れた。

「ってわけで、先輩どっちがお好きな方今日使ってください」

「あんたは天使か」

「美音に感謝してくださいね。先輩。」

「マジでありがとう。美音ちゃん新しい方使いな。」

「じゃあこっちの方先輩で。」

「マジでありがとう(2回目)」

そんなやりとりをしている間に夕焼け小焼けが鳴ったので雨がひどくなりすぎないうちにそろそろ帰ろうかという話になった。今日、学校から直で歩いて来てよかった。

「あ、この時点で結構強いですね。」

優李が傘を出しながら言った。

「いきなり振り始めたし、さながらゴリラゲイ雨と言ったところか」

「ゲリラ豪雨ですよ。」

「ゴリラゲイ雨、ゴリラが降ってくるって言ってた人タイムリープ前いたんだよ。奥賀小に。」

「小学生はそういうネタ大好きですからねぇ」

「まあ俺ら小学生なんだけどね。」

「だよな。」

「先輩はちょっとガキ過ぎる。」

「ひどい」

「それにしても…明日ほんと何かあったりして…」

「それこそあの低気圧が台風に変わったりとか…」

「学校無くなるかな」

「台風で学校は無くなりませんよ」

「授業なくなるんじゃないかってこと」

「それはあるかも」

「何れにせよ、授業無くなるなんてこと早々無さそうですけどね。」

「だね…あ、じゃあ私こっちだから。」

「「「また明日〜」」」

「うん、また明日!」

そういうと翼は自宅に帰ったのだった。

テレビでは天気予報が付いている。

『明日以降は沖縄付近の熱帯低気圧が台風に変わる恐れがあり…』

「…まさかね。」

そのまさかになるとは私は思っていなかった。

〜なんやかんやあって翌日〜

美音にちゃんと傘を返した後、1時間目から4時間目を受け、いよいよ給食という時になっていきなり強い雨が振り始め、先生のところに通達が来た。

「えー皆さん、今、強い雨が振り始めた為台風が近づいていると思われます。進む速さ次第では直撃する恐れがあるので、本日の授業は4時間目まで、給食を食べたら集団下校をするので体育館に集合です!」

周囲からは「よっしゃー!」「帰れる〜!」などの歓声が聞こえる。

「場合によっては明日休校になるので、ひとまず様子を見て、休校にならなかった時のために明日の準備もしておいてください。」

「「「はーい!」」」

その後、体育館に集まる。…とはいえ、家の場所的に秘密基地メンバーとは別のルートで帰らなければならない。なので集団下校では秘密基地メンバーと交わることはないのだ…。しかも仲いい人少ないよ…。

とはいえ、何も話さないのもあれなので話を振ってみる。

「…明日学校休みになると思う?」

「ならないと思う。」

「俺、なる可能性にかけて明日ランドセル空っぽにしとくし目覚まし時計も仕掛けないどくわ。」

無謀な奴もいたもんだ。

「みんなテンション上がってるみたいだけど台風で学校無くなるのは良いことじゃないからね」

「でもその場合先生も台風で休みになるのでは?」

「よっぽど酷くないと休めないんだよ」

教師はブラックである。

そうこうしている間に家に着いたので、とりあえず秘密基地のメンバーにチャットアプリでメッセージを送る。私達は未来人なのでいざという時のため、或いは連絡なんかのために携帯電話を持たされているのだ。

学校に持っていくことはできないが。

「えーと…『こっちもう帰ってきた。そっちは?』と。」

するとすぐに既読マークが付いて返信が来た

『こっちも帰ってきました。』

最初は美音からである。

『俺今帰ってきました。めっちゃ雷鳴ってますね。』

太陽からもメッセージが来た。ちょうどその時は雷が鳴っていた。

『学校早めに終わったのでココア入れてます』

優李からはメッセージと共にココアとお菓子の画像が送られてきた。

『お兄さんにも分けてあげた?』

最初の話でも一応触れているが、優李には勇斗という兄がいる。うちのクラスに。

『あげました。』

「…今日肌寒いし、私も久々に紅茶淹れよかな。」

私はそう零すとキッチンへと向かった。

「お母さん〜ティーパック無い〜?ほらトワイリングとか日西紅茶とか」

「棚に入ってるわよ〜!何に使うの?」

「淹れる」

「火使うの危ないから辞めときなさい」

「大丈夫大丈夫、私中身高校生だから」

そう言うとヤカンにお湯を入れ、コンロに火をつけた。

「…それにしても学校の予定が無くなるかもしれない…か。」

もしそうなったとしたら、その時の喜びは通常の休日より大きいものとなる。なんか特別感があるんだよね。台風による休校って。

「あ、お母さん、明日学校無くなるかもしれないからお昼ゴハン用意してもらうかも」

「それならメールで来るからそしたらお昼も考えるわね。」

考え事をしたり必要事項を伝えているうちにお湯が湧き、ヤカンが悲鳴を上げる。

「あ、お湯沸いた。じゃあこれをポットに移して…」

ポットにお湯を移し、その中にトワイリングのティーパックを入れる。暫くの間蒸らしたら適当なマグカップに入れて、適当なおやつを冷蔵庫から出す。あいにく家にはティーセットなんてないのだ。

「こんなティータイム久しぶりだなぁ…」

それこそ学校が早く終わらないとこんな楽しみは無い。

「宿題なんか気にせず暫くゆっくりするかねぇ。」

ゲームをしたり、図書室で借りた『怪談喫茶』を読んで、たまにチャットアプリを見ながら暫くゆっくりしていると、お母さんが話しかけてきた。

「あら、おいしい。あんた無糖の紅茶なんか好きだっけ?」

せめて飲む前に許可くらい取ってほしいものである。

「高校生にもなると味覚が変わるの。」

「味覚もタイムリープしてるのね。」

驚くべきことにそうなんだよね…。

「でも紫蘇は相変わらず嫌い。」

「そこは変わってないんだ…」

「まあね。お母さんのマンゴー嫌いと同じようなもんだよ。」

「ちなみにお寿司は」

「さび抜きなら食べられるけど奢ってくれんの?」

「へぇ~」

そういえばこの時はまだお酢が苦手だったな。

とまあその後もゴム編みでブレスレットを作ったり、ピアノを練習したりして…くだらないゆっくりとした時間を過ごすうちに夜になり、さらに時間が経って翌日、学校から休校の連絡が来たのであった…。

翼『とは言ったものの…見事に晴れたね。』

美音『ですね。』

翼『ちなみに美音は今日暇?暇ならよかったら秘密基地集まんない?』

美音『天気変わったらヤバいんでゆっくりしときます。』

太陽『先輩も家いたほうが良いですよ。台風の間って天気変わりやすいんで。あ、ちなみに俺は課題やります。』

優李『私は課題終わらせてマカロン作りに挑戦中です』

翼『すごいことやるね。成功すること祈ってるよ。』

優李『かれこれ3回は失敗してるので今度こそって感じです』

翼『失敗経験してるんだ…私もタイムリープ前にやろうとして失敗したことあるよ…。』

優李『もしかして割れたり変なカタチになりました?』

翼『君は超能力者か何かか?マジでそうなんだけど。』

優李『多分マカロナージュしすぎと焼きすぎですね。私も最初やらかしました。』

翼『そうだったんか…まあ、今回はうまくいくこと祈ってるよ!あと、失敗しても成功しても写真上げてくれると嬉しい。』

太陽『成功はともかく、失敗は写真撮る必要ないのでは?』

翼『ネタ的に楽しめるでしょ。私なんかタイムリープ前、SNSで料理下手っぴグランプリのタグが流行ったときお料理下手っぴなのに肝心の失敗した料理の画像無くて結局投稿できなかったからね…。』

翼『だから失敗した料理の画像も必要な時があるんだよ!(持論)』

優李『確かに、反省点の見直しとかにも使えますもんね。それに情報収集とか。有識者の人が教えてくれるかもしれないし。』

太陽『そう考えれば自然なのか…』

3人共、今日は各々お家で過ごすらしい。だがしかし、こんな時に出かけないっていうのもなんか物足りない。せっかく学校が休みなのだ。普段遊べない時間の公園とか…行ってみる価値はあるかもしれない。それに私は少しだけ、嵐が去った街の風景を見てみたかったのだ。

私はチャットアプリに

『暇だから近くの公園に行ってみるww』

と送った。

「ちょっと公園で遊んでくる」

「遅くなるようなら連絡するのよ〜」

「はーい」

そう言って私が向かったのは通う学校とは反対の方向にある違う学区の公園である。もしこのタイミングで秘密基地メンバー以外の他学年の人やクラスメートとかに会おうものならまず茶化されるだろう。それにちょっとした冒険がしたかったし、何より学校よりも違う学区の公園の方が家からは近いのだ。それに…

「相変わらずあまり見かけない遊具が沢山…」

奥賀小より都会にあるというのもあり、公園には比較的珍しい遊具が多いのだ。例えばグローブジャングルだったり、シーソーだったり。中に入れる大きな滑り台だったり。なんならよく分からない置物も置いてある。

「とはいえこんな日にいるのなんて私だけかあ…」

まあいい。せっかくなので貸し切り状態の公園を満喫するとしよう!

まずは一人でも遊べそうなグローブジャングルに登ってみることにした。

「よいしょっと…。うん、登れた…。うーん…あまり変わらん景色!」

地上と大して変わらん。

そして登るのもいいが、折角なので普通の楽しみ方もしたいものである。

「こうやって周りを走って…うん、これくらいのスピードでいいや。」結構な速さで回るグローブジャングルにしがみついていた。

「うわーーい!結構楽しい〜!」

降っていた影響で雨の匂いの混じった少し湿った風を感じるのは結構面白かった。

「…」

そして最初は楽しいが次第に目が回ってくるものである。

「…やっと止まった」

最初は楽しんでいてもこれである。

「…次は滑り台行くか。」

滑り台行きたいはいいけど、着地部分に水たまりができてるな…仕方ない。登って適当に休んどくか。いやその前にブランコ乗る?そんな事を考えていた時だった。

ぽつり、ぽつりと空から水が。

「あ、雨降ってきたわ。」

このままじゃいけないのでとりあえず近くに屋根のある場所を探す。

「あ、ここなら。」

見ると人が2人ほど入りそうな古ボケた木製の建物があった。急いで入ろうとすると、そこに人影が。

「…お地蔵さん?」

お地蔵さんだった。

「すみません、失礼します。」

バチが当たると嫌なので一応礼をしてから入り、石段に座る。

外では雨脚が強まっているようで、バラバラと激しい雨音が聞こえてきた。

お母さんに「帰るの遅くなるかも」と連絡を入れ、

暫くじっとしていると…ザッ…ザッ…という足音と共に人の気配を感じた。もしも変な人だったらどうしようか。曲がりなりにも体は小学生である私はタイムリープ前よりずっと非力であることがわかっている。思わず目を閉じて縮こまると、聞こえてきた声は意外なものだった。

「…翼?」

目を開けると、そこには、花見の時に出会った夏月くんが居た。

「あ、夏月くん。どうも。」

私が端っこに詰めると彼は遠慮なく隣に座ってきた。

「あんたも雨宿り?」

「うん。」

「何してたの?」

「本を借りに行ってた。…濡れないように持ってくるの大変だったよ。」

「ふーん。」

雷が鳴る。

一瞬、彼が震えたように思えた。

「どうしたの?」

「別に。」

雷が落ちた。

声こそ出さないが彼はわかりやすく驚いたようだ

「もしかして怖い?」

「…」

彼は黙っている。

また空が光った。

「サンダーボルトっ!」

雷は落ちなかった。

「…何それ」

「雷魔法だよ。」

「何やってんの…」

ふと彼の顔を見ると少し安心した様子だった。なんだよ、雷怖いんじゃねえか。

「…そういえばさ、どんな本借りたの?」

「怪談喫茶。」

「あ、それ昨日読んだやつなんだよね。面白いよね。」

「うん。」

「そういえば、本で思い出したけど友達が占いの本借りてたなぁ」

「占い?」

「そ。星占い。ちなみに私はてんびん座。そっちは何座?」

「山羊座。」

「山羊座なんだ。」

山羊座と言えば本には「うまくいけばベストパートナーになれる」的なことが書いてあった気がする。

「てんびん座とは相性悪いって書いてあったけど…」

「そうなんだ。」

「うまくいけばベストパートナーになれちゃうみたいなこと書いてあった気がする」

『…そう。』

雨脚は強くなる一方…これ今日帰れるんだろうか。

「雨強いね」

「絶対川の近く行くなよ。」

「行かないよ。」

「君なら行きかねない、だから言ってるんだけど。」

「さすがにそんな不謹慎なことしないよ」

強くなる雨音の中、夏月くんは暫く考えると言った。

「…ここ、川の近くだから避難したほうがいい。ついてきて。」

そういうと彼は私の腕を掴んだ。

「え。あ。ちょっと!」

傘もささずに彼に手を引かれながら走っているうちにいつの間にか雨は止んでいた。

そして空には一筋の七色の光が。

「…これって…」

「虹だ!ねえ、写真撮ろ!」

「…別にいいけど。」

とりあえず2人して写真を撮った。そしてふと思いついた。

「あ、そうだ。夏月くんピースして前に手伸ばして。」

「…こう…?」

夏月は虹に向かってピースを伸ばした

「オッケーじゃあ私もピースして…」

虹と共に2つのピースがカメラに映り込む。そして…

パシャッとシャッターを切った。

早速撮った写真を確認する。

「あ、うんうん。うまくできてる!ねえ、これグループに送っていい?」

「別に顔写ってないからいいけど。」

「ありがと!よし、これ送って…匂わせ画像ってやつだ…あいつらどんな反応するかな…?」

画像を送ろうとした所で夏月が言った。

「…あのさ。」

「どうしたの?」

「僕にも写真送ってほしいんだけど。」

「あ、うん。いいよ。連絡先交換しよ。」

こうして私は夏月くんと連絡先を交換し、写真を送った。

その後他愛もない会話をしながら公園に戻り

「じゃ、またどっかで会えるといいね。」

「…いつでも会えるでしょ。連絡先交換したんだから。」

「それもそっか。」

そう言って別れ、それぞれ家に帰った。

「ただいま〜。」

「お帰り。雨酷かったでしょう?傘持ってこうとも思ったんだけど大丈夫だった?」

「んー雨宿りしてたら知り合いに会った。」

「誰?」

「お母さんは知らない子」

「そう。ホットカルピス入れたから飲みな。」

「あ、ありがとう。」

体と心があったまるぅ〜

「あ、そうだ。チャット確認しよ。…うわ…めっちゃ通知来てるし…。」

秘密基地グループの通知の数がえげつなかった。

美音『雨降ってきましたけど大丈夫ですか?』

太陽『あの、返信ください』

優李『見るの忘れてる説あるなこれ』

美音『でもこのままだと先輩のことだから川の近くとか行きそう』

太陽『あり得る』

優李『先輩死んでないなら返事くださいあとマカロン今回成功しました』

美音『マカロン成功したんだ』

太陽『今の状況で言うか…?』

美音『30分経ったけどまだ返信無い』

太陽『スマホ忘れてったか…或いは充電切れとか…?』

優李『あ、充電切れだったら仕方ないかも』

美音『多分充電終わったら先輩通知の多さでびっくりするんじゃない?』

優李『あり得る』

美音『今外虹かかってる』

太陽『ホントだ』

優李『先輩も今頃虹見てはしゃいでるかな』

美音『写真撮ってたりするかも』

太陽『それより先にチャットの通知見てほしいけどな』

優李『ほんとそれ』

翼は通知を見たあと例の画像を送信した。

翼『ごめん今チャット見た。』

美音『あ、やっぱ虹見てたんですね。』

翼『いやーごめんね。公園行って遊んでたタイミングで雨降ってきたからしばらく雨宿りしてたわ』

優李『みんな心配してましたよ』

翼『ごめんごめん。あとマカロン成功おめでとう』

優李からマカロンの画像が送られてきた

翼『プロじゃん。』

美音『さすが』

太陽『店できるんじゃない?』

優李『みんなありがと』

太陽『てか、ピースしてる画像あれもう一つの手誰ですか?』

翼『一緒に雨宿りしてた人に手だけ写ってもらった』

美音『男の子ですか?女の子ですか?』

翼『男』

優李『ってことは男子と2人きりで雨宿りしてたって感じですか?』

翼『いやぁお地蔵さんがいる結構狭い小屋で男子と雨宿りするなんて経験滅多にないからなぁ。』

翼『連絡先交換したし。』

翼『あとさ、彼、山羊座なんだって。』

優李『恋愛フラグ立ちまくりじゃないですか』

翼『うーん…そうなのか?』

美音『まあそれにしても、翼先輩が無事でよかったですよ。』

太陽『みんなで「先輩のことだから無闇に川とかに近づくんじゃないか」とか言ってたんで』

翼『それあいつも言ってたな。』

美音『え?』

翼『いや、花見でみんながいないタイミングで知り合ってから結構経ってるんだけどさ?あ、そうそう。にわかには信じ難い話なんだけどさ。』

太陽『何ですか?』

翼『そいつ、タイムリープ前部活でトロンボーン吹いてたクラスメートと同姓同名なんだよね。』

美音『空野夏月先輩?』

翼『そ。にわかには信じ難い話でしょ?でも妙に大人びてるし…』

太陽『…その人も未来人なのでは?』

優李『もしかしたら私達の事も知ってるかも』

翼『あ、じゃあ今度みんなで会う?ほら、友達紹介するってのも兼ねて』

美音『良いですけどどこで会います?』

翼『あの公園かなぁ…』

このとき翼は知らなかった。夏月くんと予期せずまた会うことになるということを…。

太陽『ところで先輩宿題やりました?』

翼『やべ。』

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