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未来人達の夏祭り

翼たちがお祭りに行くようです

私の名前は雲井翼。ひょんなことからタイムリープして小学生になってしまった女子高校生。さてさて今日は私もおめかしをしている。なんてったって今日は夏祭り。私達が住む地域には西天神社という神社がある。そして秘密基地のメンバーとそこを起点とした夏祭りに行くことになった。

「…おかしくないかな?」

ほかの人が浴衣で来るかはさておき私は浴衣で行くことにした。ついでに簪も指した。あとお母さんの化粧品パクってメイクもした。

白地に緑色の葉っぱの模様が特徴的な浴衣に、これまた白い花飾りが付いた簪を合わせた。ちなみに髪は下の方で括った。お団子頭よりもこっちの方が落ち着いてるしうなじが見えて魅力的だとかなんとかかんとか。ちなみに浴衣に関しては前に着ていたものが合わなくなってしまい、この際だから新しいのを買おうという話になり、田舎に行った時に祖父母が張り切った結果である。浴衣は安くないのに本当に感謝感謝である。尤も向こうはもっと派手なものを勧めたかったらしいが。

…ところで浴衣って右を前にするんだっけ…左を前にするんだっけ。

「ま、いいか。」

実際祭りに着ていく浴衣が左前だろうが右前だろうが今はさほど関係はない。幽霊や死人は右前で着ているとかそんなことは、今の人は気にしないんだから。それより気になるのは…

「浮かないかなぁ…」

まぁ、お祭りなんだから浴衣を着て何が悪いんだという話ではあるが、周りがTシャツやワンピースばかりだったら確実に浮く。タイムリープ前の小学生だった頃の自分ならば気にも留めず浴衣を着るのだろうが、今の私は中身が高校生だ。それに万が一浮いていたら変な噂が立ってまた私の理想の未来から足が遠のいてしまう…気がする。

そんな事を気にしながらも私は待ち合わせ場所である秘密基地に自転車で向かった。

「あ、翼先輩!」

「美音ちゃん、太陽くん、優李ちゃん、来てたんだ〜!」

どうやら先程の心配は杞憂だったようだ。美音は水色の生地にピンクの大ぶりな花柄、優李は黒い生地に薔薇とハートの柄…2人とも見事な浴衣姿である。…それも、レースやフリルが多くて下がスカートになっているタイプのやつ。しかもご丁寧にヘアアクセサリーまで同じ柄のリボンで揃えている。小さい子のみに許される特権というやつだろう…かくいう私もタイムリープ前は白い可愛いタイプのそれを着用していた。前買いに行ったとき祖父母が勧めてきたのがこういう奴なんだけど…この時代、私の年になるともうそういうの許されないんだよなぁ…

「2人とも可愛いねぇ」

「いやぁ…せっかくだから浴衣着たいって言ったら…」

美音が苦笑いしながら言った。

「親が選んでくれたのがこれで…」

優李も苦笑いしながら言った

「「ホントは普通の浴衣が良かったんですけどね。」」

2人は声を揃えて言った。

「似合うんだからいいじゃん」

「良くないですよ。先輩普通の浴衣で良いなぁ…似合ってるし。」

「いや、それ着れるの年齢限られてるぞ?きっと私くらいの年になったら2人とも普通の浴衣着れるよ。」

「それなら良いんですが…」

美音はため息をつきながら言った。

「あと可愛い子ってのは何着ても許されるもんだよ。それこそ全身タイツでも。」

「一理あるけどそれは言い過ぎでは…?」

優李が訝しげに言った。

「そして太陽くんは甚兵衛か。」

「せっかくだからおしゃれしてけって言われました。」

太陽も不満そうにしている。確かに。男子ってそういうのあまり頓着しないよな。それに普段と全然違う服は過ごしづらいし。

「まあまあいいじゃないか。私だって浴衣だし、祭りくらいしかそんな服着る機会ないんだから。」

「それもそうですね。」

「しっつれいしまーす」

太陽と会話をしているところで秘密基地こと廃校の音楽室の外から声が聞こえてきた。蒼である。

「あ、蒼くん…」

「僕もいるんだけど。」

「と夏月くん」

「ついでみたいな扱いになってる…。」

太陽が呆れながら言った。

「みんなおしゃれしてるね〜。」

「でしょ?美音ちゃんと優李ちゃんは可愛いし太陽くんはかっこいいんだよね〜」

「ホントだ!3人とも似合ってるじゃん」

「…」

夏月が驚いた様子で黙って私をじっと見ている

「何?もしかして私おかしかったりするかな?」

「!…別に。」

夏月は目を逸らした。なんだこいつ。

「何?夏月くん浴衣姿に見惚れちゃった?」

うなじ効果が早速想定外の方向で出たか。

「そんなことはない」

茶化す蒼に対して夏月は少し苛ついた様子で答えた。

「ところで、皆こんな格好してるけど何かあるの?」

蒼が質問をしてきた。

「うん。私達これからお祭りに行く予定なんだ。」

「お祭り?」

夏月が反応した。

「そ。近くの神社でお祭りがあるからそれに皆で行こうって話してたんだ。…と言っても昨日決まったんだけど…。」

「僕達もついて行っていい?」

「いいよ!あ、でも財布持ってる?お金ある程度無いと楽しめないかも。」

「あ、それなら持ってるから大丈夫だよ」

「それならいいけど。」

蒼と会話をし、夏月の意思は関係なく2人とも一緒に祭りに行くことになった。

「あ、夏月は大丈夫?」

「別に。問題ないよ。」

問題ないらしい。

「じゃあみんなで行こうか!夏祭り!」

こうして蒼と夏月も一緒に夏祭りに向かうのだった。

「とうちゃーく!」

「沢山屋台出てますね!」

美音は目をキラキラさせながら屋台を見ていた。うんうん、小学1年生はそうでなきゃね。

「普段より割高だけどね。」

夏月、マジレスをするな

「ですね。財布の紐締めないと」

太陽は相変わらず子供らしさがあまりない。

「まあまあ、今日くらい良いじゃん。風物詩みたいなもんだし」

こういう時蒼みたいな人がいると結構安心する。

「ですよね。夏休みももう終わっちゃいますし、今日は無礼講ということで…」

優李も楽しむ気でいるらしい。

「あ、あそこに金魚すくいあった。私行きたいけど皆行く?」

「じゃあ私も行きます!」

私と美音は「一回三百円」と書いてある金魚すくいの屋台に行くことにした。

「すみません。金魚すくい1回やらせてください」

「おう、今は三百円でポイ2回分やることできるけどどうする?」

「せっかくだし私やります。あ、美音はどうする?」

「私もそうします!」

「はい、じゃあ1人三百円ね。あ、取れなくても一匹持ち帰ることができるから。」

「あ、じゃあ私持って帰ろうかな。」

「私は…どうしようかな…親が許してくれるか…」

「もういっそのこと秘密基地に置く?」

「いやほかの人が来た時に…」

「それもそうだね。」

「…やっぱ私も持って帰ります。」

「うん、じゃあこのポイで金魚すくえたらそれあげるね。すくえなくても一匹持って帰れるから。」

そう言われ、薄いポイを渡される。よし、やってやろうじゃねえか。

「…うーん…どうすくいましょう…」

「………」

「…あの、先輩?」

「…………よし今だ!」

そう言って私は勢いよく空気を吸おうと顔を出した黒いデメキンをすくった。

「…やった!」

「…今のどうやったんですか?」

「こうやってさっとやるんだよ。それで1回すくったことあるんだよ。デメキン。」

タイムリープ前の話なのだが。

「あ、じゃあ私も…」

そう言って美音も真似しようとしたが…

「あ…」

「頭を出したときにやるんだよ。その分水のない所に出てくるし、金魚を乗せてる時間短くなる。」

「なるほど。じゃあ次そうやります。」

「じゃあ私も二匹目を…」

そう言ってすくおうとするとポイが破けてしまった。

「はい、じゃあ2枚目ね。」

「今度こそ…」

次は白い大きい金魚を狙う。

「………」

「…今だ!」

そう言ってすくおうとしたが…

「…え?」

頭からいったことにより一発でポイが破けてしまった…。

「あ!私すくえました!赤いやつですけど」

一方で美音はすくえたらしい。

「はい、二人ともおめでとう。」

そう言って二人してすくった金魚をもらった。

「デメキンゲット〜」

「良かったじゃん。」

夏月は相変わらずドライだなあ…。

「ねえ太陽見て。すくえた。」

「美音にしてはすごいじゃん。」

太陽もドライである。

「次何やろうかな…?」

「あ、あっちに射的あるよ。」

蒼が向こうの屋台を指さしていった。

「じゃあやってみよっか!」

そう言って蒼と一緒に屋台のおじさんに声をかけた。

「すみません、お願いします。そうだなぁ…」

「僕こういうの得意なんだよね〜。」

お互いに三百円払って5個弾をもらい景品をじっくり吟味する。あ、あそこにあるハート型の指輪可愛いな。

指輪は透明なキラキラしたいかにも女の子が好きそうなケースに入っており、指輪のトップには透明のアクリルストーンが付いており、角度によって色んな色に輝くようにカットされている。

「これにしよ!」

そう言うと私は狙いを定めて打った。…が。見事に外した。

「お、やった。アカネコのカードゲット〜!」

一方で蒼は最近流行りのトレーディングカードをゲットしたらしい。

「…何度やってもできない。おかしいな、なんでだろう」

とうとう弾は残り1個になってしまった。

その一方で蒼は…

「やったー景品2個目」

今度は同じキャラの貯金箱をゲットしていた…。

「今度こそ…!」

私はそう言ってガンナーのように銃を構えた。銃とは言っているが気分はさながらウィリアム・テル。頭(というか棚)の上のりんご(というかリング)を射なければ自分も命はないかもしれない…なんてことはないが。それでも撃ち落としたい。うん。何としてでもあのダイヤモンド(パチモン)を得なければ!

「ここだ!」

そう言って私は引き金を引いた。

弾は遠くまで飛び、パチンと音を立てて当たった。

「やった。」

が。

「え?」

「惜しかったねぇ」

景品は少し後ろに動いただけで、落ちなかった。

「…」

呆気にとられていると、

「じゃあ次、僕がやってもいい?」

後ろから夏月が割り込んで来た。

何だお前。こっちは今弾5個使ったにも関わらず景品一個も取れなくて落ち込んでるんだぞ。人の傷口に塩でも塗り込みに来たのか。

こいつもどうせ今流行りの『妖かし☆クロック』のトレカ目当てなんだろうよ。そうして本来高いカードを安く手に入れて喜んでりゃいいさ。祭りの景品になるくらいだからどうせ数年後にはメリコリで同じ物が安く売られてるだろうがな!

そう思いながら顔を上げると夏月は真剣な顔で狙いを定めていた。こちらからは何を狙っているのか分かりづらいがきっと彼なりに欲しいものを狙っているのだろう。屋台に並ぶものは大半が子供向けだというのに未来人がそんなんでいいのか。私が言えたことじゃないが。

ダァン!と音を立てて弾が発射される。そしてその弾は…

「…え?」

見事に私がさっき狙っていた指輪に命中し…

「…マジで…?」

ゴトッ…と音を立てて指輪の入った箱が落下した。

「お兄ちゃん敵取ったね〜!おめでとう。良かったねお嬢ちゃん」

「…」

いや、私にも何がなんだか分からないんだけど。てかこいつ…一発で…?もはやマウントが取りたいのかいい男を演じたいのか分からん。

その後も夏月は手際よく景品を落とした。それが光るタイプのリボンカチューシャであったり、さっきも触れた『妖かし★クロック』のレアカードだったり。中には有名なキャラが描かれている腕時計もあった気がする。もはや何が狙いたいんだ。こいつ。

「いやぁまいったよ。君凄いね。」

「これでも未来人なので。」

「未来人にしてもすごいよ。お嬢ちゃんいい友達持ったね。」

「あはは…」

内心「友達じゃねえよ」と思いつつ愛想笑いを浮かべ、私達は屋台から離れた。すると…

「ん。」

夏月が箱を差し出してきた。

「へ?」

「これ…別に要らないから。」

じゃあ何で取ったんだよ。私への同情か?

「…一応…受け取るけど。」

そう言って私は箱を受け取り、指輪を取り出して嵌めた。…うーん…小指にしては緩いし…かと言って中指、人差し指だときつい…

「あ。」

薬指にジャストフィットしたのではめておくことにした。

「…綺麗だなぁ。」

子供心に見ればアクリルストーンも宝石に見えるものだ。というか実際、子供からするとアクリルストーンが宝石なのだ。

「取ってくれてありがとね。」

私が小さく言うと、夏月も「別に。」と返した。

「夏月、やるね。」

蒼が茶化した。

「取りたくて取ったわけじゃないから。」

そう言う夏月に対し、蒼は「素直じゃないなぁ」と零したのだった。

「…とはいえ、夏月先輩も夏月先輩だけどさ…」

3人の様子を見ていた優李が言った

「うん、翼先輩、あれじゃ既婚者って意味になるよね。」

太陽が額を押さえて言った

「え、翼先輩結婚したの!?」

美音が驚く

「そんなわけないだろ。指輪を薬指に付けると結婚してますよ〜とか婚約してますよ〜って意味になるってだけ。まぁ、翼先輩の場合サイズとかそういう都合だろうけど」

「なるほど!」

美音が太陽の説明に納得したように手を叩いた。

「てか夏月くん、その光るカチューシャどうするの?」

「…」

夏月は無言で光るカチューシャを見つめた。

「いや自分でも困ってるし…」

「先輩つけたら?」

美音に提案された。…まぁ…いいか。今日お祭りだし

「夏月くんそれでいい?」

「別にいいよ。」

そう言われ、カチューシャを受け取るとスイッチを入れて光らせてからつけてみた。

「似合う?」

「一気にお祭り感出ましたね。」

優李が反応した。

「子供らしくてそっちの方が良いと思いますよ。」

太陽も言った。

折角簪指してきたのにお前らと来たら…

「うんうん。良かったね夏月」

「別に。」

この二人は相変わらずこんな感じだ。

その後もくじ引きをやったり…

「あ、俺当たり出ました。」

「ゲーム機?」

「いやそんなわけないじゃないですか。せっかくなんで妖かし☆クロックのポスターにしました」

「流行ってるねぇ。じゃあ私も…あ、ポスター当たった。…ドルカツのやつにしようかな。」

お面を買ったり…

「私狐にしよ。」

「あ、俺もそうする。」

「美音と太陽そうするなら私も」

「私はあえての般若にしようかな。」

「翼先輩それ怖くないですか?」

「目印になっていいでしょ?」

「いいね。じゃあ僕はノラ左衛門のやつにしよ」

「揃いも揃って何やってんの?」

「夏月くんは付けないの?」

「…じゃあ般若のやつで。」

ヨーヨーを釣ったり…

「あ、透明なやつ釣れた!」

「私ちぎれました…」

「根本を持つんだよ。美音ちゃん私のおまけあげよっか?」

「いいんですか?」

「うん」

まあ、色々と楽しい時間を過ごしたのだが…

「…」

「…」

美音と優李が先ほどからめちゃくちゃ神妙な面持ちで黙っている。

「美音ちゃん、優李ちゃん、もしかして…」

「足めちゃくちゃ痛い…。」

「同じく…」

「まぁ、そうなるよね。」

2人が履いているのは草履でこそないがかかとが少し高く、ミュールタイプになっているビニール製のサンダルである。そしてこういうサンダルはデザインこそ可愛いが、悲しいかな。つま先を締め付けるタイプなのだ。私はそれよりかは歩きやすそうなものを買ってもらったし、大概夏はこういうサンダルで過ごしていたので痛みはあまり無い…が、恐らく2人の奴は新品だろう…そしてビニール製である分締め付けもきついし痛いと思う。かくいう私もローファーで同じ経験をした。履きなれない靴は長時間履くもんではない。

「優李ちゃん大丈夫?」

「蒼先輩すみません…」

「これ、ばんそーこー付けときな。あとワセリン。他にも靴ずれしやすいところに塗っとくといいよ」

蒼、意外と女子力高いんだな。そんなの持ち歩いてるのか。

「ありがとうございます。」

「美音ちゃんも。」

「ありがとうございます。」

「てか、美音歩ける?」

「ギリ大丈夫」

「ギリじゃダメだろ。とりあえずどっか休める場所探そ。すみません、ちょっと俺ら休む場所探すんで抜けます。」

流石は太陽。察しがいい。

「了解。じゃあ休む場所決まったら合流するから連絡ちょうだいね。」

「分かりました。」

「ところで優李ちゃんは大丈夫?」

「ええ、まあ。」

「いざとなったら頑張っておんぶするから言ってね」

「それは大丈夫です」

「辛辣」

「あ、どうせなら皆の分なんかちょっとしたおやつとか買ってかない?」

蒼が提案した。

「あ、それいいね!」

「何買う?ちなみに私はりんご飴がいいと思う。」

「綿あめ」

「あんず飴」

「飴多すぎ」

私と蒼と優李の提案に夏月がつっこんだ。

「じゃあ夏月くんはどんなのがいいの?」

「持ち運びに苦戦しないもの」

「ふわっとしすぎだよ」

「絶対りんご飴がいいよー!綿飴だとかさばるし途中で飽きるし持ってる途中に萎むじゃん」

「りんご飴元中で飽きるし飴が溶けて手汚れるじゃん!」

「揉めてる時間ないですよ!」

言い合う私と蒼を優李がいさめて、夏月が冷静に言った。

「ベビーカステラがいいと思う。」

「あ、確かに。持ち運びやすいもんね。」

それに割り勘もしやすい。

「えー?じゃあチュロスは?溶ける心配ないし」

「一本一本が高い。却下。」

「じゃあカキ氷」

「持ってくうちに溶ける。却下。」

「ちぇー」

蒼の意見を次から次へと却下していく夏月…容赦ないなぁ

「しょっぱい系として唐揚げとかもあったほうがいいかな?」

「あ、それとフライドポテトも買おうよ」

「おっけーじゃあ決まりだね。」

とりあえず神社に向かいながら色々買った。幸い、混み始めるギリギリ前だったのであまり時間はかからなかった。

そして神社の石段についた。

「お待たせ」

「結構時間かかりましたね。」

「どうせならそろそろ小腹が空くかと思って。これ、買ってきたわ」

「わざわざどうも。あ、かかっちゃったお金払いますね。」

「うん。大体2人合わせて300円くらいでいいよ割り勘だから」

小学生はまだ奢り奢られが禁止である。こんなとこ先生に見つかったらどんなことになるか分からない。

「ベビーカステラですか…」

「分けやすいでしょ?夏月が思いついたんだ。流石だよね」

「別に。」

夏月がぷいとそっぽを向いた。

「なんか心なしか耳赤いような気がするんですが」

美音が夏月を見て言った。

「マジで?」

「見るな。」

私が聞き返して見ようとすると夏月がちょっと怒った。

「そういえば、美音ちゃんもう大丈夫?」

「はい!ちょっと休んだらだいぶマシになりました。」

「良かった良かった」

「太陽ホントありがとね。」

「俺はただ美音が無理してるからほっとけないと思っただけだし。」

「なんだ二人とも恋愛フラグか」

「「そんなんじゃないです」」

「お似合いだと思うよ」

「うん」

「蒼先輩に夏月先輩まで…」

美音と太陽が完全に茶化されている。

「…にしても、もうちょっとしたら夜ご飯の時間だよね…」

「ですね。」

「これは提案なんだけどさ…今日、秘密基地にいくつか屋台の食べ物テイクアウトして食べない?」

私が提案すると、みんなが口々に言った。

「大丈夫なんでしょうか…?私はいいですけど…」

「私は大丈夫です。皆許可取れそうですか?」

「僕は大丈夫だよ」

「僕も。」

美音と蒼と夏月は大丈夫らしい

「私も大丈夫だそうです。親2人とも飲んでくるそうなので」

世話が大変なやつだ。

「優李ちゃんも大丈夫ね。太陽は?」

「許可出ました。大丈夫だそうです。」

「じゃあとりあえず残りの予算で各々買いたい物とか皆で分けられるもの買って持ち寄ろっか!後で秘密基地集合ね!」

「はい!」

その後、お好み焼き、焼きそば、フランクフルト、串焼き、ドネルケバブの中身(おつまみ)、じゃがバター等が買われた。

秘密基地に全員集まり、小学生、もとい未来人達の大宴会が始まった。

「「「かんぱーい!」」」

「いやぁ今日楽しかったよね!あ、この焼きそば美味しい」

「串焼きも美味しいです」

「そういえば先輩このケバブの中身どうやって注文したんですか?」

「あーそれね、お店探して「すみません、おつまみケバブください」って言ったら買えた」

「なるほど…」

「それにしても結局りんご飴と綿飴買えたね」

「チョコバナナも2本もらえたし。」

帰りがけ、じゃんけんに勝った結果である

「そういえば、じゃがバターに関しては完全にフィーリングで調味料選んじゃったけど大丈夫?」

「全然大丈夫です。」

「次買うときはキムチとか入れてもいいと思います」

「ま、あのお祭り2日続けてやってるからね」

「明日は先輩どうするんですか?」

「家族で回るよ」

「私もです!」

「私もそうです」

「俺もそうする予定ですね」

秘密基地メンバーはそうするらしい。

「僕達は遠いからね。」

「まぁ、誘ってOKだったらまた会えるかもね。」

「だね。」

しばらくの間沈黙が訪れる。そういえば私達は未来人であり、意識だけとはいえ未来から来ている。故にいつ未来に戻るのか、分からない。

「来年も来れるといいなぁ…」

「きっと来れますよ。」

美音が言った

「その時は私もご一緒しますね。」

優李も言う。

「先輩どうせ未来でも実家暮らしでしょうし。」

太陽は相変わらず容赦がない。

「太陽くん容赦ないなぁ。てか、高校生は大概実家暮らしだよ。」

「それに、俺達ほぼ大人みたいなもんだからもし開催されなくてもその時は遠くのお祭りに行けばいい。」

蒼、いいこと言うじゃん

「うん。連絡先持ってるし。」

最後に夏月が言った。

「…だね。」

その後、しばらく他愛のない話をし、宴会は19時くらいにお開きになった。

帰り道、「少し寄り道してく」と言ったら夏月も着いてきた。

近くのコンビニでシェアするタイプのアイスを買って、近くの公園のベンチに座り、アイスを2つに割り、片方を夏月に渡した。

夏と言えども7時を過ぎれば外は薄暗くなっていく。夏の夜のどことなく生温い気温と、涼しい風の中、私達はしばらく黙って隣に座っていた。そしてふとある事を思った私は言った。

「…今やってること、未来に影響したりするのかなぁ…」

「…その時になってみないと分からない。」

しばらく間をおいて夏月が答えた。

「でも…」

「…少なくとも、今やってることは無駄じゃないと思う。」

夏月があまりに真剣な顔で言うので思わず笑ってしまった。

「ぷっ…あはは!」

「何が面白いの?」

「だって、あまりに真剣に言うからさ!普段なら「そんなくだらないことでいちいち悩むことないんじゃない?」とか言いそうなのに」

夏月からの言葉が予想以上に温かかったからなのか、はたまた救われたのか。私は涙を流しながら笑ってしまっていた。

「僕だって君が真剣に悩んでるなら真剣に応えるよ。」

「…ありがとうね。」

「…別に。」

私がお礼を言うと夏月はそう言った。

「その別にってやつ口癖なの?」

「悪い?」

「いや、悪くないけどさ。」

「…」

「…」

しばらくの間、沈黙が訪れる。少し遠くにまだ続いている祭りの喧騒と、夏の終わりを告げるヒグラシと、コオロギの鳴き声が少し聞こえた。そしてすっかり透明になったプラスチック容器を吸おうとしてアイスが終わったことに気がついた。向こうのアイスも終わってしまったようだ

「…帰ろっか!」

「…うん。」

そう言って2人で自転車を飛ばして帰る。

その後私は、指定した時間よりも帰るのが遅れてしまった影響で親にちょっと怒られたのはまた別の話である。

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