第97話 極点の氷、隼を救う『最弱』の背中
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突如現れた『水底の蛇』の成体。その巨体から放たれる汚濁のブレスが、岩場をドロドロに溶かしてゆきます。
パニックに陥った若手たちを安全圏へ放り投げたカノン。
そして、前衛で剣を構えるクレアを支えるのは、セインの精密な演算と、ケットルの職人技。
最後を締めくくるのは……やはり、あの「食いしん坊な魔導士」の、手加減なしの一撃でした!
巨大な蛇が鎌首をもたげ、汚濁に満ちた咆哮を上げた。
その衝撃波だけで、『銀翼の隼』の金髪リーダーは持っていた剣を落とし、ガタガタと震えている。
「……ひっ、……あ、あ……あんなの……勝てるわけない……っ!」
その情けない叫びを背に、カノンが銀靴の踵を鳴らして着地した。
「……情けないね。……あたいだって……怖いよ。……でも、……止まったら……そこで終わり。……一秒、……あれば……何だって……できるんだから!」
カノンが再び跳ぶ。
蛇が放った粘着質の魔力弾が彼女を襲うが、空中でピタリと静止。
物理法則を置き去りにしたその一瞬の「居座り」で、弾丸をスカすと、彼女は蛇の側頭部を思い切り蹴りつけた。
「……論理的に見て、……攻撃の……起点は……そこです!……ケットル、……環境を……書き換えます、……魔力伝導率を……最大に!」
セインが解析端末を叩き、地面に複雑な幾何学模様を投影した。
環境上書き――。
ハーフエルフの彼女が操るその術式は、戦場そのものを「リトル・リンクに有利な法則」へと変えてゆく。
「えへへ、任せな!……洗浄砲、……出力全開!……魔力の通り道、……ピカピカにしてあげるよ!」
ケットルが洗浄砲のレバーを引き絞った。
放たれた高圧の聖水が、蛇の鱗にこびりついた汚濁を剥ぎ取り、ミルの魔法が最も通りやすい「無防備な隙間」を作り出す。
蛇が苦悶の声を上げ、再びブレスを吐こうと大きく口を開けた。
「……ん。……お待たせ。……お腹……空きすぎて、……ちょっと……手が……滑るかも」
ミルが、静かに歩み出た。
その手にある『もう壊さない杖』の先端には、周囲の熱をすべて奪い去るような、絶対零度の蒼い光が凝縮されている。
「……『リトル・ガーネット・フロスト』……臨界点……突破。……壊れない、……私の、……想い。……凍れ。……芯まで、……全部」
放たれたのは、細く、けれどあまりにも鋭い氷の奔流だった。
それは蛇の開いた口から体内へと突き刺さり、一瞬で巨体の中を駆け巡る。
バキバキバキッ……!!
轟音と共に、巨大な『水底の蛇』が、内側から美しい氷の結晶へと変わってゆく。
咆哮も、汚濁も、すべてが氷の沈黙の中に封じ込められた。
「……ふぅ。……これ、……食べられないの、……残念。……帰って、……レバー。……十本、……食べる。……絶対に」
ミルが杖を下ろし、無表情のまま、ぐう、と小さくお腹を鳴らした。
背後で見ていた『銀翼の隼』の面々は、もはや言葉も出ないようだった。
自分たちが「腰抜け」と呼んだ彼女たちの背中は、どんな名誉ある英雄よりも、遥かに高く、そして頼もしく見えていた。
リトル・リンク、今日も(後輩の戦意を物理的に凍らせながら)ちょっとだけ成長中。
第97話をお読みいただき、ありがとうございました。
成体との戦い、ついに決着!
カノンの「止まらない勇気」と、ミルの「容赦ない氷結」。
自分たちの家を守るための戦いを通じて、彼女たちの連携はもはや「最弱」とは呼べない次元に達しています。
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次回、第98話。
勝負を終えた両パーティ。
プライドを砕かれた隼たちに、クレアが掛けた意外な「言葉」とは?
お楽しみに!
次は、戦いの後の清算を描く第98話に進めてよろしいでしょうか?




