第96話 砕ける静寂、再来の『水底の蛇』
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圧倒的な連携で『銀翼の隼』を黙らせたリトル・リンク。
勝負は決したかに見えましたが、ミルの放った強大な魔力に引き寄せられるように、地下深くから「巨大な影」が這い上がってきます。
それは、かつて退治したはずの魔物の、さらに深淵に潜んでいた親玉でした。
腰を抜かす若手たちを背に、最弱パーティが再び(今度は本当のピンチに、溜息をつきながら)立ち上がります!
「……ふぅ。……二十体、……完了。……論理的に、……私たちの……勝利です」
セインが、冷たく凍りついた魔物の山を見下ろし、眼鏡の位置を直した。
その背後では、『銀翼の隼』の面々が、自分たちの剣を握る手さえ忘れたかのように固まっている。
「な、なんだよ今の……。魔法一発で、全部凍らせたのか……?」
金髪のリーダーが、震える声で零した。
彼らが必死に追いかけ回していた魔物を、ミルはただ杖を向けただけで「静止した彫像」に変えてしまったのだ。
「えへへ、あたいに言わせれば、あの子たちの動きは穴だらけだったよ! ……あ、でも、あんまり落ち込まないで。あたいのパチンコの調整も、今日は絶好調だったからさ!」
ケットルが、フォローしているのか追い打ちをかけているのか分からない可愛い笑顔で笑った。
ドワーフの少女らしい無邪気な残酷さが、若手たちのプライドをさらに粉々に砕いてゆく。
――だが、その勝利の余韻は、長くは続かなかった。
ゴゴゴゴ……ッ!!
足元の岩場が、不気味に脈動し始めた。
ミルの『リトル・ガーネット』によって急激に冷やされた大気が、地下から噴き出す熱い汚濁と混ざり合い、真っ白な霧が発生する。
「……ん。……下、……嫌な感じ。……大きな、……レバー、……起きた」
ミルが、杖の先端を地面に突き立てた。
無表情のまま、彼女の瞳に鋭い警戒の光が宿る。
「……論理的に見て、……異常事態です。……魔力反応、……先ほどの……十倍……いえ、二十倍以上! ……地下の空洞に……潜んでいた……『水底の蛇』の……成体が……反応しています!」
セインの叫びと同時に、岩場の中央が大きく爆ぜた。
そこから現れたのは、先ほどまでの幼体とは比較にならない、禍々しい紫色の鱗を持つ巨大な長虫。
かつてリフェルナの浄化槽を汚染していた個体をも凌ぐ、真の「母体」の生き残りだった。
「ひ、ひぃぃっ! デカすぎるだろ、こんなの!」
『銀翼の隼』の若手たちが、腰を抜かして後ずさる。
彼らの振るっていた豪華な剣技など、この巨体の前では爪楊枝ほどの意味もなさない。
「……カノン、……隼の子たちを……連れて……下がって!」
クレアが、剣を抜き放ちながら指示を出す。
「……了解! ……あたい、……重いもの……運ぶの……苦手だけど、……命には代えられないもんね! ……一秒、……頂戴!」
銀色の閃光が走り、カノンがパニックに陥った若手たちの首根っこを掴んで、一瞬で安全圏へと「退避」させた。
銀靴が地面を蹴るたびに、彼女の背中の羽が必死に羽ばたく。
「……ん。……お腹、……空いたから、……怒った。……私の、……レバーを、……邪魔する……悪い蛇」
ミルが、杖を構え直した。
「……セイン、……構造解析、……お願いします。……一撃で、……沈める。……家、……帰って、……ゆっくり……したい」
「……了解しました。……全魔力を……環境上書きに……回します。……ミル、……三秒後に……氷結の臨界点を……上書きします!……ケットル、補助を!」
「任せな! あたいの洗浄砲で、魔力の通り道を洗ってあげるよ!」
リトル・リンク、今日も(後輩の尻拭いをしながら、本当の脅威に、全力で立ち向かって)ちょっとだけ成長中。
第96話をお読みいただき、ありがとうございました。
勝負の後に現れた、真のラスボス。
腰を抜かす生意気な新鋭たちに対し、リトル・リンクの面々は見事な判断力で戦場を掌握しました。
特に、文句を言いながらも若手たちを救い出すカノンの「頼れる姉御(?)」感と、ミルの静かな怒り。
やっぱり彼女たちには、こういう窮地が一番似合います。
「カノンの逃がし方が手慣れてるw」「ミルの怒りの理由がやっぱり食欲で安心した」と思ってくださった方は、ぜひ下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして、応援いただけると励みになります!
次回、第97話。
三位一体の最終奥義!
成体へと進化した『水底の蛇』に対し、リトル・リンクが放つ「一撃」とは?
お楽しみに!




