表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱パーティ、今日もちょっとだけ成長中  作者: beck2026


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

98/225

第98話 氷の沈黙と、銀靴が刻む「本当の価値」

いつも応援ありがとうございます!

巨大な『水底の蛇』の成体を、ミルの圧倒的な氷結魔法で打ち倒したリトル・リンク。

立ち入り禁止区域に静寂が戻る中、腰を抜かして震える『銀翼の隼』の若者たちと、彼女たちは向き合います。

「最弱」と呼ばれながらも、自分たちの居場所を守り抜いた五人。

彼女たちが、生意気な後輩たちに見せた「背中」とは?

自由と誇りをかけた勝負、ついに決着です!

巨躯が完全に凍りつき、リフェルナの湿原に巨大な氷の彫像が完成した。

 あまりに圧倒的な魔力の余波に、周囲の泥濘さえも白く霜を纏い、しんと静まり返っている。

「……ふぅ。……演算終了。……論理的に見て、……完全勝利です。……成体の魔石回収、……忘れないでくださいね」

 セインが、熱を持った解析端末っをパタンと閉じ、眼鏡を指で押し上げた。

 環境上書きという大魔術を、一分の狂いもなく維持し続けた彼女の額には、薄っすらと汗が浮かんでいる。

 ハーフエルフの理知的な瞳は、勝利の余韻に浸るよりも先に、すでに次の「効率的な撤収作業」へと向けられていた。

「えへへ、あたいの洗浄砲も空っぽだよ! でも、あの蛇の鱗、あんなに綺麗に剥がれるなんて思わなかったな。……あ、でも、あの子たち……大丈夫かな?」

 ケットルが、パチンコを大きな背負い袋にしまいながら、少し離れた場所でへたり込んでいる『銀翼の隼』の面々を指差した。

 ドワーフの可愛い女の子らしい、純粋で真っ直ぐな心配の眼差し。

 だが、その視線の先で、金髪のリーダーは自分の震える拳を見つめたまま、一言も発することができずにいた。

「……ひっ、……あ、……あんなの……。……俺たちが、……束になっても……傷一つ……つけられなかった相手を……」

 絶望と、自分の慢心に対する恥辱。

 若さゆえに積み上げてきたプライドが、ミルの氷よりも脆く、音を立てて崩れ去っていた。

 自分たちが「腰抜け」と蔑んだ彼女たちは、自分たちが手も足も出なかった怪物を、まるでお掃除でもするかのように片付けてしまったのだ。

「……あたい、……あんたたちのこと、……嫌いじゃないよ」

 カノンが、銀靴を鳴らして彼らの前に立った。

 背中の小さな羽をパタパタと動かし、どこか呆れたような、けれど優しい苦笑いを浮かべている。

「……必死に……上を目指すのは……いいことだと思う。……でも、……誰かの居場所を……奪ってまで……手に入れる『名誉』なんて、……一秒も……持たないよ」

「……っ……」

「……あたいはね、……居場所をなくす怖さを知ってる。……だから、……今のこの家と、……この仲間が……何よりも大事なの。……誰かに……認められるために……戦ってるわけじゃないんだ」

 カノンの言葉に、金髪の少年はガクンと頭を垂れた。

 『一秒間の虚空静止』。

 逃げるためではなく、大切なものを守るためにその場に「居座る」彼女の強さを、彼は身を以て知ったのだ。

「……ん。……カノン、……いいこと、……言った。……ご褒美に、……レバー、……一本、……あげる。……だから、……早く帰る。……お腹、……鳴るの、……限界」

 ミルが、グゥゥ、と今日一番の大きな音を響かせながら、クレアの服の裾を引っ張った。

 『もう壊さない杖』を無造作に肩に担ぎ、彼女の意識はすでにリフェルナの屋台へと飛んでいる。

 吸血鬼の彼女にとって、戦場での手柄よりも、冷めないうちに食べる夕食の方が、遥かに重要な価値を持っているのだ。

「……ふふ、そうだね。……行こうか、みんな。……私たちの『自由』を、……お祝いしなきゃ」

 クレアが剣を鞘に収め、仲間たちに微笑みかける。

 そして、最後にもう一度だけ『銀翼の隼』のリーダーを見つめた。

「……君たちが、本当の意味で『この街を守りたい』と思うなら。……次は勝負じゃなくて、一緒に戦える時を……楽しみにしているね」

 その言葉を背中で聞きながら、五人は夕暮れのリフェルナへと歩き出した。

 名誉も、地位も、他人の評価もいらない。

 ただ、自分たちの足で歩き、仲間と笑い合いながら、温かいご飯を食べる場所があればいい。

 リトル・リンク、今日も(生意気な後輩に背中で語りながら)ちょっとだけ成長中。

第98話をお読みいただき、ありがとうございました。

 生意気だった『銀翼の隼』との因縁に、ひとつの区切りがつきました。

 カノンの「一秒も持たない」というセリフは、かつて居場所を失った彼女の過去を知っていると、より深く心に響きますね。

 自分たちの幸せの形をしっかり持っている彼女たちは、もう誰に惑わされることもありません。

 「カノンの説得力がすごい!」「ミルの腹時計が相変わらず正確w」と思ってくださった方は、ぜひ下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして、応援いただけると励みになります!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ