第93話 宵闇の帰路、一通の封筒に宿る毒
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自由な冒険者としての初仕事を終え、美味しい夕食を楽しみ、心もお腹も満たして帰宅したリトル・リンク。
扉を開けた先に待っていたのは、安らぎだけではありませんでした。
玄関に落ちていた、一通の白い封筒。
そこに記された傲慢な言葉の主は、最近リフェルナで名を上げている、生意気な若手パーティでした。
「自由」を手に入れたはずの彼女たちの前に、再び立ち塞がろうとする新たな影。
最弱パーティ、今夜は少しだけ眠れない夜になりそうです。
「……ふぅ。……お腹、……いっぱい。……明日、……もっと、……稼いで、……レバー、……たくさん……買う」
ミルが、満足げに自分のお腹をさすりながら、玄関の鍵を開けた。
夕暮れの冷たい風を背に、五人は温かな我が家へと滑り込む。
自由になったお祝いの晩餐は、彼女たちの絆をより一層深いものにしていた。
だが、玄関マットの隅に、場違いな白さが落ちているのを最初に見つけたのは、斥候のカノンだった。
「……ん? ……何これ、……手紙?」
カノンが、銀色のブーツの先でそれを軽く突き、警戒しながら拾い上げた。
切手も消印もない。誰かが直接、この家の隙間から差し込んだものだ。
「……論理的に見て、……郵便物の……正規の届け方……ではありません。……中身を……確認する前に、……魔力感知による……走査を……行います」
セインが、眼鏡を光らせながら解析端末を起動した。
環境上書きの応用で手紙の表面を撫でるようにスキャンすると、彼女の眉が不自然に跳ね上がった。
「……罠や……毒の類は、……ありません。……ですが、……この筆跡。……微かに、……見覚えのある……魔力波形です。今日のギルドで、……騒々しく……振る舞っていた……新人たちの……ものですね」
クレアが、意を決して封を切り、中の一枚の便箋を取り出した。
――「リトル・リンクへ。……お前たちが……名誉保守官を……辞めたと……聞いた。……重責から……逃げ出した……腰抜けに、……領主様からの……『贈り物』は……分不相応だ。……近いうちに、……その実力を……測らせてもらう。……『最弱』の……メッキを……剥がしてやるから……覚悟しろ。……新鋭パーティ『銀翼の隼』より」――
書き出しの一文を読んだだけで、クレアの指先が微かに震えた。
それは、実力を過信し、自分たちこそがリフェルナの頂点にふさわしいと信じて疑わない、生意気な若手たちの挑戦状だった。
「……あいつら、……今さら、……何の用……? ……あたい、……ああいう……礼儀知らずな……ガキ、……大嫌いだよ」
カノンが銀靴を鳴らし、低く唸る。
かつて孤独に彷徨っていた彼女にとって、この家と仲間は、何者にも土足で踏み荒らされたくない聖域なのだ。
「……ん。……手紙、……汚い。……この人たち、……嫌い。……リトル・ガーネット、……いつでも、……出せる。……家、……壊させない」
ミルが、『もう壊さない杖』の先端を赤く光らせる。
無表情だが、その瞳には仲間を傷つけようとする者への、静かな怒りが宿っていた。
「……論理的に見て、……彼らの……狙いは……私たちの……地位……および……この拠点です。……名誉保守官の……座を……奪い取り、……領主への……コネクションを……独占する……つもりなのでしょう」
セインが、静かに拳を握りしめる。
「えへへ、あたいに任せな! あたいの職人魂を込めたこの家、指一本触れさせやしないよ!」
ケットルが、パチンコを握りしめて可愛い笑顔で言い放つ。
しかし、その瞳には仲間を守ろうとする、必死の覚悟が宿っていた。
自由を手に入れたはずの五人の家に、再び不穏な影が差し始める。
リトル・リンク、今日も(生意気な新人に家を汚されたくないと思いながら)ちょっとだけ成長中。
第93話をお読みいただき、ありがとうございました。
せっかくの自由な生活に、水を差すような生意気な若手パーティが登場しました。
『銀翼の隼』――自分たちの実力を過信し、リトル・リンクを「腰抜け」と蔑む彼らの言葉が、五人の絆を再び試そうとしています。
「メッキを剥がす」という言葉に込められた、傲慢な響き。
彼女たちの守るべき「居場所」は、果たして守り抜けるのでしょうか。
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