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最弱パーティ、今日もちょっとだけ成長中  作者: beck2026


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92/225

第92話 運河の夕べ、自由と「黄金の串」

いつも応援ありがとうございます!

地下水路での魔物駆除を無事に終え、ギルドから初めての「自由な報酬」を受け取ったリトル・リンク。

泥にまみれた身体を洗い流し、夕暮れのリフェルナを歩く五人の鼻をくすぐったのは、香ばしい肉の焼ける匂いでした。

名誉も義務もない、自分たちで稼いだお金で食べる夕食。

それは、どんな豪華な公邸の晩餐よりも、彼女たちの心を満たしてゆき

リフェルナの夕暮れは、空と運河が溶け合うような深いオレンジ色に染まる。

 地下水路での「スライム・クラブ」討伐報酬を受け取った五人は、ギルドの重い扉を後にした。

 革袋の中でチャリンと鳴る金貨の音。それは、誰から与えられたものでもない、彼女たちが自分たちの腕で、自分たちの自由のために稼いだ「証」だった。

「……ふぅ。……泥、……落ちた。……石鹸、……いい匂い。……お腹、……背中と、……くっつきそう」

 ミルが、濡れた髪を軽く振りながら、鼻をひくつかせた。

 吸血鬼の彼女は、戦闘の疲れよりも空腹が限界に近いらしい。

 『もう壊さない杖』を肩に担ぎ、獲物を探す野獣のような鋭い目(といっても、眠そうなだけだが)で通りを見渡している。

「えへへ、あたいも今日はお腹ペコペコだよ! あ、見て! あそこの屋台、すっごくいい匂いがする!」

 ケットルが、小さな指で運河沿いの賑やかな一角を指差した。

 ドワーフの可愛い女の子らしい、弾けるような笑顔。

 そこには、リフェルナ名物の「水鳥の串焼き」を焼く、香ばしい煙が立ち込めていた。

「……論理的に見て、……あの屋台の行列は、……味の保証を……証明しています。……タンパク質の……補給は、……魔導演算の……回復にも……不可欠ですね」

 セインが眼鏡の位置を直し、冷静な分析を装いながらも、その足取りは心なしか速い。

「……行こう! ……あたい、……今日は奮発しちゃうもんね! ……自分の稼ぎで食べる肉が、……一番美味しいんだから!」

 カノンが銀靴を軽やかに鳴らし、人混みを縫うようにして屋台へ駆け寄った。

 かつて孤独に彷徨っていた彼女にとって、仲間と同じ財布を共有し、笑いながら夕食を選ぶこの時間は、何物にも代えがたい宝物だ。

 焼きたての串から滴る、黄金色の脂。

 リフェルナ特産の香辛料が効いた、ピリッと辛くてジューシーな肉。

「……あ、……これ、……美味しい。……レバーじゃないけど、……合格。……もう一本、……食べていい?」

 ミルが、串を両手に持って幸せそうに頬張る。

「こら、ミル! 一気に頼みすぎだよ! ……でも、本当に美味しいね」

 クレアが苦笑しながら、自分も一本手に取る。

 名誉保守官だった頃の、格式張った食事では味わえなかった、喉を通る熱さと解放感。

 自分たちは今、この街で確かに「生きている」のだと実感させてくれる味だった。

「ガハハ! このタレ、あたいの洗浄砲で……あ、また言っちゃった。えへへ、おばちゃんじゃないもん、女の子だもん」

 ケットルの失言に全員が吹き出し、運河沿いに笑い声が響く。

 自由の身になって、初めて手にしたささやかな報酬。

 それは彼女たちの胃袋を、そしてそれ以上に、寄り添い合う心を温かく満たしてゆく。

 リトル・リンク、今日も(串焼きのタレを銀靴にこぼさないよう気をつけながら)ちょっとだけ成長中。

第92話をお読みいただき、ありがとうございました。

 名誉を返上し、自分たちの足で歩き始めた彼女たちの「最初の晩餐」を描きました。

 豪華な食事もいいですが、やっぱりリトル・リンクには、屋台の煙に包まれながら笑い合っている姿が一番似合っています。

 カノンの孤独な過去が、仲間の笑顔と串焼きの熱さで少しずつ癒やされていく。

 そんな穏やかな時間を感じていただければ幸いです。

 「ミルの食欲が平和を運ぶw」「ケットルのうっかり癖が可愛い」と思ってくださった方は、ぜひ下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして、応援いただけると励みになります!

 次回、第93話。

 平和な食卓に届いた、一通の怪しい手紙。

 送り主は……かつて彼女たちが逃げ出した、あの因縁の相手!?

 お楽しみに!

次は、第93話の「怪しい手紙」の展開に進めてよろしいでしょうか?

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