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最弱パーティ、今日もちょっとだけ成長中  作者: beck2026


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第87話 深淵の母胎、書き換えられる死の聖域

リフェルナ最下層。そこに待ち受けていたのは、街の魔力を汚染し続ける『水底の蛇』の巨大な母体でした。

絶対的な防御を誇る泥の檻に対し、セインが打ち出した策は、空間そのもののルールを書き換える「環境上書き」。

一分間の絶望的な猛攻。

カノンの「空中静止」と「銀靴」が、かつてない極限の回避を見せつけます。

仲間の信じる心と、一秒に懸けた執念が、今、水都の深淵に奇跡の光を灯します!

領主から託された「青い鍵」が、巨大なメインゲートの鍵穴に吸い込まれるように収まった。

 ゴゴゴ、という地響きと共に、数百年閉じられていた重厚な魔導扉が、ゆっくりと左右に分かれる。

 その向こう側に広がっていたのは、リフェルナの美しき運河のイメージを根底から覆す、どす黒い魔力のおりに満ちた巨大な円形空洞だった。

「……いた。……あれ、……大きい。……全部、……食べてる」

 ミルが、杖を構えたまま立ち止まる。

 空洞の中央、リフェルナの全排水が集まる巨大な貯水槽に、それは鎮座していた。

 『水底の蛇』の母体。

 何十本もの太い触手が、街の魔導基幹システムに直接絡みつき、脈動するたびに街の清らかな魔力を、どす黒い「魔力泥」へと変質させて吐き出している。

「ガハハ! こりゃまた、デカいねえ! あたいの洗浄砲一発じゃ、表面の汚れを落とすのが精一杯だよ」

 ケットルが、背負い袋の出力系統を最大に切り替え、洗浄液の予備タンクをすべて開放した。

「……カノン、見てな。……あいつの触手、一本一本が独立して動いてる。……隙を見せたら一瞬で絡め取られるよ」

「……わかってる。……あたいの『空歩の銀靴』と『一秒の静止』、……出し惜しみしないで全部使うよ」

 カノンが、銀色のブーツを鳴らし、前傾姿勢をとる。

 彼女の背中にある、小さく飛べない羽。それが今、周囲の重苦しい魔力圧に反発するように、青白い燐光を放ち始めていた。

「論理的に見て、……通常戦力での撃破は不可能です。……周囲の魔力密度が高すぎて、……私たちの魔法や攻撃は、……着弾前に泥に分解されてしまいます」

 セインが、魔導ブースターの接続端子を、部屋の壁面に露出した管理回路へと直接叩き込んだ。

 彼女の眼鏡の奥で、無数の演算コードが超高速で流れていく。

「……ですが、……この部屋の『定義ルール』を……書き換えてしまえば話は別です。……私が環境を上書きするまで、……一分間。……カノンさん、……おとりをお願いできますか?」

「……一分間だね。……任せなよ! ……借金取りを撒くのは三十分が限界だけど、……怪物相手に一分なら、余裕だよ!」

 カノンが地を蹴った。

 彼女は銀靴で虚空を叩き、空中を二段、三段と跳ね上がる。

 それに応えるように、蛇の母体から数十本の触手が、槍のような鋭さで突き出された。

 シュッ、シュバッ!!

 カノンは空中で身を翻し、紙一重で触手をかわし続ける。

 だが、母体は知性を持っていた。カノンの移動先を網状に包囲し、逃げ場を完全に塞ぐ「死の檻」を構築する。

「……今だ! ……止まれ!!」

 バサァッ!!

 カノンの背中の羽が力強く開き、彼女の身体を虚空に釘付けにする。

 一秒間の絶対静止。

 触手たちがカノンの残像を突き抜けて衝突し、互いに絡まり合う。

 その隙にカノンは再び虚空を蹴り、敵の頭上へとさらに高く舞い上がった。

「……十五秒。……二十秒。……順調です。……ですが、……蛇が怒り始めましたよ」

 セインの冷静な実況が響く。

 蛇の母体が、全身の鱗を逆立て、中心のコアから「魔力泥」の波動を一斉に放った。

 全方位、逃げ場なし。カノンの空中回避だけでは防ぎきれない、広域破壊攻撃。

「……影。……守る。……潜って」

 ミルが、杖を地面に突き刺す。

 カノンの真下の影が大きく広がり、彼女を影の底へと引きずり込んで波動をやり過ごす。

 絶妙な連携。

「……四十秒! ……セイン、まだ!?」

 クレアが『切ない剣』を抜き、カノンに迫る小さな分体を次々と斬り伏せる。

「……九割完了。……古代回路、……接続! ……この空間の汚染係数を、……ゼロに再定義します! ……『広域環境上書き(エリア・オーバーライト)』、……発動!!」

 ドォォォォォン!!

 セインを起点に、青白い術式の幾何学模様が、部屋全体を飲み込むように広がっていった。

 どす黒かった空気が、一瞬にして清冽な水のような青へと塗り替えられる。

 魔力泥を吸って無敵を誇っていた蛇の母体が、浄化された環境に適応できず、苦悶の叫びを上げてのたうち回る。

「ガハハ! 泥の盾が消えちまったな! ……今だ、……クレア、カノン!!」

「……よし、……トドメだよ! ……一秒で止まって、……一瞬で斬る!」

 カノンが空中で静止し、その足を足場にしてクレアがさらに高く跳躍した。

 研ぎ澄まされた『切ない剣』が、剥き出しになった蛇の巨大な核を、一閃。

 リフェルナの心臓部に、浄化の光が満ち溢れた。

 リトル・リンク、今日も(深淵の闇を、論理と機動力で塗り替えて)ちょっとだけ成長中。

第87話をお読みいただき、本当にありがとうございます!

 カノンの「一秒の静止」が、セインの「環境上書き」を支える重要なピースとなる熱い展開、いかがでしたでしょうか。

 「飛べない羽」だからこそ、その場で踏みとどまる力になる……カノンの成長がパーティ全体に勝利をもたらしました。

「カノンの一分間の逃走劇、手に汗握った!」「セインの逆転術式がスカッとする」と思ってくださった方は、ぜひ下の**【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】**にして、評価をいただけますと幸いです!

 皆さまの「星」が、リフェルナの水の輝きを強め、五人の絆をさらに高める魔導エネルギーになります!

 引き続き、応援をよろしくお願いいたします!

 次回、第88話。

 戦い終わって、平和な凱旋。

 ……のはずが、領主から手渡された「本当の報酬」に五人が絶叫!?

 お楽しみに!

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