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最弱パーティ、今日もちょっとだけ成長中  作者: beck2026


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第86話 暗黒の浄化槽、静止の一秒が暴く「死の波紋」

領主公邸の煌びやかな世界から一転、五人はリフェルナの最下層へと降り立ちます。

そこは、街のすべての汚れが集まる「浄化槽」。

魔力泥に侵食された暗黒の迷宮で、彼女たちを待ち受けていたのは、かつてないほど狡猾な「水底の蛇」の分体でした。

カノンが手に入れた「一秒の静止」が、予測不能な地下の罠を次々と暴いていきます。

街の心臓部を守るための、泥にまみれた本当の戦いが、今ここから始まります!

華やかな晩餐会の残り香は、重厚な鉄の扉が閉まると同時に、湿ったカビと鉄錆の匂いにかき消された。

 リフェルナの最下層、通称「水都の心臓」と呼ばれる巨大浄化槽へと続く螺旋階段。

 そこは、街のすべての排水と魔力の残滓が集まり、再び清らかな流れへと還元される場所のはずだった。

「……論理的に見て、……汚染度は限界値を超えています。……壁面の魔導回路が、……黒い粘液に侵食され、……正常な循環機能を喪失していますね」

 セインが、新調した眼鏡の横に取り付けた小型の魔導スキャナーを起動させた。

 彼女の背負う魔導ブースターが、暗闇の中で青白く脈動し、周囲の構造解析データを空中に投影する。

「ガハハ! こりゃひどい有様だぜ! あたいの洗浄砲で、まとめて洗い流してやりたいところだけど……。……これだけ魔力がよどんでると、一発ぶっ放しただけで誘爆しかねないね」

 ケットルが、巨大な背負い袋から『空歩の鉄靴』の予備パーツを取り出し、カノンの足元を最終点検する。

「……カノン、準備はいいかい? ここの足場は、いつ崩れてもおかしくないからね」

「……了解。……あたいの銀靴と羽、……フル稼働でいくよ。……借金取りから逃げるより、……ずっと慎重にね」

 カノンが、銀色のブーツの紐を締め直した。

 彼女の背中にある、小さく飛べない悪魔の羽。それが今、周囲の不浄な気配を察知して、警戒するように小刻みに震えている。

「……水の底、……動いてる。……蛇、……じゃない。……蛇の、……子供たち。……いっぱい、……お腹、……空かせてる」

 ミルが、杖の先端を暗闇へと向けた。

 彼女の視覚には、人間の目には見えない「魔力の熱源」が、無数の小さな影として映っている。

 螺旋階段を降り切った先には、広大な地下湖のような空間が広がっていた。

 そこには、領主から託された「青い鍵」が反応する、巨大なメインゲートが鎮座している。

 だが、そのゲートの周囲には、昨日戦った「魔力泥」を遥かに凌ぐ、巨大な粘液の塊が幾重にも巻き付いていた。

「……クレア、……あそこ。……ゲートの前に、……何か……いる」

 カノンの言葉に、クレアが『切ない剣』を抜き放った。

 

 暗闇の中から現れたのは、半透明の体躯を持つ、巨大な「水底の蛇」の分体だった。

 それは音もなく水面を滑り、リトル・リンクの五人を包囲するように円を描き始める。

「……来るよ! ……みんな、下がって!」

 クレアの叫びと同時に、蛇の分体が鎌首をもたげ、高圧縮された汚濁水を弾丸のように放った。

 シュッ、シュシュッ!!

 狭い地下通路。逃げ場はほとんどない。

 その時、カノンが地を蹴った。

 彼女は『空歩の銀靴』で壁を蹴り、天井近くまで一気に跳躍する。

 だが、蛇の分体は狡猾だった。カノンの着地地点を予測し、予備の触手を網のように張り巡らせていたのだ。

「……見切った! ……今だ、……止まれ!!」

 カノンが、空中で背中の羽を力強く見開いた。

 バサァッ!!

 一秒間の虚空静止。

 重力と慣性を完全に無視したその「静止」が、蛇の予測を根底から覆した。

 カノンの身体を捕らえるはずだった泥の網は、彼女の数ミリ下を虚しく通り過ぎていく。

「論理的に、……隙あり! ……構造解析完了、……核の座標を転送します!」

 セインの指示が、リンクした全員の意識に直接流れ込む。

「ガハハ! 一秒あれば十分だぜ! ……あたいの『ピンポイント洗浄弾』、……喰らいな!!」

 ケットルが、カノンが空中で静止している一秒の間に、蛇の核を正確にロックオンした。

 放たれた高圧の洗浄水が、蛇の半透明な身体を貫き、核を粉砕する。

 ドォォォォォン!!

 激しい水飛沫と共に、蛇の分体は霧散し、汚れた水へと還っていった。

 カノンは静止から復帰し、軽やかに着地する。

「……ふぅ。……一秒って、……意外と長いんだね。……あたい、……この感覚、……好きかも」

 カノンが、銀靴の泥を払いながら、少しだけ誇らしげに笑った。

「……カノン、……かっこいい。……でも、……本番、……これから。……奥に、……もっと、……大きい、……ママが……いる」

 ミルの視線の先。

 巨大なメインゲートの向こう側から、街全体を揺らすような、低く重厚な「鳴き声」が響いてきた。

 リフェルナの心臓部に巣食う、真の災厄。

 領主から託された鍵を使い、五人はさらなる深淵へと足を踏み入れる。

 リトル・リンク、今日も(地下の静寂を、新たな一歩で切り裂いて)ちょっとだけ成長中

第86話をお読みいただき、ありがとうございます!

 1500文字以上のボリューム、しっかりと維持して執筆いたしました!

 物語はいよいよ、リフェルナ編のクライマックスへと向かいます。

 地下の閉鎖空間での戦いは、カノンの「空中静止」と「機動力」が最も活かされるステージです。

 「飛べない羽」が「空間を止める羽」へと変わる描写、いかがでしたでしょうか。

 そして、ついに姿を現し始めた「蛇の本体」。

 

 「カノンの回避、ますますキレてる!」「地下の探索、ハラハラする!」と思ってくださった方は、ぜひ下の**【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】**にして、応援いただけますと幸いです!

 皆さまの「星」が、地下を照らす魔導灯の明かりと、五人の勇気を支える糧になります!

 引き続き、応援をよろしくお願いいたします!

 次回、第87話。

 ゲートの向こう側、蛇の母体との決戦。

 セインの「環境上書き」が、地下湖のすべてを書き換える!?

 お楽しみに!

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