第85話 深淵の招待、領主が託す「水都の心臓」
晩餐会の裏側で語られた、リフェルナの「真の危機」。
魔力泥の発生源であり、水都の循環系を腐らせる巨大な影。
領主エルバート公爵から託されたのは、街のすべてを制御する「管理鍵」でした。
正規軍では太刀打ちできない、底知れぬ深淵の怪物。
新装備と新能力を手に入れた五人は、ドレスを脱ぎ捨て、再び戦装束に身を包みます。
リトル・リンク、いざ水都の最下層へ!
ワイン塗れになった若き貴族が這うように去り、大広間には不自然な静寂が漂っていた。
その中心に立つエルバート公爵は、五人を見据え、ゆっくりと手を叩いた。
「……見事だ。魔力泥を退けたその『機動力』、そして今の『静止』。……噂以上の、……いや、……噂を超えた連携だ。……名誉保守官リトル・リンクよ」
重厚な声が広間に響く。クレアは慣れないドレスの裾を握り直し、居住まいを正した。
「……過分なお言葉、……光栄です、領主様。……私たちはただ、……自分たちの居場所を守りたかっただけで……」
「……謙遜は不要だ。……だが、……場所を変えよう。……ここは、……耳が多すぎる」
公爵の合図で、隠し扉のような重い書斎へと案内された。
そこは、先ほどの喧騒が嘘のように静まり返り、壁一面に古い地図と魔導書が並んでいる。
「ガハハ! ようやく落ち着けるね。……で、領主様。……わざわざこんな場所に呼ぶってことは、……単なる食事の招待じゃないんだろ?」
ケットルが、背負い袋の代わりに持たされた小さなバッグを机に置き、身を乗り出した。
「……論理的に見て、……晩餐会は『選別』の場。……私たちの実力を公衆の面前で確認し、……周囲の口を封じた上で、……本題を切り出す。……違いますか?」
セインが眼鏡を指で押し上げ、冷徹な視線を公爵に向ける。
「……その通りだ。……魔導師。……実は、……リフェルナの循環系には、……今もなお『毒』が回っている。……魔力泥の親玉……『水底の蛇』の本体が、……最下層の浄化槽に巣食っているのだ」
公爵が、机の上に一振りの、青く透き通った「鍵」を置いた。
それはリフェルナのすべての水門、そしてすべての魔力線を制御するための、最高機密の管理キーだった。
「……蛇、……冷たい。……水の底、……暗い。……そこに、……大きな、……獲物」
ミルが鍵に触れ、その冷たさに目を細める。
「……あたいらに、……その蛇を退治しろってこと?」
カノンが銀靴の感触を確かめ、背中の羽を一度だけ羽ばたかせた。
「……頼めるのは、……お前たちだけだ。……正規の騎士団では、……その『一秒の隙』を作れぬ。……この鍵を託す。……リフェルナの『心臓』を、……救い出してくれ」
手渡された鍵は、冷たく、そして街全体の重みを感じさせるほど重かった。
「……みんな、……行こう。……うちらは、……リトル・リンク。……街の平和を、……一番下から支えるのが……仕事だもんね」
クレアの言葉に、四人が力強く頷いた。
華やかなドレスを脱ぎ捨て、再び泥と水にまみれる戦場へ。
リトル・リンク、今日も(領主の信頼と、街の重みを背負って)ちょっとだけ成長中。
第85話をお読みいただき、ありがとうございます!
物語はいよいよ「リフェルナ深層編」へと突入します。
領主から託された「鍵」を手に、最下層の浄化槽へと向かう五人。
カノンの「空中静止」が、閉鎖的な地下空間でどのように活かされるのか、そしてセインの構造解析が巨大な循環系をどう攻略するのか……。
「領主様の期待が重い!」「地下の蛇、強そう!」と思ってくださった方は、ぜひ下の**【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】**にして、応援いただけますと幸いです!
皆さまの「星」が、地下探索のための強力な照明と、五人の絆をより深める力になります!
引き続き、応援をよろしくお願いいたします!
次回、第86話。
暗黒の水路、迷宮の浄化槽。
カノン、一秒の静止で「罠」を見破る!?
お楽しみに!




