第84話 硝子の夜会、冷笑を穿つ回避の一歩
煌びやかな晩餐会。
しかし、そこは魔物との戦いよりも狡猾で、冷酷な「言葉と視線の戦場」でした。
名誉保守官という地位を妬む貴族たちの嫌がらせ。
カノンの羽を侮辱する男に対し、彼女が放ったのは、新装備と覚醒した能力による「完璧な回避」でした。
ドレスを汚すことなく、不遜な貴族を退けた五人。
しかし、現れた領主の眼差しには、単なる賞賛ではない「別の目的」が透けて見えていました。
リフェルナ領主公邸の大広間は、数百の魔導灯が放つ琥珀色の光に満たされていた。
豪奢なシャンデリアの下、着飾った貴族たちが、絹の擦れる音と共に優雅に回遊している。
「……論理的に見て、……周囲の視線の八割は……好奇と軽蔑、……一割が……恐怖、……残りの一割が……ただの食欲です」
セインが、扇子で口元を隠しながら、レンズ越しのデータを囁いた。
「ガハハ! 食欲の十割はあたいらの方だけどね!」
ケットルが、ドレスの裾を気にせず、ローストビーフの山を皿に盛り付けている。
「……これ、……美味しい。……血の、……ゼリー、……最高。……持って、……帰る」
ミルもまた、無表情ながらも両手にグラスを抱え、高級な供物を着実に胃袋へと収めていた。
だが、その平穏は、わざとらしい靴音と共に遮られた。
「おやおや、……これが噂の『名誉保守官』様ですか? ……泥にまみれて戦うのがお似合いな、……野良犬の集まりかと思っていましたが」
現れたのは、派手な金糸の刺繍を施した服を纏った、若き貴族の男だった。彼の背後には、同じように冷笑を浮かべた取り巻きたちが控えている。
「……あ、あの、……うちらは、……領主様に招かれて……」
クレアが、慣れない社交の場で、精一杯の礼儀を保とうと口を開く。
「招かれた? ……ふん、……ただの客寄せパンダだろうに。……おい、……そこの羽付きの。……お前のその、……みすぼらしい羽。……少し見せてみろ。……剥製にすれば、……珍しい飾りになりそうだ」
男が、カノンの背中に向かって、魔力を込めたワイングラスを「わざと」滑らせた。
赤い液体が、カノンのドレスと、隠された羽を汚そうと空を舞う。
――瞬間。
パァンッ!!
周囲に、乾いた音が響いた。
ワインは、カノンの身体に触れる直前、空中の「見えない壁」に当たったかのように、激しく弾け飛んだ。
「……悪いけど、……あたいの羽は、……売り物じゃないんだよね」
カノンが、銀靴の踵で床を鳴らし、不敵に笑う。
彼女は、銀靴の魔力と一秒間の空中静止を、床に足をつけたまま「一瞬だけ」発動させた。
空間を固定するその力が、ワインの慣性を完全に殺し、逆に男の方へと跳ね返らせたのだ。
「ぐわっ!? ……な、……なんだ……!?」
真っ赤なワインを頭から被った貴族の男が、無様に床に転がる。
「……あはは、……ごめんごめん。……回避が、……身体に染み付いちゃっててさ」
会場に静寂が走る。
嫌がらせを仕掛けた側が、指一本触れられずに自滅したのだ。
「論理的に、……正当防衛です。……物理法則が……お気に召さなかったようですね」
セインが冷たく言い放つ。
「……カノン、……ナイス。……ワイン、……勿体ない。……次は、……私が、……飲む」
ミルが、転がった男を一瞥もせず、新しいグラスを手に取った。
一触即発の空気。
だが、その緊張を打ち破ったのは、会場の奥から聞こえてきた、低く重厚な「笑い声」だった。
「……素晴らしい。……これが、……リフェルナを救った『回避』の真髄か」
人混みを割り、現れたのは――この街の領主、エルバート公爵その人だった。
彼の瞳には、貴族の男のような軽蔑はなく、鋭い「鑑定」の光が宿っている。
リトル・リンク、今日も(貴族の嫌がらせを、一秒の静止でかわして)ちょっとだけ成長中。
第84話をお読みいただき、ありがとうございます!
今回は、社交界での「スカッと回」をお届けしました。
カノンの「空中静止」は、単に飛ぶだけでなく、飛んでくるものを防ぐ(静止させる)という応用ができるようになりました。
ドレス姿で敵を翻弄するカノン、格好良かったですね!
そして、ついに現れた領主エルバート。彼が五人を招いた「真意」とは?
「カノンの回避、最高!」「貴族の自爆にスッキリした」と思ってくださった方は、ぜひ下の**【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】**にして、応援いただけますと幸いです!
皆さまの「星」が、リトル・リンクの次なる豪華な装備や、物語の重要な鍵になります!
引き続き、応援をよろしくお願いいたします!
次回、第85話。
領主が語る、リフェルナの「真の危機」。
そして、五人に託される、あまりに重い「鍵」。
お楽しみに!




