第83話 正装の旋律、領主公邸への招待状
魔力泥の怪物、そして暴走トイレ(?)を鎮めたリトル・リンクに、一通の招待状が届きます。
水都の英雄として招かれた、領主公邸での晩餐会。
戦いよりも苦手な「ドレス」と「社交」に四戦苦闘する五人。
しかし、きらびやかな会場には、彼女たちの名声を利用しようとする者や、快く思わない貴族たちの思惑が渦巻いていました。
果たして、五人は無事にディナーを終えることができるのか!?
新拠点のポストに、白銀の封蝋が施された一通の書状が届けられた。
「……差出人は、リフェルナ領主閣下。……内容は、……今夜、公邸で開催される……『水都復興記念晩餐会』への……正式な招待状です」
セインが、眼鏡の奥の瞳を僅かに細めて告げる。
「ガハハ! ついにあたいらの時代が来たね! 名誉保守官様として、最高級の酒と肉を堪能してやろうじゃないか!」
ケットルが、新調したばかりの『空歩の鉄靴』を脱ぎ捨て、期待に胸を膨らませて拳を握る。
「……晩餐会。……お肉、……食べ放題? ……血の、……ジュース、……ある?」
ミルが、トースターから焼き上がったパンを咥えたまま、珍しく目を輝かせていた。吸血鬼の彼女にとって、公的な宴は「合法的な御馳走の場」として認識されているようだった。
「……えっ、待って。……晩餐会ってことはさ、……うちら、……ドレスとか……着なきゃいけないの?」
カノンが、自分の泥だらけの軽装と、新調したばかりの銀靴を見比べて顔を引きつらせる。
「……あたい、……そういうの、……借金取りから逃げるより、……苦手なんだけど……」
「……私も。……剣を、……持っていけない場所は、……なんだか、……落ち着かないよ」
クレアが、腰の『切ない剣』を愛おしそうに撫でる。
だが、名誉保守官としての公務は、戦うことだけではない。
街の人々の信頼を繋ぎ止めることもまた、大切な任務だった。
「論理的に見て、……出席は不可避です。……リフェルナの議会との……円滑な関係構築は、……拠点の固定資産税の……減免措置に直結します」
セインの非情な一言に、カノンが「減免……!」と膝を突いた。
数時間後。
拠点の広間は、臨時の「着付け会場」と化していた。
「ガハハ! あたいにそんなヒラヒラしたもんは似合わないよ!」
「……セイン、……これ、……きつい。……胸が、……苦しい」
「……論理的に、……耐えてください。……コルセットの締め付けは、……魔力伝導率の向上に……似たようなものです(嘘ですが)」
カノンは、新調した銀靴を隠さない程度の、動きやすい短めのドレスを選んだ。
背中の羽は、ドレスの意匠として巧みに隠されているが、本人の緊張のせいで時折ピクリと震える。
「……空中静止のほうが、……まだ楽だったかも……」
そして、夕刻。
美しく着飾った(あるいは着替えさせられた)五人は、リフェルナの中心部にそびえる領主公邸の門を潜った。
煌びやかなシャンデリア、流れるような弦楽の調べ。
泥にまみれて戦っていた昨日とは、あまりにかけ離れた眩い世界。
「……みんな、……失礼のないようにね。……今日だけは、……『最弱』じゃなくて、……『名誉保守官』なんだから」
クレアが、慣れないヒールに苦戦しながらも、仲間たちに背筋を伸ばして囁く。
だが、華やかな晩餐会の裏側。
影の中から、五人を見つめる鋭い視線があった。
それは魔力泥でも、徴収人でもない――水都の権力争いという、別の「闇」の気配だった。
リトル・リンク、今日も(慣れない正装と、社交界の荒波に)ちょっとだけ成長中。
第83話をお読みいただき、ありがとうございます!
今回は、久しぶりの休息……かと思いきや、別の意味での戦場(晩餐会)に放り込まれる五人を描きました。
ドレスアップした五人の姿を想像すると、微笑ましい反面、カノンやクレアの居心地の悪そうな顔が目に浮かびますね。
「カノンのドレス姿が見たい!」「セインの理詰め社交術が楽しみ」と思ってくださった方は、ぜひ下の**【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】**にして、評価いただけますと幸いです!
皆さまの「星」が、五人の豪華なディナーと、物語を彩る新しい衣装の輝きになります!
次回、第84話。
貴族たちの嫌がらせ。
そして、会場に現れた「本物の怪物」。
お楽しみに!




