第82話 喧騒のあと、自動洗浄トイレは夢を見るか?
魔力泥との激闘を終え、平和な朝を迎えたリトル・リンク。
しかし、新拠点の「最新型自動洗浄トイレ」が突如として暴走を始めます!
原因は、浄化しきれなかった泥の残滓によるシステムの汚染。
カノンが覚醒させたばかりの「空中静止」が、まさかの場所で初の実用化(?)を果たすことに。
戦いだけじゃない、彼女たちの賑やかな日常が描かれます。
魔力泥の怪物を「大掃除」し、リフェルナに朝の平穏が戻った。
新拠点の広々としたリビングでは、ミルが宣言通り、新品のトースターで焼いた厚切りパンをご機嫌に頬張っている。
「……サクサク。……魔力泥、……不味かったけど、……パン、……美味しい」
「ガハハ! 泥を食ったわけじゃないだろ、ミル。……さて、あたいは地下の工房で洗浄砲の点検をしてくるよ。昨日の出力は、流石に負荷がかかったからね」
ケットルが紅茶を飲み干し、席を立つ。
カノンはソファで、昨日「一秒間の奇跡」を見せた自らの羽を、不思議そうにパタパタと動かしていた。
「……なんかさ、一瞬だけなんだけど。空気がコンクリートみたいに固まった感じがしたんだよね」
「論理的に見て、……それは空間の局所的な『固定』です。魔導ブースターのデータによれば、あなたの羽が放った魔力が、周囲の大気の分子運動を強制停止させていました。……再現性が高まれば、……恐ろしい回避スキルになりますね」
セインがタブレットを片手に分析を述べる。
平穏な、リトル・リンクの日常の一コマ。
だが、その静寂は、家の奥から響いた「異常な音」によって破られた。
――ウィィィィン……ガシャンッ! パカパカパカパカッ!!
「……な、何!? 何の音!?」
クレアが思わず『切ない剣』の柄に手をかける。音の正体は、ミルが最も楽しみにしていた「最新型自動洗浄トイレ」がある個室からだった。
「……トイレ、……怒ってる? ……挨拶、……激しい」
ミルがトースターを置いたまま、無表情ながらも少し不安げに扉を見つめる。
扉を開けると、そこには異常な光景が広がっていた。
自動で開閉するはずの蓋が、まるで何かの通信を送っているかのように、超高速で開け閉めを繰り返していたのだ。
「ガハハ! なんだこりゃ! あたいが組み込んだ洗浄プログラムが暴走したのかい!?」
「いいえ、……違います。論理的に見て、……この振動パターンは、……何らかの『受信』です。……このトイレの魔力制御チップが、……街に残った魔力泥の残滓と共鳴しています!」
セインが急いで個室のパネルを開き、端末を接続する。
どうやら、昨日の戦いで浄化しきれなかった微細な泥の粒子が、下水道を通じて拠点の洗浄システムに侵入し、家の「脳」である黄金の回路との接続を試みているようだった。
「……トイレを乗っ取って、……うちの拠点を内部から汚染しようっていうの!? ……そんなの、……あたいが許さないよ!」
カノンが銀靴を鳴らし、個室の狭い空間で跳躍する。
「……一秒だけ、……時間をちょうだい! その間にセイン、回路を切り離して!」
カノンが狭いトイレの室内で背中の羽を見開いた。
バサァッ!
一秒間の虚空静止。
激しく開閉していた蓋が、カノンの力によってその動きを強制的に止められる。
「……今です! 論理的シャットダウン!!」
セインの指がキーを叩き、トイレの制御系が物理的に切り離された。
静寂が戻る。蓋は、ゆっくりと、本来の優雅な速度で閉じられた。
「……ふぅ。……トイレ一つ守るのも、……命懸けだね」
カノンが額の汗を拭い、苦笑いする。
「……トイレ、……守られた。……カノン、……英雄」
ミルが満足げに頷いた。
最弱パーティの新しい「城」は、まだ少しだけ、手がかかるようだった。
リトル・リンク、今日も(トイレの平和と、拠点の安寧を)ちょっとだけ成長中。
第82話をお読みいただき、ありがとうございます!(話数調整いたしました!)
激闘の後の「トイレ回」です。
カノンの格好良い「空中静止」を、あえて生活感溢れるトラブルで使わせるという、リトル・リンクらしいギャップを描いてみました。
彼女たちにとって、拠点の平和(特にミルのトイレ)を守ることは、街を守ることと同じくらい大切なことなのです。
「カノンの能力の使い道(笑)」「ミルのトイレ愛に乾杯!」と思ってくださった方は、ぜひ下の**【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】**にして、応援いただけますと幸いです!
皆さまの「星」が、拠点のメンテナンス費用と、次なる大きな事件への予兆を呼び込む力になります。
引き続き、応援よろしくお願いいたします!
次回、第83話。
名誉保守官への正式な招待状。
リフェルナの領主が催す晩餐会で、五人を待ち受ける「試練」とは?
お楽しみに!




