第78話 宵闇の機動、回避タンクの新生
名誉保守官としての初仕事は、夜空を駆ける「浮遊泥棒」の追跡。
かつてのカノンなら、空中での攻撃に対処する術はありませんでした。
しかし、ケットルとセインが作り上げた『空歩の銀靴』が、彼女に「回避タンク」という新たな役割を与えます。
重力を嘲笑うかのようなステップ、そして敵の意識を翻弄する変幻自在の機動力。
五人の連携が、リフェルナの夜に新たな伝説を刻みます!
リフェルナの夜空に、不気味な紫色の魔力反応が点滅していた。
「……ターゲット視認。……高度百二十。……速度、……時速四十キロ。……論理的に見て、……通常の魔法弾では……捉えられません」
新拠点の屋上テラス。セインが、設置されたばかりの大型魔導観測儀を覗き込み、冷静に座標を読み上げる。彼女の傍らには、黄金の『古代回路』と直結した中継アンテナが、夜の風を受けて微かに唸っていた。
「ガハハ! あたいの『新型・追尾洗浄砲』の出番かい!?」
ケットルが、背負い袋のレバーをガチャリと引く。
「……待って。……今回は、……あたいが、……行くよ」
カノンが、新調された銀色のブーツの紐を締め直し、不敵な笑みを浮かべた。悪魔族特有の尖った耳が、獲物の気配を察知してピクリと動く。
「……カノン。……回避、……任せた。……私が、……影で、……道を作る」
ミルが杖を振ると、カノンの足元から影の触手が伸び、彼女の身体を空中へと押し上げた。
「……うん、頼むよミル! ……みんな、見てて! ……借金も、……攻撃も、……全部かわしてやるんだから!」
カノンが地を蹴った。
リフェルナの運河を飛び越え、建物の壁を蹴り、驚異的な速度で高度を上げていく。
空中を舞うターゲット――それは、物理干渉を無効化する特殊な魔導具を盗み出し、浮遊術で逃走を図る『水底の蛇』の残党だった。
「……チョロチョロと、……ネズミが! ……落ちろ!」
逃亡者が放った数条の魔力雷が、夜の闇を裂いてカノンへと殺到する。
空中。足場のないその場所で、回避は不可能かと思われた。
だが、カノンの右足が、何もない虚空を強く踏みつけた。
パァンッ!!
銀色のブーツの底で魔力が爆ぜ、青白い波紋が広がる。
カノンは落下する重力を無視し、空中でもう一段、真横へと鋭く弾け飛んだ。
殺到した魔力雷は、彼女がいたはずの残像を空しく貫くだけだった。
「……な、何!? 空中で、……軸をずらしただと!?」
「……驚くのは、……まだ早いよ!」
カノンは再び虚空を蹴り、今度は垂直に加速した。
敵の放つ弾幕を、蝶のようにひらりと、けれど稲妻のように鋭くかわし続け、敵の意識を完全に自分へと釘付けにする。
「論理的に、……ヘイト制御成功。……カノンさんが全ての攻撃を引きつけています。……今です、クレア!」
セインの通信が飛ぶ。
カノンが敵の視線を「回避タンク」として完全に奪った隙に、下方の屋根を並走していたクレアが、研ぎ澄まされた『切ない剣』を抜き放った。
「……回避の次は、……速攻! ……カノン、合わせて!」
「……了解!!」
空中で再び一歩を蹴ったカノンが、急降下して敵の背後を双牙で断つ。
直後、下から跳躍したクレアの斬撃が、逃亡者の魔導具を正確に叩き割った。
空中で制動をかけ、石畳へと軽やかに着地したカノン。
その銀色のブーツは、夜明けを待つリフェルナの街灯を浴びて、誇らしげに輝いていた。
リトル・リンク、今日も(空を蹴り、新たな戦術を掴んで)ちょっとだけ成長中。
第78話をお読みいただき、本当にありがとうございました!
今回は、カノンの新装備が火を吹く初実戦回でした。
「借金回避」の能力が、ついに物理的な攻撃すらも空中でかわす「回避タンク」へと昇華!
パーティの機動力を支えるソッコウ役として、彼女の活躍の場がさらに広がりました。
ボロボロから復活したクレアの剣との連携も、バッチリ決まりましたね。
「カノンの二段ジャンプ、かっこいい!」「リトル・リンクの連携が熱い!」と思ってくださった方は、ぜひ下の**【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】**にして、評価をいただけますと幸いです!
皆さまの「星」が、カノンの華麗なステップをさらに鋭く、そしてリトル・リンクの成長を加速させる燃料になります。
引き続き、応援をよろしくお願いいたします!
次回、第79話。
街に蔓延る謎の「魔力泥」。
名誉保守官としての彼女たちに、街の人々から次々と舞い込む意外な依頼とは?
お楽しみに!




