第76話 竣工の青空、五人の「城」が吠える時
幾多の苦難を乗り越え、ついに『新・魔道具師の家』が完成しました。
セインの論理、ケットルの技術、そして師匠が遺した禁忌の設計図。
それらが一つになった時、リフェルナの街に、ただの家ではない「意志を持つ要塞」が誕生します。
自動洗浄トイレの復活を喜び、新しい生活に胸を躍らせる五人。
しかし、名誉保守官となった彼女たちを待っているのは、穏やかな日常だけではありませんでした。
リトル・リンクの第二章、ここから堂々開幕です!
リフェルナの運河を渡る風が、新築の木の香りと、魔導塗料の甘い匂いを運んでいた。
かつての焦げ跡は跡形もなく消え、そこには周囲の石造りの街並みとは一線を画す、無骨ながらも機能美に溢れた三階建ての塔型住宅がそびえ立っていた。
「ガハハ! ついに、ついに完成だぜ! あたいの職人人生で、これ以上の傑作はもう二度と作れないかもしれないね!」
ケットルが、新しく作り直した巨大な背負い袋を傍らに置き、感無量の面持ちで『新・魔道具師の家』を見上げていた。その外壁には、師匠の設計図通りに『古代回路』の魔力を各部屋へ分配するための、金色の伝導ラインが美しく張り巡らされている。
「論理的に見て、完成度は百二十パーセント。……旧拠点と比較して、魔力伝導効率は四倍、防壁強度は六倍。……さらに、地下の魔力貯蔵庫はリフェルナの循環系と完全に同期しています。……これで、私の演算負荷も大幅に軽減されるはずです」
セインが、指先で新しい壁の感触を確かめ、眼鏡をクイと押し上げた。彼女の魔導ブースターは、すでに家の基幹システムと無線で接続され、微かな起動音を奏でている。
「……セイン、……お風呂。……広い。……泳げる。……あと、……トイレ……」
ミルが、玄関の自動ドアをすり抜けて中へと駆け込んでいった。
「……あっ! すごい! ……近づくだけで、……パカッて。……蓋が、……挨拶、……した!」
家の中からミルの歓喜の叫びが響き、クレアとカノンは顔を見合わせて笑った。
「借金もなし、呪いの契約もなし! ……こんなに清々しい気分で新しい家に住めるなんて、あたい……夢みたいだよ」
カノンが、自由になった証である額の角をそっと撫でた。彼女の『借金回避の双牙』は、今は戦うためではなく、新しいキッチンの食材を切り分けるために、その鋭さを研ぎ澄ませている。
「……うん。……うちら、本当にやり遂げたんだね」
クレアが、新調した玄関のプレートをそっと撫でた。そこには、金色の文字で誇らしげに『リトル・リンク』の紋章が刻まれている。
だが、この『新・魔道具師の家』は、単なる休息の場ではない。
「……よし、みんな。……最後の『火入れ』、いくよ」
クレアの合図で、五人はリビング中央の魔導炉へと手をかざした。
黄金の『古代回路』が中央で脈動し、セインの論理的な制御によって、家全体に魔力が供給される。
グォォォォォン……!
家そのものが、一つの巨大な生き物のように唸り声を上げた。
外壁の金色のラインが青白く発光し、窓ガラスにはセインの解析データが投影され、屋上の洗浄砲アンテナが獲物を探すように旋回する。
師匠が遺した設計図――それは、家そのものを一つの「巨大な魔導武装」へと変えるための、リトル・リンク専用の要塞だった。
「……論理的に、……迎撃態勢、……オールグリーン。……リフェルナの空域は、……今この瞬間から、……私たちが守ります」
セインの宣言と共に、塔の頂から清らかな魔力の波動が放たれた。
拠点を失い、どん底まで落ちた五人。
けれど、灰の中から立ち上がった彼女たちの手には、今、世界で唯一の「最強の家」があった。
リトル・リンク、今日も(最強の城と共に、新たな一歩を)ちょっとだけ成長中。
第76話をお読みいただき、本当にありがとうございました!
ついに、リトル・リンクの新しい「城」が完成しました。
拠点を自爆させるというどん底から、家そのものが戦う要塞へと進化を遂げる……。
これぞ「成長中」な彼女たちらしい再起の姿を描くことができました。
ミルの念願だった、自動で蓋が開く最新型トイレも無事に設置完了です!
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皆さまからいただける「星」のひとつひとつが、執筆の最大のエネルギーになり、五人の新しい生活をより一層賑やかにしてくれます。
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次回、第77話。
激戦を終えた装備のメンテナンス。
そしてカノンの機動力を劇的に変える、驚愕の新装備が登場します。
引き続き、リトル・リンクの成長を一緒に見守ってください!




