第75話 契約上書き、不当負債の完全抹消!
カノンの魂を縛る『深紅の契約書』。
絶対的な魔界の法を盾にする徴収人ゼウスに対し、軍師セインが放ったのは、リフェルナの街そのものを味方につけた『契約上書き』でした。
論理の刃が悪魔の法を切り裂き、ケットルの洗浄砲が呪いの残滓を洗い流す。
仲間のために、自分たちの居場所を守るために。
カノンが長年背負い続けてきた「負債」との決着が、今ここにつきます!
建設中の『新・魔道具師の家』の敷地内に、黒い炎が渦巻いていた。
徴収人ゼウスが掲げる『深紅の契約書』から放たれる重圧に、石畳がミシミシと悲鳴を上げる。
「……カノン、往生際が悪いですよ。この契約書には、あなたの一族全員の魂が担保として刻まれている。……抗えば抗うほど、故郷の家族が苦しむだけだ」
「……っ、そんなの……! あたいが生まれた時には、もう決まってたことじゃないか!」
カノンが『借金回避の双牙』を強く握りしめ、地面に膝をつく。彼女の額の角が、契約の呪縛に呼応して赤黒く明滅していた。
「……セイン、……あいつ、……嫌。……契約、……食べて、……消したい」
ミルが杖を構え、紅い魔力を極限まで圧縮する。吸血鬼の彼女にとって、魂を縛る契約の鎖は、最も忌まわしい「獲物の匂い」に他ならなかった。
「論理的に見て、その契約書の魔力波形には、……明確な脆弱性が存在します」
セインが、割れた眼鏡の予備を押し上げ、青白く光る瞳で契約書を凝視した。ハーフエルフの「構造解析」は、今や魔界の高度な法術すらも、単なる「情報の羅列」として分解し始めていた。
「……な、何だと? 脆弱性だと? ……笑わせるな、これは魔界銀行が数千年にわたって守り抜いた絶対の法だぞ!」
ゼウスが鼻で笑う。だが、セインは冷徹な笑みを浮かべ、手元の羊皮紙に計算式を走らせた。
「……いいえ。数千年という月日が、……逆に『環境の変化』を無視させていた。……現在、この街リフェルナは私の『広域環境上書き』の支配下にあります。……この空間において、あなたの契約書が依拠している魔界の基本法は、……すでに私の定義によって『無効化』されているのです!」
「……何っ……!?」
ゼウスが驚愕に目を見開いた瞬間、セインが黄金の『古代回路』に手を触れた。
「……リトル・リンク、……全員、……魔力を、……私に! ……『契約上書き(コンストラクト・オーバーライト)』、……発動!!」
ドォォォォン!!
セインの指先から放たれた白銀の術式が、ゼウスの持つ深紅の契約書へと絡みついた。
瞬間、羊皮紙に刻まれていた血の色をした文字が、セインの論理的な「修正」によって、次々と青い光へと書き換えられていく。
「ガハハ! あたいの洗浄砲、……魔界の汚れもろとも、……洗い流してやるよ!!」
ケットルが、新築の壁に据え付けたばかりの『据置型・大型洗浄アンテナ』を起動した。
セインが書き換えた契約書の「ゴミ」を、ケットルの放つ高圧魔力水流が、物理的に吹き飛ばしていく。
「……そんな、……馬鹿な! 私の、……一族の、……負債が、……消えていく……!?」
ゼウスの手の中で、契約書が灰となって崩れ去った。
カノンの角の明滅が止まり、彼女を縛っていた目に見えない鎖が、カラン、と音を立てて砕け散る。
「……あ、あはは。……身体が、……軽い……。……あたい、……本当に、……自由になったんだ……」
カノンが、自分の手を見つめて震える声で笑った。
「……お掃除、……完了。……カノン、……おかえり」
ミルが、ふらつくカノンの肩をそっと支える。
「……き、貴様ら……! 魔界銀行を敵に回して、……タダで済むと思っているのか……!」
逃げ腰になったゼウスに対し、クレアが『切ない剣』の切っ先を突きつけた。
「……うちらはリトル・リンク。……どんな高い壁も、……どんな不条理な借金も、……みんなで乗り越えて成長中なんだ! ……次に来る時は、……ちゃんとした『友達』として来なよ!」
ゼウスは屈辱に顔を歪めながら、霧となって消え去った。
後に残されたのは、清々しいほどに晴れ渡ったリフェルナの空と、新しい「城」の力強い槌音だけだった。
リトル・リンク、今日も(過去の鎖を断ち切って)ちょっとだけ成長中
第75話をお読みいただき、ありがとうございます!
セインの「論理的」な借金整理、いかがでしたでしょうか。
「環境を上書きすればルールも変わる」というセインならではの解決策で、カノンはようやく本当の自由を手に入れました。
拠点の建設も、これで何の憂いもなく進められそうですね!
「セインの論理攻め、最高!」「カノン、自由おめでとう!」と思ってくださった方は、ぜひ下の**【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】**にして、評価いただけますと幸いです!
皆さまの星が、カノンの新しい「貯金(?)」になります!
次回、第76話。
ついに完成、『真・魔道具師の家』。
その驚愕の全貌と、新生活の始まり。
引き続き、応援よろしくお願いいたします!




